映画鑑賞記

玩具修理者
preview (2001/日本/40分)
[監督] はくぶん
[原作] 小林泰三
[脚本] 相良敦子 / はくぶん

[出演]
田中麗奈、忍成修吾、麿赤兒、姿月あさと、大平奈津美、(声)美輪明宏

[評価] ★★★★☆
 ある日、少女は散歩に連れていた妹の赤ん坊を自分の不注意で死なせてしまう。少女は思いついて、壊れたおもちゃを何でも直す "ようぐそうとほうとふ" に赤ちゃんを直してもらおうと預けたのだが・・・。幻想的な映像で反日常世界を描いたダークなおとぎ話。ファンタスティック・ホラーの秀作。
ストーリー
 アンティークな愉しいおもちゃが並ぶ玩具店に不釣合いな真っ黒いサングラスをかけた若い女性が入ってきます。店の少年は何とはなしにサングラスの女と話を始めることに。すると彼女は、子供の頃の体験談だと言って摩訶不思議な話を少年に始めるのでした。
 その名を"ようぐそうとほうとふ"というそうです。実際の名前は分かりません。誰も見た者はいません。ただ、そう唱えながらおもちゃを直すのでそう呼ぶのだとか。とにかく"ようぐそうとほうとふ"は、彼の家の前に壊れたおもちゃを置いておくと、どんなおもちゃでも直してくれるのだそうです。でも頼むときは直すところを言わなければなりません。頼んだところしか直してはくれないからです。
 ある暑い夏の日、彼女が赤ん坊を連れて散歩していると、暑さで頭がボーっとしてきたそうです。そしてうっかり赤ちゃんと一緒に階段から転げ落ちてしまいます。赤ちゃんは息をしていないような。自分も体中痛い。片目が何かおかしい。どうしよう。しかられる。そうだ、"ようぐそうとほうとふ"に頼もう。"ようぐそうとほうとふ"ならきっと直してくれる。
 そして彼女は"ようぐそうとほうとふ"の家を探し当てたそうです。
 ちゃんと直してほしいところを言わなくちゃ。ちゃんと心臓が動きますように。でも意識がもうろうとしてきます。そうだ、ついでに自分の目も治してもらおう。ああ、もう目を開けていられません。
 そして彼女が目を覚ましたとき、赤ちゃんは・・・。

コメント
 原作は小林泰三(やすみ)の同名の短編小説。こちらも名作でおすすめです。内容はほぼ原作どおり。残酷童話を地でいくような内容。想像すればするほど、情景を思い浮かべれば浮かべるほど、何とも怖くなるホラーストーリー。ややもするとダークで殺伐とした雰囲気になってもおかしくない物語。しかし終始幻想的な映像で、見事に狂気の中に"美"と"明るさ"を取り込んでいます。この映像世界は秀逸といえるのではないでしょうか。
 冒頭からスクリーンに釘付けになります。サングラスの女性が何とも不気味。あのサングラスの奥にはきっと何かあるのだ、と思うと、それだけでもう引き込まれてしまいます。その女の昔話。少女が赤ちゃんを落としてしまうところはいかにも怖い。赤ちゃんの死体は一切映っていないのですが、それだけに、赤ちゃんの死体を想像してしまいます。その自分の想像に恐怖感を感じてしまうのです。さらに死んだ赤ちゃんを連れまわす少女。このシーン、暑い夏の日差しが何とも残酷感を高めています。時折入るおもちゃのカット。何か意味があるのだ、と必要以上に想像してしまい、"もう、何なのだ"、と叫んでしまいたくなります。そしてこの"ようぐそうとほうとふ"。いったんおもちゃをばらばらにして直すのだとか。つまり赤ちゃんを・・・。
 と、実はこの映画、シーンそのものに怖い映像はほとんどないのです。驚くべきことです。見る者の想像をうまく掻き立て、みずからの想像に恐怖してしまう映画なのです。全編まるでファンタジーのような映像。これがまた少女の無垢な狂気をいっそう際立たせています。結末は原作通り。予測はつくかもしれませんが、いい落としどころだと思います。個人的には気に入ってます。
 全体の雰囲気が何となく好きですね。恐怖、狂気、でも叙情的。強烈なインパクトや確固たるメッセージがあるわけではありません。これらを期待するよりは、想像をたくましくして見るとこの映画の雰囲気に酔えるのでは、と思います。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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