映画鑑賞記

王立宇宙軍 オネアミスの翼
preview (1987/119分)

[監督・脚本] 山賀博之
[音楽監督] 坂本龍一

[出演](声) 森本レオ、弥生みつき

[評価] ★★★★☆
 1950年代の地球に似た異世界。様々な困難にぶつかりながらも、世界初の有人人工衛星を実現させようとする人間たちの物語。空想世界を描いたアニメながら、決してマニアックに陥いることなく、質の高い人間ドラマを実現した秀作。
 王立宇宙軍は、"軍"と名が付くにもかかわらず、ただ宇宙へ行くために存在する団体。わずかな隊員たちは、働くのがいやで軍に籍を置くような、社会の脱落者ばかり。おまけに政府の予算縮小で軍の存続さえ危ぶまれる状況。市民からも"宇宙人と戦争をするの?"、と馬鹿にされる始末。シロツグ・ラーダットはそんな宇宙軍の一員でした。
 ところがある日繁華街で、神の教えを説くために一生懸命ビラを配っているリイクニという少女に一目ぼれ。信者希望者を装って自宅まで押しかけてしまいます。そんなこととは知らないリイクニは、喜んでシロツグを招き入れます。そして、シロツグがおずおずと宇宙軍にいるのだと言うと、そんなすばらしい仕事はない、と、リイクニは純粋に尊敬の念をシロツグに表すのでした。
 翌日、宇宙軍の責任者である"将軍"は、世界初の有人人工衛星の打ち上げ計画を兵たちに発表し、パイロットの志願者を募ります。ところが、一人だけ上がった手の主は、落ちこぼれのシロツグでした。単純なシロツグは、リイクニの態度に感激し、宇宙への夢に目覚めてしまったのです。
 シロツグには、直ちにパイロットになるための厳しい訓練が課せられます。ロケットも刻々と完成に近づいていきます。ロケットをつくるのは宇宙旅行協会と名乗る老人たち。しかし、その棟梁グノオム博士はエンジンの爆発事故で命を落としてしまいます。その間、社会は失業者問題にゆれ、さらに犬猿の仲にある隣の"共和国"から平和を乱す行為と非難され、計画は中止の危機を迎えることになります。
 一方、リイクニとの仲は一向に進展しません。逆に、彼女の信仰の影響で、徐々に宗教に興味を持ち始めるようになります。彼女が預かっている小さな女の子マナからも、心ならず信頼を得られたようでなついてきます。マナは年中争っていた両親を見ていて人間不信になり、めったに他人と口を利かなかったのでした。
 "将軍"の政治力で何とか計画の続行の許可が下りるようになります。"共和国"は計画を止めようと、シロツグに殺し屋を送ります。シロツグは何とか殺し屋の手を逃れるのですが、国防総省は発射基地を"共和国"の近くに移動させ、わざとロケットを奪わせて国際的な立場を勝ち取る陰謀を進行させていました。
 そうとわかりながら発射時間を待つ"将軍"やシロツグたち。しかし、点検時間の短縮という大きな危険と引き換えにして、密かに発射時間を繰り上げようと画策します。ついに戦争が始まり、ロケットの周辺が戦場になっていく中、発射への秒読みが始まるのですが・・・。

 アニメですねえ。もりじょうは決してアニメファンではないのですが、たまには見るのですよ。
 さてこの映画、ロボットも宇宙船も出てきません。あれは苦手です。その点ちょっと安心。それどころかいたってまじめな映画です。格調高さもあります。普通の大人が見るに堪えるドラマとしてちゃんとできてます。地に足が着いているって言うんですか。それにおもしろいし。こういうのなら何回でも見れますよ。異世界、という設定さえクリアすれば、実写にしてもおかしくないほどでしょう。
 物語の背景は、1950年代の冷戦構造を思わせます。興味深いのは、私たちと違った文明を想像しているというところです。たとえばお金、われわれ凡人が創造するのは丸いコインですが、この世界では棒の形になってたりします。家や電車、着ているものなど、とにかく描写が細かいのです。そんな映像を眺めてるだけで、ちょっとしたおとぎの世界を体感できます。
 ただ、シロツグとリイクニのラブストーリーはもうちょっと進展させてほしかったなあ、などと勝手に思ったりします。まあ、宗教の象徴としてリイクニを描いたのだとすれば、このような世俗的な見方はわがままかもしれませんが。
 圧巻なのはロケット打ち上げのシーンでしょう。発射の時のエンジン音、わざと消したりしていますね。心憎い演出です。人間の想像力を超える迫力をつくり出すことはできないそうです。でももりじょうはその後のシーンの方が好きなのです。人類の歴史がフラッシュバックされるところです。進化、文明、戦争、そして人間の営みが描かれていたりします。とても哲学的な映像ですね。
 そして最後。物語を"純粋な"「祈り」に帰結させるあたり、ちょっと切ないような、元気が出るような、不思議な気分にさせられてしまいます。

   確かに普通に見て普通以上に楽しめる映画ですが、この映画の人気は根強いようで、検索すればファンサイトがずらずらーっとでてきます。漏れ聞くところによると、アメリカでも上映当時好評で、ある劇場では、ロケット打ち上げの際にカウントダウンの声が沸き上がったとか。
 余談ですが、このお話、小説にもなっています。不勉強で映画とどちらが先なのかは分かりません。小説の方では、落ちこぼれのシロツグに対して優秀なライバルが登場します。これがまた映画とは違ったおもしろさをかもし出しているので、あわせて読んでみても良いかもしれません。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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