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運命じゃない人(2004年/日本/98分)
cinema review ![]() STORY
桑田真紀は同棲中の恋人の浮気に気付き、その夜恋人の家をあとにした。これからは誰も信じずに一人で生きてゆくとの決意だった。しかし悲しみがこみ上げ、涙が止まらなかった。
その夜、平凡なサラリーマン・宮田武が一人暮らしのマンションに帰宅すると、中学時代からの親友・神田勇介から電話がかかってくる。食事の誘いだがなぜか小声だ。そしてレストランで、倉田あゆみが結婚するらしいと勇介から聞いて驚く。あゆみは半年前に捨てられた元恋人だ。そのためにマンションを買って一緒に住み始めたが、一週間であゆみは他に男をつくり、身ひとつで出て行ってしまっていた。勇介は、いまだに未練を残す武に新しい彼女を作るよう忠告し、早速後ろの席の女性をナンパ。女性は家出したばかりの真紀だった。 その後勇介はトイレに行ったままなぜか戻ってこない。武は、行くあてがないといって泣き出す真紀を自宅に泊めてあげることに。そして元あゆみの部屋に案内するが、その時突然、あゆみが残った荷物を取りに訪ねてくる。その様子を見た真紀は、あゆみに自分勝手だと怒り出し、マンションを飛び出してしまう。すると武はあゆみに別れを告げ、真紀を追って外に出て行くのだった。 その夜、勇介が自分の探偵事務所に帰ると、あゆみが待っていた。勇介は武には黙っていたが、あゆみの胡散臭さに気付き身元調査をしたことがあった。実はあゆみは、男に言い寄っては金を騙し取る詐欺師だったのだ。そのあゆみは、今度はやくざの恋人から組の金をくすねて逃げてきたという。相手は浅井という組長だ。あゆみは海外に逃げるため、武の部屋に置きっぱなしのパスポートを取ってきて欲しいと勇介に頼む。そこで勇介は100万円の報酬と引きかえにこれを承諾。二人で武の部屋に忍び込むのだったが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
新進・内田けんじ監督・脚本のコミカルな人間ドラマ。サスペンス風でもあります。物語は、一晩の一連の出来事を四人の立場から描いていきます。つまりは同じモチーフが3度、4度と繰り返されるわけですが、これが意外にも飽きが来ないつくり。内田監督の非凡さをうかがわせます。何よりもパズルのような綿密なプロットには思わず感心。この映画を見ることは、ちょっと不思議な体験と呼べるかもしれません。
一人目の主人公は、浮気した恋人の許から飛び出してきた真紀(霧島れいか)。悲しみをあらわにしつつも一人で生きていく、と健気な決意を固めます。が、レストランで男に声をかけられるとほいほいと席を移り、会ったばかりの優しげな男につい抱きついてしまうのです。その相手が純真なサラリーマン、宮本武(中村靖日)。マンションを買ったとたんに恋人に捨てられ、以来未練たらたらで半年間一人身。しかし、レストランで真紀に出会い、心動かされることになるわけです。 この序盤、宮田武と桑田真紀のラブ・コメディを強く匂わせます。武は真紀を泊めようとし、しかしそこにもと恋人・あゆみ(板谷由夏)が荷物を取りにやってきて、すると真紀が家を飛び出していき、と、いかにも意味深のシーン。が、彼女たちの行動の謎は、やがて暴かれます。 ところが中盤、主人公が神田勇介(山中聡)に移ると、軽いサスペンス劇に早変わりします。勇介は自分に会いに来たあゆみに頼まれ、ヤクザの恋人から逃してやることに。あゆみは実は詐欺師。ヤバイと思いつつもつい深入りし、あゆみにだまされてヤクザに捕まってしまいます。 さらに後半では、あゆみに金を持ち逃げられたヤクザの組長・浅井(山下規介)が主人公となり、バイオレンス・アクション風の雰囲気となります。あゆみを勇介を組をあげて探索。が、これがこわいヤクザ、というわけではなく、その実は貧乏なのに精一杯見栄を張って生きているちょっとコミカルなキャラクター。実際、暴力的なシーンは皆無で、本作のバランス感覚の高さを物語っています。この物語は幅広い層で楽しむことができることでしょう。 主人公が変わるたびに時間が巻き戻され、同じモチーフが繰り返されるという手法。物語が進むにつれ、次々と背後に隠されていたからくりが明らかとなって行きます。そして最後には、まるでジグソーパズルを完成させた喜びのような感覚に捉われます。さらには、それぞれの物語が違った雰囲気となっているのがミソ。なのですが、やはり、見る側からすれば、どこにスタンスをおけばいいのか戸惑うわけです。まあ、このあたりは多くはセンスの問題でもあるのかもしれません。筆者の歳のせい、と言われれば、そんな気もしてきます。 物語は最後、再び真紀に回帰します。この星で一人で生きてゆく、と。が、その足は武のマンションへと向かうのです。正直言ってバラバラの雰囲気のモチーフが連なり、テーマ性が希薄となったことは否めませんが、一方ではパズルのようなプロットで統一感が維持されたのも事実でしょう。なんとも不思議な感慨に捉われる映画で、新しい映画体験とも言えるのではないでしょうか。何よりも、人間社会の奇妙なめぐり合わせを通して、結局は純粋で正直な者が幸福になる、という帰結には大いに満足できます。ドラマ・ファンであれば誰にでもおすすめできる作品だと思います。 |
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