| シェイディ・グローヴ | |
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(1999/日本/99分) [監督] 青山真治 [脚本] 青山真治 、佐藤公美 [撮影] 田村正毅 [音楽] 青山真治 、山田勲生 [出演] 粟田麗、ARATA、関口知宏、光石研、斉藤陽一郎 [評価] ★★★☆☆ 男に振られて見ず知らずの人間に電話をかけまくっては愚痴をこぼすリカ。それを自分を見失いかけていた河野が偶然受けると親身になって励ます。やがて二人は出会い、互いに不思議な絆を感じるのだったが・・・。自分の世界に溺れる女と自分の居場所を求めてさまよう男のラブストーリー。彼らの再生と自己発見の物語でもある。 |
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ストーリー 半年付き合った男性・小野に振られたリカ。落ち込んで無差別に電話をかけまくっては愚痴をこぼしてしまいます。が誰も相手にしてくれる人はいません。一方、自分のアイディアを受け入れてもらえずやりがいを失っていた映画の宣伝マン・河野は、内定していた大阪転勤を蹴って辞表を出します。そんな時、リカがかけ続けていた電話が偶然河野につながり、リカの悩みに親身に応えることに。 立ち直ったリカですが小野が忘れられず、今度はしくじらないようにと男に嫌われない本を買って予習。しかし、連絡なしに家へ来る女は嫌われると書いてあったにもかかわらず、いきなり小野の家へ。そして出てきたのは若い女。リカのストーカーまがいの行為に小野は激怒します。 追い出されたショックで喘息の発作を起こすリカ。以前電話でやさしくしてくれた河野を呼んでしまいます。しかし河野は言われるがままその場所へ駆けつけ、発作を鎮めると、リカを家まで送ります。そこで森の絵をもらうことになる河野。家に帰ってあらためてながめていると、まるでそこが自分の探していた場所であるかのように思えてきます。河野も自分の居場所を失いかけていたのです。 そして、河野はリカと再会。森の場所を訊ねて期待を込めて向かいますが、そこは住宅街に変わっていました。一方、リカは思いついて探偵を雇うことに。小野の行動を見張らせて報告させることにしたのですが・・・。 コメント 大変趣のある表題は、影成す木立、とでも言えるのでしょうか。もとは音楽の一フレーズのようですが、ここでは、作中登場してくる夢の中の美しい森になぞらえられ、それはまた、本作の本質である自己の存在性と他への関係性の象徴にもなっています。 物語は、リカという女性が男に振られるシーンから始まります。 "振られた" と認識しているにもかかわらず、男につきまとい始めるのです。このリカという人物の描写がユーモラス。迷惑電話にストーカー行為、と、とても利己的な女性としても描かれています。しかも、探偵が言うように、自分の問題を他人に転嫁してしまう性分の持ち主。自分の世界に没頭することで、かえって自分を見失っているのだとも言えるでしょう。 一方、河野は、この世界に自分の居場所を失いつつあり、わずかな幻想に居場所を求めて探し回る人物。会社やバー。社会の中に孤立関しているその姿が克明に映し出されます。また、狭い部屋が彼の空の中であることをよく表しており、車のバックシートから映るその姿もさまよう様をよく表しています。 この河野には二つの象徴があります。一つは双子の妹、一つは夢の中の森。亡くなった双子の妹、それは自分の存在の唯一の象徴であり、森は幻の中にしかない他との関係の象徴でもあったわけです。しかし最後、それは一つであることが分かります。それが、人間が持つひとつの世界であることを河野は悟るのです。 リカは周りの人間を省みることで、河野は自分を省みることで、さらにそれをみずから認めることで、ようやく未来へ前進を始めるわけですが、その意味では、二人の人間の再生と自己発見の物語だとも言えます。それを二人のラブ・ストーリーとして昇華させたことで、より深い "感動" を生むことに成功しています。 他にも、本作には様々な示唆と象徴が本作にはちりばめられています。リカがつきまとう小野、さらに探偵や警備員といった脇役でさえその道具の一つ。逆に、やや思惟的に過ぎるきらいはあるかもしれません。うるさいと思えるくらい一つ一つのモチーフが意味深で多分にシンボリックです。が、一方で、本作では常に個と他、存在と関係とがつきまといます。これらは、時に鮮やかな対比を成し、時に混濁して惑わせる表現をしているのです。映像表現には賛否が出そうですが、動くことのないベースとそれによる統一感には好感が持てます。 最後、二人が世界の中にいたのではなく、自分が世界そのものであったというシーンで物語りはしめくくられます。この世界の逆転とも言える内面描写こそが本作のテーマであり、最もふさわしい結末であったように思えます。全体を通してみると、内面的な哲学性と視覚的なイメージとが奇妙なバランスで同居しているとも言える本作。つくりにも心理描写にも荒っぽさは残りますが確かに伝わってくるテーマと本質。佳作に挙げてもいいのではないかと思います。 | |