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あの、夏の日 - とんでろじいちゃん -(1999年/日本/123分)
cinema review ![]() STORY
都心近くの新興住宅地。小学5年生の大井由太は、夏休みの間田舎の尾道に行くよう両親から説得されていた。どうやら田舎のおじいちゃん、賢司郎がボケてきたらしいのだ。そこで両親は、共稼ぎの自分たちの代わり、見張りがてら由太を送り込もうと考えたのだ。由太は元校長の祖父が怖そうで苦手だったが、母が払うと言うアルバイト料につられて承諾してしまう。
途中、福山でおばあちゃんに迎えられ、在来線に乗り換えた由太。おばあちゃんによると、おじいちゃんは、空を飛べる、などと真面目に言っているらしい。不安になる由太だったが、ふと電車の外を見てみると、なんと飛んでいるおじいちゃんが見えてしまう。おじいちゃんは本当はボケていないんじゃないだろうか? しかし家に着くと、おじいちゃんが他人の葬式に行ってラジオ体操を踊っているビデオを見て混乱するのだった。 その日、早速おじいちゃんからどじょうすくい誘われて出かけることに。しかし、対岸の向島に行くはずが着いたのは海。するとおじいちゃんは、いいと言うまで目を開けるな、と言い、妙な呪文を唱え始める。「まきまきまきまきまきましょう ・・・」、と、由太が気づいた時は小川のそば。ここは向島の中らしかった。さらにおじいちゃんは、誰とも口を利いてはいけないと由太に注意する。そこで由太は、とっくに死んだはずのホラタコの多吉やしゃべる鯉に会ったり、と不思議な体験をするのだった。 数日後、今度はおばあちゃんといっしょに潮干狩りをしに向島に行くことになる。そこで由太は、島にある長恵寺の娘・ミカリに出会い家に誘われる。家にはあかずの間と呼ばれる部屋があった。そこは昔、肺病を患い十一歳で亡くなった寺の娘・玉が住んでいたという。ほどなく由太は、玉がおじいちゃんと好き合った仲だったことを知る。そしておじいちゃんは、ある事件が元で、自分が玉を死なせたと信じ込んでいた ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
新・尾道三部作と呼ばれる大林宣彦監督作。本編はその三作目。特にシリーズになっているわけではなく、舞台を尾道とした、ということでこの名が付けられているようです。ちなみに前二作は「ふたり」(1991)と「あした」(1995)。偶然かどうか分りませんが、奇しくも三作とも人の死に関わるモチーフを抱えています。本作では宮崎あおいが死を目前にした美少女・玉を好演。主人公のおじいちゃん・賢司郎(小林桂樹)もまた、最後に死を迎え感動的なシーンを創出しています。一方では荒唐無稽な点も多く、子供映画の印象が濃い作品でもあります。どこまで無垢な気持ちで見られるかが、感動できるかどうかの大きなポイントになりそうです。
物語の主人公は都心近くに住む小学5年生の由太(厚木拓郎)。夏休み、アルバイト料に吊られて父の田舎・尾道に一人向かわせられます。任務はボケたというおじいちゃんの監視役。ところが、おじいちゃんはいたって元気で、それどころか空を飛んだり過去に戻ったり、と、不思議な体験ばかり。やがて、おじいちゃんには、思い出したくない過去があることを知ります。それは、子供時代好き合っていた余命短い少女・玉とのできごと。玉の住む寺の弥勒様を壊してしまったことで、玉は早くに亡くなってしまったと、おじいちゃんは思い込んでいたのです。しかし由太には不審な点に気付きます。そこでおじいちゃんのために真相を突き止めようとするわけです。 あの、夏の日、というのはおじいちゃんにとっては少年時代、後悔深いある一日、そして由太にとってはおじいちゃんと過ごした不思議な日々を指すのでしょう。とにかくも、前半では珍しく能天気な空想もの、といった印象がありました。ところが後半になって、少年時代の賢司郎と玉との切ない恋物語が語られ、大林作品いつもの叙情色を強めていきます。実は冒頭では、ストーリーに関係のない人物たちをテロップ入りで紹介したりしていて、ちょっと雑然としているのですが、中盤からの展開は無駄なくコンパクト。観る者をストーリーに引き入れる円熟味をうかがい見ることができます。 しかし物語は終盤。「死」を描きます。薄幸な玉の死。そしておじいちゃんの死。最後、おじいちゃんは満足げに言います。いい人生だった、と。そして由太に言います。このことは誰にも話すな、しかし由太がおじいちゃんになったら孫に話しなさい、と。親から子へ、孫へ、語り継ぐべきものがある。それは人の営みでもあるのでしょう。大林作品では、どんなに突飛なシチュエーションでも、このような地に足のついたドラマが展開します。それが万人を感動させる一因であるのかもしれません。 さておき、このおじいちゃん、実は恋愛結婚にコンプレックスを持っていることが分ります。自分が玉と結ばれず、おばあちゃんと見合い結婚をしたことが原因なのかどうか? とにかく由太の両親の恋愛結婚を快く思っていない、などというシーンが出てきます。一方おばあちゃん(菅井きん)は言います。昔は好きとか嫌いとか考えたこともなかった、と。おじいちゃんは少年時代に出会った薄幸の少女・玉がいまだに忘れられない。わけで、おばあちゃんがちょっぴりかわいそうに思えてきます。 が、ラスト、由太は目撃します。おじいちゃんが飛んでいる姿を。片腕には玉、もう片腕にはおばあちゃん。天国では一夫多妻制なのか?などと考えてはいけません。結局おじいちゃんの愛情は、しっかりとおばあちゃんにも注がれていたわけです。おじちゃんが亡くなり、おばあちゃんや親しくなったミカリ(勝野雅奈恵)との別れ。湿った雰囲気の終盤でしたが、陰を陽にひっくり返すこのハッピーなオチは、もう見事としか言いようがありません。大満足のエンディングでしょう。 ところでサブタイトルにある「とんでろ」とはどういう意味なのでしょう?飛んでいた、くらいの意味なのでしょうか。尾道地方の方言なのかも知れませんが、残念ながら作中にはまったく説明がありませんでした。大林監督らしからぬ不親切さです。ともかくも、最後まで荒唐無稽さは拭えなかったわけですが、ところが、それでも思わず涙してしまう、のが本作の底力でしょう。気軽に見れる感動作、しかも相応に深みがある、と、無垢な気持ちが少しでも残っている人になら年齢問わずおすすめできる作品です。 |
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- 新・尾道三部作 -
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