Index

HOME > 映画TOP > 鑑賞記(邦画)

Information


OUT

(2002年/日本/119分)

[監督]平山秀幸
[原作]桐野夏生
[脚本]鄭義信
[撮影] 柴崎幸三
[音楽]安川午朗
[出演] 原田美枝子、倍賞美津子、室井滋、西田尚美、香川照之、間寛平

[内容]

 ある夜、雅子の許に、同じパート仲間の弥生から電話が入り、暴力を振るう夫を殺してしまったと泣きつかれ、仕方なく死体処理を引き受ける。そして手に余ると感じた雅子は、寝たきりの母を抱えるヨシエとローン地獄の邦子を誘い入れて、死体をばらばらにし始めるのだったが ・・・。桐野夏生のハード・ミステリーの映画化。映画ではユーモラスなモチーフを加味して娯楽性を演出。テーマはややぶれた感はあるがほどよいサスペンス・ドラマとなる。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 雅子、ヨシエ、邦子、弥生の四人は同じ弁当工場で働く深夜パート。四人はそれぞれに問題を抱えていました。雅子には失業中の夫に家庭に無関心な息子。ヨシエは寝たきりの老母を抱え、その上借家の立ち退きを迫られている最中。邦子は病的な買い物中毒でローン地獄。出産間近の弥生はギャンブルに狂う夫から家庭内暴力を受けていました。
 ある時、弥生は、夫の暴力に耐えかね、逆に絞め殺してしまいます。連絡を受けた雅子は弥生の泣き落としに折れ、死体の処理に協力することに。雅子の車のトランクに一時隠しますが、途端に弥生は知らん振りを決め込んでしまいます。呆れながらも一人では手に余ると判断した雅子はヨシエに相談。渋るヨシエを金で釣って何とか協力を取り付けます。
 そして自宅で死体をばらばらにし始める二人。そこに偶然、借金の申し込みに邦子が訪問。家の中の異様な雰囲気を察した邦子を見て、雅子は、口止めには共犯にしてしまった方がいいと考え、無理やり共犯に引き込みます。
 ばらばらにした死体は、各自が持ち帰りごみとして捨てることにした三人。が、邦子は帰り際に近くの霊園のゴミ箱に捨ててしまい、すぐに露見。一方では懇意にしている消費者金融の十文字につい口を滑らせてしまいます。それでも、闇カジノのオーナー・佐竹が容疑者として逮捕され、事は収まったかに見えたのですが ・・・。

・・・

COMMENT

 女性を主人公にしたハード・ミステリーで定評の桐野夏生原作の映画化。映画ではコミカルさも加味して、シリアス一辺倒のサスペンスとなることを回避。確かに、かなりハードな内容ではあります。結果、より娯楽性を高めた形にはなっているのですが、むしろアンバランスとなったような気もします。どこまでユーモアが伝わったかは微妙なところです。
 物語の主人公は四人の女性。同じ弁当工場の深夜パート。それぞれに問題を抱えていて、雅子(原田美枝子)は家庭不和、ヨシエ(倍賞美津子)は寝たきりの母の介護、邦子(室井滋)は浪費癖で借金まみれ、弥生(西田尚美)はギャンブル好きの夫からの暴力。その一人、弥生がついに爆発して夫を殺してしまうのです。そして他の三人は死体の処理に協力することになります。
 序盤は四人の追い詰められた生活を端的に映し出しつつ、死体をめぐるやり取りをブラック・ユーモア風に描いています。それぞれの人物像も徐々に明らかとなっていき、後には、物語の展開すべてが、彼女たちの性格に因っていることも分ります。この点、非常に優れた人間ドラマと見ることもできます。
 四人の企みは徐々に思わぬ方向へと進んでいきます。いい加減な性格の邦子が死体を霊園に捨てたことから事件が発覚。しかも、ちょっとしてた不注意から懇意の消費者金融の男・十文字(香川照之)に疑惑を持たれ、秘密をしゃべってしまうのです。が、十文字は脅迫するでもなく、むしろ死体処理の商売を思いつき、雅子に話を持ちかけることになります。
 意外に大きな比重を持っているのが、雅子と雅子を好きになってしまうこの十文字とのやり取りで、秘事を共有しながらもどこかドライな四人の関係と対照的。絶妙なアクセントを放っていると言えます。が、この闇の商売もすぐに息詰まります。およそ人間的な感情を持たない男・佐竹(間寛平)が嗅ぎつけてきます。佐竹は弥生の夫殺しの容疑者にされたこともあり、やがて暴力的な復讐を始めるのです。
 ラストについてはやや中途半端との印象があります。確かに、展開上絞められるべき結末と思われます。四人の間にあったものは何だったのか。最後、互いに、嫌いだ、と言い合いつつ離れない雅子と邦子が、四人の関係を象徴しているようでもあります。いずれにせよ、緩やかな解放という形をとったことで、四人それぞれの人格を強調したかったとも見て取れます。
 ややきつめの暴力表現は個人的にはちょっと苦手なのですが、見る者の感情をコントロールするには効果的ではあるのでしょう。一方、ストーリーの面白さはやはり原作譲りと言えます。さらにコミカルさが加わって、となると、鄭義信脚本のカラーがよく出ている、とも感じます。娯楽作品としては、なかなかそつなく出来ている、映画なのかもしれません。

(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン)
amazon DVD link
平山秀幸関連作
(学校の怪談、ターン)
原田美枝子関連作
(折り梅、半落ち)
倍賞美津子関連作
(瑠璃の島、星になった少年)
室井滋関連作
(怪奇大家族、やっぱり猫が好き)
西田尚美関連作
(ナビィの恋、ひみつの花園)

more review ...
 桐野夏生原作作品は他にも「天使に見捨てられた夜」、「柔らかな顔」など。そして本作は第51回日本推理作家協会賞受賞作。いずれも女性を主人公としたミステリー。日本を代表する女流作家の一人です。

www.sasaraan.net

・・・

(c) morijoh