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「戦争スペクタクル」

・・・ かつての戦争娯楽大作を振り返る ・・・


 今はほとんど見られなくなった戦争スペクタクル映画(戦争娯楽大作)。今では、歴史映画、反戦映画、人間ドラマなどににスタンスを変え、戦争という舞台はシチュエーションとして使われるだけになってきました。しかし、戦争映画がこのように変遷してきたことには、人間のバランス感覚の進化を感じることもできます。非人道的な戦争という行為を、純粋に娯楽作品として受け入れることにためらいを覚えるようになったとも察せられます。ここでは、かつてつくられてきた第二次大戦を舞台にした戦争スペクタクル映画を振り返ってみたいと思います。

1. 真珠湾攻撃

 1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻。一般にはこれが第二次大戦の始まりと言われます。ちなみに、1931年の満州事変、1936年のスペイン内乱、1937年の日中戦争を始まりとする説もあり、この戦争の多面性を物語っています。この時、ナチス・ドイツは瞬く間にヨーロッパ全土を席捲。西欧・南欧の各国は相継いで降伏を強いられます。
 しかしイギリスが降伏をしないうちに、ヒトラーの野望は狂気の多面作戦を実行に移させるのです。1941年6月、ドイツはソ連に侵攻。三ヶ月でソ連を降伏させると豪語していたヒトラーでしたが戦線はこう着。レニングラードを包囲しながらも攻めきれず、モスクワ攻略も寒波対策を怠り中断。その間油田を狙った南部地帯の攻略を行いますが、ついにスターリングラードで史上最悪の敗戦を喫するのです。
 一方、1941年12月、日本は真珠湾を奇襲。ついに太平洋戦争が始まります。日中戦争がすでに泥沼化。そんな中、日本もまた、に二面作戦を展開することになります。この真珠湾奇襲は、日本の宣戦布告が奇襲に間に合わず、結果、騙し討ちとなってしまい、アメリカの戦意を大きく高揚させることにもなりました。以来、“リメンバー・パールハーバー”が復讐への合言葉となります。
 映画「トラ・トラ・トラ!」(1970)は、この真珠湾奇襲を描いた日米合作。「トラトラトラ」とは、我奇襲に成功せり、を表す暗号のこと。史実に沿ったつくりのため、日本では娯楽作として受け入れられましたが、アメリカでは苦さの残る作品となったようです。監督はリチャード・フライシャー。日本側の監督は舛田利雄が担当。山本五十六連合艦隊長官を山村聰 、機動艦隊の南雲中将を東野英治郎、松岡外相を北村和夫などが演じています。アメリカ側ではマーチン・バルサムやジェイソン・ロバーズ、ジョゼフ・コットンらが出演しています。
 後につくられた「パールハーバー」(2001)も同様の背景ですが、こちらは人間ドラマが基軸。ちなみに、前者は興行的には振るいませんでしたが評価は高く、後者は逆に、興行的に成功したものの評価は低目となりました。

2. ミッドウェイ海戦

 しかし日本軍の優勢はわずか半年で終焉を迎えます。情報戦を軽視した日本は、戦略戦術のみならずハードウェア面でも大きく立ち遅れ、暗号の解読・開発、そしてレーダーの開発でも遅れを取ります。英米のレーダー開発に、日本の“八木アンテナ”の技術が使われたのは有名な話。その技術に日本軍は見向きもしなかったとか。せっかく送ってきたスパイの情報も、多くは無視されたようです。
 ともかくも、太平洋戦線で大きな転機となったのが1942年6月のミッドウェイ海戦でした。この時、日本軍の暗号はすでに解読され、逆にアメリカ軍のおとりの電文で罠にはまります。結果、この海戦で日本は主要航空母艦四隻を失い、海軍の戦力は半減。生産能力に乏しい日本は、以後終戦まで、この穴を埋めることはできませんでした。一方のアメリカは産業力に物言わせ、軍艦を量産。この数ヵ月後、太平洋の制海権はアメリカへと移っていきます。
 映画「ミッドウェイ」(1976)はこの時の様子を描いたもの。「トラ・トラ・トラ!」と異なり、ほぼアメリカ側の視点から物語は展開します。監督ジャック・スマイト。出演はチャールトン・ヘストン、ヘンリー・フォンダ(ニミッツ提督)、グレン・フォード、ジェームズ繁田(南雲中将)。日本側からも三船敏郎(山本五十六)などが参加しました。ほとんどが実在の人物ですが、主演のチャールトン・ヘストンのみ、架空の人物・ガース大佐を演じています。
 この作品では、アメリカ国内に作られた日系人を対象とした収容所も描かれています。このようなアメリカにとっての嫌な出来事も公平な視点で描こうという姿勢が見られるのは興味深いところ。登場させる兵器にしても、なるべく当時のものを再現しようとしている様子がうかがえます。中には当時の映像をそのまま使用したシーンもあってひと際目をひきます。娯楽性を重視しつつも、戦争が生む偏見や偏狭を真摯に伝えようとした映画ではなかったでしょうか。

3. クワイ河と第三捕虜収容所

 太平洋戦争開戦前後、日本軍はインドシナ半島を攻略。やがてシンガポールへ。さらにビルマへと戦線を拡大していきます。その時タイに作られた捕虜収容所がありました。「戦場にかける橋」(1957)はこの収容所を描いたもの。原作者ピエール・ブール(「猿の惑星」の原作者でもある)の実体験を元に、巨匠デビッド・リーン監督で映画化。戦争の虚しさを見事に伝え切っています。
 日本軍の捕虜収容所が非人道的だったことは有名で、大島渚監督「戦場のメリークリスマス」やスピルバーグ監督「太陽の帝国」でもその様子が描かれています。この作品も、英米軍の捕虜たちが、クワイ河にかける橋の建設のために強制労働に駆り出されるという内容。イギリス軍の士官を名優アレック・ギネス。日本軍の扱いに憤りを覚えながらも、橋を建設する意義をやがて見い出していきます。対する冷徹な捕虜収容所長を演じたのは早川雪舟。その橋の破壊を目論むアメリカ兵にウィリアム・ホールデン。何とも絶妙の配役で、日米英、それぞれのお国柄をこの三人が象徴しているのもおもしろいところです。ちなみに、本作で使われた「クワイ河マーチ」(元の曲は「ボギー大佐」)は有名となり、この後、世界中のブラスバンドで演奏されるようになっています。
 欧州戦線でも、同じ捕虜収容所を描いた娯楽大作が存在します。「大脱走」(1963)もまた、実在したドイツ軍収容所の様子を描いたもの。厳重な警戒の収容所から、連合軍の捕虜たちが集団脱走を試みるという話。これも1944年にあった実話が元。監督はジョン・スタージェス。スティーブ・マックイーンのオートバイのスタント・シーンは今や伝説となりつつあるようです。出演は他にリチャード・アッテンボロー、ドマルド・プレザンス、チャールズ・ブロンソンなど。後に大御所となる俳優が大挙して出演しています。
 これらは、いずれも大がかりな戦闘シーンはありませんが、娯楽大作としては極めて高い評価の作品となっています。

4. Dデイとパリ解放

 1942年末には、ドイツ、日本共に劣勢になりつつあったわけですが、1943年にはイタリアが降伏。独裁者ムッソリーニが民衆のリンチによって凄絶な死を遂げます。その少し前、ドイツはクルスクの大戦車戦でまたも大敗。東部戦線では再起不能となっていました。日本もソロモン海戦で生産力を上回る消耗を強いられ、早くも敗戦濃厚となります。1944年にはインド・ビルマ戦線で無謀なインパール作戦を展開。東南アジア戦線でも致命的な被害を出してしまいます。
 そして1944年6月6日。決行日の暗号名は“Dデイ”。米英を中心とした連合軍がフランスのノルマンディー海岸に上陸。その規模二百数十万人。映画のタイトルどおり、人類史上最大規模の上陸作戦でした。「史上最大の作戦」(原題は The Longest Day)は1962年に製作。映画の規模も当時としては史上最大。製作費40億円。ドイツ軍、連合軍双方を余すところなく描出し、歴史映画としての役割を見事果たしています。また、激しい戦闘シーンはもちろんのこと、ダイナミックな人間群像劇としても高い評価を得ています。監督はケン・アナキンほか。出演者は超豪華。ジョン・ウェインにヘンリー・フォンダ、リチャード・バートン、クルト・ユルゲンスなど。英米独仏のスターが総出演。まさに、「キング・オブ・戦争映画」、と呼べるでしょう。ちなみに映画自体はモノクロ。後、フィルムに着色加工が成され、カラー版が作成されています。
 さて、連合軍は上陸後、まっしぐらにベルリンを目指すはずでした。その頃、ドイツに長年占領されていたパリでは、市民たちが暴発寸前。パリのレジスタンスたちは苦心して連合軍をパリに誘導。本来の作戦にはなかったパリ解放が実現します。この様子を描いたのが「パリは燃えているか」(1966)。ヒトラーはパリの司令官に命令を出していました。撤退するならパリを灰にせよ、と。が、時の司令官はこの命令を無視。パリは燃えているか?、は、ドイツから司令官への確認の問いかけでした。
 上映3時間の戦争映画にしてはかなり地味ですが、一方では当時のレジスタンスの実像にも迫っています。監督ルネ・クレマンらしい、人間重視の作品ではないかと思います。群像劇としてはやはり第一級品。そして反戦映画としての性格も強く、悲惨なモチーフを正面から描いています。出演は、レジスタンス側がジャン・ポール・ベルモンド、アラン・ドロン、ドイツ軍にゲルト・フレーベなど。さらにオーソン・ウェルズがノルウェー領事を演じています。

5. マーケット・ガーデン、そしてヴァハト・アム・ライン

 8月のパリ解放の後、戦線はこう着。連合軍は打開策として再び大きな作戦を立案します。膨大な落下傘部隊を敵後方に降下させ行軍路を確保。すかさず地上部隊が進撃して占領するというもの。期限はわずか二日。作戦名「マーケット・ガーデン」。成功すればクリスマスまでに終戦のはずでした。が、降下部隊は孤立することになり、地上部隊が時間通りに来なければ壊滅することは必至。9月、連合軍はこの無謀な計画を実行に移し、結局、甚大な被害を出してしまいます。
 この戦いを描いた「遠すぎた橋」(1977)は、群像劇たる戦争スペクタクルとしてはほぼ最後の作品。そのせいか、解放軍であるはずの連合軍の進撃で破壊される古い街並み、犠牲になる市民の姿など、反戦色の強い描写も特徴的となりました。原作は「史上最大の作戦」と同じコーネリアス・ライアン。監督はリチャード・アッテンボロー。配役も豪華。マイケル・ケイン、ショーン・コネリー、ジーン・ハックマン、アンソニー・ホプキンス、ハーディー・クリューガー、ロバート・レッドフォード、マクシミリアン・シェルなど。ドラマ性、スケール感ともに非常に優れた作品だろうと思います。
 一方、ドイツ軍も大反攻計画を企てます。その名もヴァハト・アム・ライン(ラインの守り)作戦。アルデンヌの森からアントワープへ侵攻。連合軍の戦力を長期にわたって分断させるのが狙いで、その間新兵器の開発で本格的な巻き返しを図るというもの。12月に始まったこの攻勢に連合軍は不意を衝かれ序盤は劣勢。が、燃料不足や天候だのみなど他力要素も多く、結局頓挫。かえって終戦を早まらせる結果になったと言われています。ドイツ軍の降伏は1945年5月でした。
 これを題材にしたのが「バルジ大作戦」(1965)。監督ケン・アナキン。主演はヘンリー・フォンダと、惜しくもよう逝したロバート・ショウ。戦車戦を中心とした壮大なスペクタクルシーンはありますが、かなり雑なつくりで、ティーゲルU戦車(ドイツ軍の新型重戦車)の代わりに貧弱なM48(アメリカ軍の中戦車)を安易に使うなどして迫力を損なってしまいました。映画としての評価はちょっと低いようです。
  

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 昔なつかしの戦争ドラマ。さすがに派手さは映画に譲るがシリーズものならではの人間ドラマが魅力。年配の方なら二、三度繰り返し見た人も多いのでは?

 S・スピルバーグとトム・ハンクスが実話に基づいて製作。現代版COMBATと感じた人も多いはず。戦争ドラマの到達点の一つ。COMBATファンなら必見の名作だ。

 ベン・アフレック、ケイト・ベッキンセイル主演。内容は男女三人の人間ドラマだが、真珠湾攻撃の特撮シーンは圧巻。映像技術の進歩を実感した一本でもある。


 悲運の名将・山本五十六を描いた戦争ドラマ。英米との開戦には反対していたと言われる。映画では三船敏郎が好演。三船は「ミッドウェイ」でも山本五十六を演じた。円谷プロ特撮の戦闘シーンも見所。


 アメリカ軍の名物将軍パットンを描いた戦争映画。北アフリカ戦線ではドイツ軍の“砂漠の狐”ロンメル将軍のライバルだった。主演のジョージ・C・スコットがまさにはまり役。映画史上に残る名演と言われる。



 終戦間近、ライン川にかかるレマゲン鉄橋を巡る攻防を描いた戦争映画。レマゲン(ルーデンドルフ橋)の戦いは史実だがこちらはアクション映画風。監督は娯楽作御用達のジョン・ギラーミン。戦闘シーン満載の作品。

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