| 天城越え | |
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(1983/日本/99分) [監督] 三村晴彦 [原作] 松本清張 [脚本] 三村晴彦 / 加藤泰 [撮影] 羽方義昌 [音楽] 菅野光亮 [出演] 渡瀬恒彦、田中裕子、平幹二朗、伊藤洋一、金子研三、吉行和子、小倉一郎、石橋蓮司、樹木希林、坂上二郎、柄本明、北林谷栄、佐藤允、山谷初男、伊藤克信、車だん吉、加藤剛 [評価] ★★★★★ 大正末期。家出した少年は天城で美しい女ハナに出会い一緒に旅をすることに。しかし途中ハナは男を見かけると少年と別れてついていってしまう。後日その男の死体が発見されハナが逮捕されるのだが、そこには少年だけが知っている真実が・・・。人が失わざるべき無私の愛と人が背負わなければならない宿罪を描いた感動のドラマ。叙情ミステリーの名作。 |
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ストーリー 小さな印刷屋を営む小野寺建造のもとにある老人がやってきます。名前は田島、元刑事だといいます。印刷を依頼してきたのは昔扱った事件の書類。迷宮入りになった天城山中での殺人事件に関するものでした。しかし小野寺はその老人の話に驚愕します。小野寺はその事件の当事者だったのです。 大正末期、父を亡くしていた建造は母と叔父が付き合っていることを知ってしまいます。そのことで傷つき家がいやになって、静岡の兄のところへ行こうと思い立ち家を出ます。そして途中の天城峠に差し掛かった頃、建造はハナという美しい女性と出会います。ハナも一人旅のよう。軽装で娼婦のようでもありましたが、一緒にいてほしいと言われ、建造は二人で天城越えをすることに。 建造は自分に優しくしてくれるハナに淡い気持ちを抱くのですが、途中見知らぬ土工とすれ違うと、ハナは突然ここで分かれようと言い出し、土工の方へついていってしまいます。建造は仕方なく先へ進むのですが、後になって土工が死体で発見されたことを知ります。そしてハナが殺人の容疑者として逮捕されたことも。ハナは娼館から逃げ出してきた娼婦だったのことが判明。殺された土工をハナは客にして金を得るために、あの時突然建造と別れたのです。 証言や証拠が次々と上がり、そのすべてがハナが犯人であることを裏付けるのでしたが、ハナは頑強に犯行を否認し続けます。そんなハナを警察は激しく責め立て自白を迫ります。建造がハナを見に行くと、そこにはやつれた姿のハナが。一瞬目が合いたじろぐ建造。しかしそんな建造をハナは優しいまなざしで見つめます。実は事件には建造しか知らない事実があったのですが・・・。 コメント 松本清張の短編小説の映画化。何度かTVドラマにもなっています。小説、映画、テレビ、いずれもが大変評価の高い作品。本作品でも、多感な少年のあまりにも繊細な心情と、そこに湧き上がった衝動とを見事に伝えきっています。その場で涙する感動というよりは、一生残るほどの深い感慨を覚える作品といえるのではないでしょうか。 時は昭和中期。一軒の印刷屋に老人が訪問してくるところから始まります。老人は元刑事。彼が持ってきた印刷の依頼物は昔の迷宮入り事件の資料。それは印刷屋の主人も関わった天城山中の殺人事件のものだったのです。そして大正時代へさかのぼり、事件が回想されていきます。老人はそれと知ってこの印刷屋に来たのか。その理由は何なのか。冒頭から興味惹かれるシーン。しかし、事件の真相はミステリーとしてみるにはあまりにも切ないものだったのです。 少年が母の情事を見てしまうという衝撃。そこから一人旅に出る少年。やがて娼婦ハナと出会い一緒に旅をすることになるのですが、このことが殺人事件という悲劇につながってしまいます。少年がハナに抱いた淡い心とは、はたして母に対するものなのか、それとも初恋のようであったのか。その姿は一瞬の幸せをかみしめているよう。しかし殺人犯として逮捕されたハナに再会した少年には陰のある表情が宿り、不思議に別人のようでもありました。 事件の真相は最後になって明かされます。そこで見る者は、はた、と一つ一つのシーンを思い起こすことに。なぜ少年はあんな表情をハナにしたのか。なぜハナはあんなことを少年に言ったのか。ここで、ハナが少年に示したものは何だったのか、とも思います。母のようなものなのか、それとも自分を想ってくれたことへの慈しみのようなものなのか。見る者にとって、もはや謎解きは心の隅。意外さへの驚きよりは、少年とハナの心情、切なさや苦しみに思いをはせます。そのあまりの繊細さに気づき、深い感動が一気に心の中に拡がっていくのです。 一つの物語を、映画という手法によってここまで昇華させることができたのは見事というしかありません。淡々とした展開の中に描かれる大正ロマンチシズムも物語の繊細さを演出しています。そしてハナ役田中裕子の名演もまた見事なもの。物語のおもしろさは言うまでもないほど。ちょっとほめすぎの感もありますが、長年にわたって非常に好きな作品。と、こうして書いているとまた見たくなってしまいましたよ。 | |