| 解夏 | |
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げげ(2003/日本/113分) [監督・脚本] 磯村一路 [原作] さだまさし [撮影] 柴主高秀 [音楽] 渡辺俊幸 [出演] 大沢たかお、石田ゆり子、富司純子、林隆三、田辺誠一、古田新太、柄本明、松村達雄 [評価] ★★★☆☆ 小学校の教師・隆之は、突然、徐々に眼が見えなくなるベーチェット病と診断され、職を辞して長崎に帰郷する。恋人・陽子とも別れる決意をするが陽子は押しかけてきて離れない。ほどなく隆之は、故郷の風景を忘れないように長崎中を歩き始める ・・・。失明の宿命を背負った男と、彼を見守る周囲の暖かさを描いたドラマ。多分に創作的だが心情や機微を丹念に描いた感動作。 |
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ストーリー ある日、東京の小学校で教壇に立つ隆之は、視界の不良や口内炎などに悩まされ、幼なじみの医師・博信のもとを訪れます。そして、博信は、隆之の症状の原因がベーチェット病であると診断。それは人によっては徐々に視力を失っていく病気で、隆之も失明の可能性が高いと打ち明けます。 まだ実感が薄いながらも失明を覚悟した隆之は、大学時代の師・朝村を訪ね、みずからの病気を告白。恋人でモンゴルに遊学中の朝村の娘・陽子とは別れる決心をしたと告げます。そこで陽子が昔から隆之に片想いしていたことをはじめて知ります。そして春休み。隆之は学校を辞して故郷長崎の母の元に。しかし、父から事情を聞いた陽子が訪れ、自分が隆之の目になると言って家に住み始めます。そして、隆之は大好きな長崎の風景を刻み込むために、陽子と一緒に長崎中を歩き始めます。 そんなある時、陽子と訪れた禅寺で具合が悪くなり休ませてもらうことに。そこで林という和尚に出会い、あと三ヶ月で失明するとなぜか打ち明ける隆之。すると和尚は、昔の托鉢僧の修行の話を始めます。奇しくもその日が行の入り "結夏" (けつげ)。三ヵ月後が行の終わり "解夏" (げげ)。その瞬間、隆之は失明という恐怖から解放されるのだと林は説くのです。そして隆之も、その言葉に勇気を得ます。が、失明の日が近づくにつれ、やりきれなさから陽子にも冷たく当たるようになってしまい ・・・。 コメント 昔、托鉢僧たちがひとつところに集まって行った三ヶ月間の修行を "安居"(あんご)というのだそうです。映画はその修行の最後の日、"解夏"(げげ)にかけたタイトル。が、物語では、その難解なタイトルほどには、テーマを象徴しているわけではありません。主人公・隆之(大沢たかお)にとっての解夏、それは目が見えなくなくなる日。しかしその瞬間は実に穏やかなもの。隆之の心情はまさに "解" そのものであったように思います。その時、隆之はとうに解夏を超えて新たな心境に合ったのではないでしょうか。 物語は、徐々に目が見えなくなるベーチェット病と診断された教師・隆之の苦悩と悟りを描いたもの。母・聡子や恋人・陽子、親友の松尾や大学教授の朝村など、まわりのあたたかい目がより感動を誘います。"見える?" と繰返し隆之に聞く陽子。それは見る者にとっては常にはっとするシーン。特にこの陽子(石田ゆり子)の献身的な接し方は胸を打ちますが、その決意や行為よりも心のつながりや機微を注目したいところ。お涙頂戴のモチーフからは一歩引いた奥の深さを感じます。 中盤、林禅師がする "解夏" の話。 "失明はあなたにとっての行なのだ" しかしその表情は苦渋に満ちています。失明で恐怖からは解放される、が、その先がある。その大変さへの思いやりが、見事に表情に表されています。が、一方では坂の多い長崎。繰返し映し出される坂を上るシーン。ひたすら長崎の坂を、隆之が、陽子が、そして母聡子が上ります。それは永遠に続く困難な道を象徴しているよう。そして最後。一休みをする二人の姿。そう、先は長い、坂はまだまだ続く。ゆっくりと歩みながら上ればめばいい、そんなやわらかな気持ちが伝わってくるのではないでしょうか。 母聡子が繰返しお菓子を買いに行くシーンは何とも象徴的。母の明暗分けた心情をそのまま表現しています。いつの間にか郵便配達が陽子に高野さんと言って手紙を渡すさりげないシーンも心憎いところ。特に、主人公・隆之の心理の変遷が見事に描写されています。告知を受けた時の冷静さ。が、失明する日が近づくにつれ、徐々に実感が増し、昂ぶってくる感情を抑えきれないその様。これら一連のシーンには確かにリアリティを感じます。 が、一方では視界が暗くなるシーンなど、半ば夢幻の世界を表現してはいますが、個人的には、映像上の工夫よりは心理描写に徹した描写の方が好み。俳優陣も多分に演技的で、やはり "つくりもの" とういう印象を持たざるを得ません。逆にシリアスになりすぎるのを防いでいる、とも言えるのですが、かえってアンバランスさを感じてしまいちょっと残念なところ。 シリアスなテーマに感動的なストーリー。とりわけ悲劇ではないところには好感が持てます。総合的に、面白さ、という点では一歩下がりますが、爽快感の残る映画ではないでしょうか。 | |