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●ピーター・フォーク やぶにらみにぼさぼさの髪。身分違いの葉巻。何といってもトレードマークはよれよれのレインコート。が、最初の頃は意外にもこぎれい。しかも、後に人情家のイメージと異なり、第一作「殺人処方箋」では、コロンボは非情な刑事風でした。声は名調子、小池朝夫。「うちのかみさん ... 」、と言うその声はなめらか。アクセントが目立つ優しげな口調。もっともピーター・フォークの声はだみ声で平坦。ややきつい調子なのがオリジナルであるところはちょっとおもしろいあたり。 ちなみに小池朝夫氏は歴とした俳優。悪役として活躍することの方が多かったようです。新シリーズでは、途中惜しくも亡くなった小池氏に代わり、"困った時の"石田太郎(黒柳徹子談)。こちらはこちらで定着を見せていますから、やはり元作の底力と言っていいのでしょう。* 一部物語の結末に言及しています。お気をつけください。
●愉快痛快 ミステリーの本場といえばイギリス。アメリカでは育たなかったとされる推理ドラマ。コロンボはその常識を覆した作品でもあります。 コロンボものは倒叙ミステリーといわれます。探偵側から描く謎解き型とは異なり、犯人の側から犯行を丹念に描写していく手法です。しかし、やはり本格ものに比べると欠陥が多いのも事実。特に批判も多かったご都合主義の解決術でしょう。 例えば第一話は「殺人処方箋」。最後に犯人が愛人を裏切る言葉を吐き、それによって愛人は真相を打ち明ける決心をするわけですが、ここまでに一芝居、つまり罠を仕掛けています。コロンボの挑発に犯人が乗らなかったとしたら、逆にコロンボが致命的なダメージを受けるのですが、このリスクはあまりにも大きいのではないでしょうか。犯人の自白が必要という状況の中、ラストの罠で犯人が"心理的"な操作に引っ掛かるという話は他にいくつも出てきます。中には、「ロンドンの傘」のように証拠をでっち上げ、いくら何でも違法捜査だろう、なんてのも。 ところが、「逆転の構図」ではこんなくだりがあるのです。最後にコロンボの罠にはまり証拠品のカメラを手にしてしまった犯人。「もし私が取らなかったら」、と言うとコロンボはただ黙っているだけ。その表情を見て、「取ると分かっていたのか・・・」と、驚く犯人。果たしてコロンボは優れた心理能力者でもあったのか。いずれにしてもこれらのシーン。溜飲が下がる人気のクライマックスシーンであることに代わりはありません。
●意外や意外 シリーズには到叙ものに反して謎解きやサスペンスを重視したものもあります。特に最後まで明かされない犯人は推理者の醍醐味十分。印象的だったのは「二つの顔」。ミステリーの掟破り、"双子"をモチーフにしたことから、作品の内容とは別の意味で印象に残りました。が、どちらが犯人なのかは興味津々。 もう一本、「さらば提督」。序盤から犯人と思われる人物の行動が描かれ、見る者を翻弄します。が、途中、その人物が殺されてコロンボの捜査は振り出しに。それでは一体誰が犯人なのか。残された文字の型紙の謎。見えない人間関係の糸。と、非常に見所の多い一本ではなかったでしょうか。 そして何と言っても「偶像のレクイエム」。スタジオ内に長年住み着いている女優。悪評が絶えない芸能記者と結婚するという秘書。相手の男の車に仕掛けた爆弾。しかし見つかった死体は何と秘書のもの。女優の狙いは本当に相手の男だったのか。最後まで謎が引っ張られて、さらには、あっ、という新事実が待ち構えています。伏線も十分に張られており、屈指の名作に仕上がっています。
●共演者たち コロンボのもうひとつの見所と言えば、やはりゲストスターとの攻防戦。商業作品的には、ここでゲストである犯人を描写する倒叙ものの手法がフルに活きてくるわけです。 目立つ顔といえば、ロバート・カルプ、ロバート・ボーン、ジャック・キャシディなど。同一シリーズで、ひとりの俳優が違う役で何度も出演する。同じ役で復活、なんてのはありますが、違う役となると日本では考えられないことで、かく言う筆者も抵抗感を禁じ得ません。他の方はどうなんでしょう。 ゲストだけではありません。「祝砲の挽歌」、「仮面の男」の犯人役、パトリック・マッグーハン。いずれも名作としてあげる人が多い作品。その後、何本も演出を担当することになり、こちらでもいずれもが好評。 異色の作品もあります。スティーブン・スピルバーグが演出した「構想の死角」。その後有名になり特に注目されるようになった作品です。テレビのしかも演出だけの仕事ですから、それほど注目しても仕方がないのですが、俳優が演技をしやすいように気を配る様子を見て、ピーター・フォークはすでに非凡なものを感じていたとか。 そのピーター・フォーク自身が唯一演出した「パイルD-3の壁」。が、だれ気味のシーンがあったりして成功作とは言いがたい出来。それでもラストのスーパーどんでん返しで一気に盛り返し、結果、評価の分かれる一本のようです。
●マイ・ベスト コロンボファンは世界中に掃いて捨てるほど、と言っては失礼ですが、それほどたくさん存在します。そしてそれぞれに思い思いのお気に入りがあるようです。ある作品を一方では傑作、一方では駄作、なんてことは良くあることで、ベスト / ワーストに挙がる作品もまちまち。 もりじょうにもお気に入りの作品は多々あります。特に犯人の人生に入れ込んだ「秒読みの殺人」は好きな作品。テレビ局の副支社長の女性が恋人の支社長を殺害してしまう話です。しかしその後、彼女の悲しい生い立ちが語られ、そして後半では破滅へ進んでいく人生が刻銘に描かれていくのです。そんな犯人を容赦なく追い詰めるコロンボ。ここは人情ものに傾斜しがちな日本の作品のつくりとは違うところ。 犯行には同情の余地がない「秒読みの殺人」は別にして、どんなに同情できる犯人でも容赦なく逮捕するのがコロンボ。犯人がコロンボと親交を深めていく「別れのワイン」もその一本。 実は、そんなコロンボも一度だけ犯人を逮捕しなかったことがあります。「忘れられたスター」がそれです。夫を殺したにもかかわらず病気のせいで覚えていない犯人。犯人の余命が少ないことを知ると犯人の親友が自首。そしてコロンボはそれと知りつつ親友を逮捕するのです。推理ものとしての要素は低いのですが、とても切ない物語で一番のお気に入りとなってしまいました。 それにしてもこれだけの難事件を解決してきたコロンボ。政治家だろうが外交官だろうが、どんな有力者でもお構いなし。かけられる圧力もやんわりとかわし、庶民にしてみればだからこそ痛快さ倍増。「権力の墓穴」ではついに上司をまで捕してしまいます。しかし、それがたたってかどうか一向に昇進の話を聞きませんねえ。そりゃあそうです。だってテレビですから。
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