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雨月物語(1953年/日本/97分)
cinema review ![]() STORY
戦国時代、羽柴勢と柴田勢の戦が始まろうとしている時。琵琶湖北岸のある村。ある時、陶工の源十郎は市でにぎわう長浜まで出向き陶芸品を売りさばき金を手にします。以来、商いに目覚め必死で陶器を焼き続ける日々を送ります。しかし妻・宮木は、幼い子、源一と親子三人で無事に過ごせれば良いと感じていました。
一方、隣に住む源十郎の弟藤兵衛は武士への憧れが強く、ある日、妻・お浜の静止も聞かず、源十郎と共に長浜へ出向き、仕官先を探しはじめます。しかし具足と槍を身につけてこいと言われ、村に帰ると、金をつくるために源十郎の仕事を手伝いはじめます。 やがて柴田勢が押しかけ、村の男たちを人夫としてさらっていきます。難を逃れた源十郎は、長浜での商売をあきらめ、向こう岸の丹羽家の領地・大溝で陶器を売ることを思いつきます。妻と子を残し、藤兵衛夫婦と共に船で向こう岸へ渡ることに成功。しかし藤兵衛は金を手にすると具足と槍を買い、妻を置いて単身丹羽家に仕官してしまいます。 一方の源十郎は、陶器を買った姫風の客から品物を届けるよう言われ、朽木屋敷まで出向きます。すると思いもかけない供応を受け、朽木家の遺児だという若狭にたちまち魅了されてしまいます。が、その一方では、残された宮木は落ち武者に殺され、お浜もまた遊女に身を落としていました。その時家族を忘れた源十郎は屋敷から離れられなくなっており、ついに若狭と契りを結んでしまいます ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
名匠溝口健二監督最盛期の一本。原作は上田秋成の「雨月物語」で、これは江戸時代中期の怪異物語集。映画の冒頭では「奇異幻怪」という言葉で形容しています。その中から「蛇性の婬」と「浅茅が宿」を採用してひとつのストーリーにアレンジ。違和感なく統一させ、見事な文芸作品につくり変えています。そのテーマの深さにもかかわらず明快、一方では芝居的とはいえ表現が過剰になりすぎず、技術的な古さを別にすれば、屈指の名作と呼んで良いかもしれません。
物語の主人公は陶工の源十郎(森雅之)。シチュエーションは異なりますが、商いに出たきり家に帰れなくなり、やっとのことで帰った時には妻は亡くなっていた、というストーリーは「浅茅が宿」のもの。源十郎が商いに出向いた先で、それと知らずに死人と契りを結んでしまうというのが「蛇性の婬」から出たもの。物語には、さらに、弟・藤兵衛(小沢栄)と妻・お浜(水戸光子)の物語が絡んできます。 源十郎は頑固なようで安易に流されやすい性格。家族のため、と信じ、せっせと陶器を焼き、商いに精を出します。が、商い先で美女・若狭(京マチ子)に誘惑されついには契りを結んでしまいます。そしてその間、残された妻・宮木(田中絹代)は落ち武者に殺されてしまうのです。一方の藤兵衛もまた、武士への憧れを妻のためと思い込み、妻を置いて仕官。しかし妻は行きずりの兵らに手ごめにされ、遊女にまで身を落とすことになるのです。 内容に怪談の要素はあるにしても、本作ではそれはモチーフのひとつにしか過ぎません。主人公源十郎の心の弱さを象徴するものとして描かれているのです。藤兵衛についても同様で、そのエゴがまねく悲劇を丹念に追いかけてゆきます。それぞれの人物像が、わかりやすい感情表現とともに明確に位置づけられているのが見事で、観ていると、それぞれの人物の中にすっと入ってしまっていることに気付きます。本作の名作たる所以が垣間見えます。 さらに、シーンをテンポ良くつなげ、終始見る物の集中心を削ぐことはありません。そのせいか、ややぶつ切りのところもありますが、当時の構成感覚としては決して違和感のあるものではありません。ともかくも、人間のエゴと弱さを結びつけ、それが生む悲劇と希望、しいては家族愛の本質を見事に表現し切ったと言えるのではないでしょうか。ラスト、お浜が源一に飯を運び、源一がその飯を母の墓に供え、さらに妻・宮木の幸せに満ちた独白のシーンが、物事の正しさとは何かを伝えているような気がします。 ちなみに、木村佳乃主演のホラー映画「ISOLA/多重人格少女」の ISOLA とは、「雨月物語」の「吉備津の釜」に登場してくる磯良のこと。この古典小説は、その後の日本文学に多大な影響を与えたとも言われています。今なお多くの人々を魅了してやまない「雨月物語」。これを機会に触れてみるのもいいかも知れません。 |
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58歳で惜しくも亡くなった溝口健二監督最盛期の一本。この前後にも「西鶴一代女」(1952)、「山椒大夫」(1954)など、世界的名編を次々と撮っています。この二作品は本作にも出演した田中絹代が主演。ちなみに本作はベネチア国際映画祭銀獅子賞、「西鶴一代女」はベネチア国際映画祭国際賞、「山椒大夫」はベネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞しています。
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