映画鑑賞記

家族ゲーム
preview (1983/日本/106分)
[監督・脚本] 森田芳光
[原作] 本間洋平
[撮影] 前田米造

[出演]
松田優作、宮川一朗太、伊丹十三、由紀さおり、辻田順一、土井浩一郎

[評価] ★★★☆☆
高校受験を控えた劣等生の問題児のもとにやってきた家庭教師は落ちこぼれ大学生。ろくに指導もしないのになぜか成績はうなぎのぼり。受験生を抱えた家族の様子を、風刺の効いた視点で描いたブラックコメディ。
ストーリー
 どこにでもありそうな平凡な家族沼田家。優秀な兄真一に比べ劣等生の弟茂之は高校受験を翌年に控えていました。その茂之に新しい家庭教師がやってきます。二流私大に七年も通っている吉本です。当の茂之は成績が悪い上にいじめにもあっているという悲惨な状態。そのくせどこか皮肉的で家庭でも学校でも問題児でした。
 やる気があるのかないのか分からないような吉本でしたが、ある時、父孝介から成績に応じてボーナスを出すと言われ俄然力が入る吉本。時に殴りつけ、時にプロレス技をかけながら茂之の尻をたたきます。そんな吉本を見て、茂之は恐々として勉強をするようになり、成績は徐々に上がっていきます。おまけに喧嘩の指南までする吉本。いじめっ子土屋にやり返すようになり、学校での立場も変わっていきます。
 一方、一流高校に通う真一は逆に無気力になっていきます。父孝介は勉強のことしか子供に言わずしかも母千賀子にまかせっきり。そのため、千賀子は何かにつけ吉本に相談するようになります。ある日、成績の上がった茂之の志望校のランクを上げるよう言っていましたが、茂之はクラスの担任に伝えていませんでした。千賀子に頼まれて仕方なく学校に向かう吉本。茂之に無理やり志望校を変更させます。その後茂之に志望校を替えたくない理由を白状させてみると・・・。

コメント
 松田優作が吉本を演じることでこの映画のイメージは成り立っている 、といってもいいでしょう。まさに松田優作にしかできない吉本像を演じており、松田優作にしか出せない雰囲気をかもし出しているのです。もともとはもっとコミカルな作品を想定していたのでは、とも思えるのですが、このことでブラックな要素が加わり、より格調高い作品になったとも言えます。
 吉本のコミカルなシーン。当の吉本はにこりともしないのです。ある時、恋人の事を茂之に突っ込まれて、無言でゆっくりと胸ポケットに手をやり、ハンカチを取り出してゆっくりと額に当てる。またある時は、茂之のエロ本を取り上げ、植物図鑑を見るふりをしてエロ本を挟んで眺める。また、時には暴力を振るう吉本。おかしくもあり恐ろしくもあり。笑っていいのか悪いのか。まるで漫画の世界なのですが、何とも不思議なシチュエーションをつくり出しています。
 社会問題的な要素。いじめや受験だけではなく、暗に表現しているのが、どの家庭でもあるのではないかという問題。象徴的なのが、横一直線に並んで家族が食事をするシーン。互いに目を合わせることはありません。会話もどこかひとごと。それに癖のある登場人物たち。手のかからない代わりにコミュニケーションにも乏しい兄真一。子供には成績以外関心がない父。お役所仕事しかしない茂之の担任。等々。他にも問題のある登場人物ばかりをそろえていて、このあたり、人間観察の鋭さを感じさせます。そして極めつけが、優秀な家庭教師が手におえなかった茂之を、二流大学生の吉本が、ろくな指導もしないのに実績を上げてしまうというオチ。いったいこの世の本質とは何なのか。現代社会が見誤っている本質を見事に指摘している作品でもあります。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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