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美しい夜、残酷な朝

Three... Extremes (2004年/香港・日本・韓国/125分)

第1話"DUMPLINGS"
[監督]フルーツ・チャン
[脚本]リリアン・リー
[出演]バイ・リン、ミリアム・ヨン、レオン・カーフェイ
第2話"BOX"
[監督]三池崇史
[原作]サイコウ・バン
[脚本]福島治子
[出演]長谷川京子、渡部篤郎
第3話"CUT"
[監督]パク・チャヌク
[脚本]パク・チャヌク
[出演]イ・ビョンホン、イム・ウォニ、カン・ヘジョン

[内容]

 元女優のリー夫人は若返りの餃子を求め、メイ婆のアパートへやって来る。メイ婆は確かに肌はつやつやとして華やいでいた。そしてメイ婆のアパートに通いつめるリー夫人。が、ある時、餃子の中に、世にもおぞましい物が混ぜられていることを知る ・・・(DUMPLINGS)。フルーツ・チャン(香港)、三池崇史(日本)、パク・チャヌク(韓国)の三人が参加したブラック・ホラー三連発。ホラーとしての恐怖感は希薄だが、人間内部に潜むグロテスクさ、残虐性を浮き彫りにした秀作揃い。ただし、マニアックさは否めない。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

【DUMPLINGS】  元女優のリーは、食べれば若返るという噂の餃子を求め、あるアパートの一室へとたどり着く。陽気に迎え入れたのは、皺もなく肌もつるつるの女性。聞けば「メイ婆」と呼ばれている老女なのだという。やがて出された餃子だが中には何が入っているか知れたものではない。が、若返りの誘惑に負けおそるおそる口に入れて飲み込む。以来、リーはメイ婆の餃子を食べに通い、すると徐々に若返っていくのを実感する。が、メイ婆の餃子の中には、驚くべき物が混ぜられていた ・・・。
【BOX】  出版社の吉井は、担当の女流作家・鏡子に思いを寄せていた。が、鏡子には謎が多く、決して心を許さない。ある日、鏡子の仕事部屋を訪ねると、不思議な少女に出くわす。奇妙に感じて追いかけてみると、行き止まりのはずの子部屋で少女は消えていた。少女は鏡子の前にも現れ恐怖を与える。それは鏡子の双子の姉・祥子(漢字不明)だった。姉は熱い熱いと鏡子に訴え、やがて消えていく。鏡子には忌わしい過去があった。少女時代、共に寝起きしていた奇術師の師匠は、姉を寵愛し、鏡子は嫉妬していた。ある日鏡子は、箱に出入りする練習をしている姉を見て、思わず箱の中に閉じ込めてしまう ・・・。
【CUT】  若くして映画監督として成功したリュ・ジホは、ある日家に帰ると何者かに襲われ気を失う。気が付くと家の中で縛られていた。そしてピアニストの妻ミランも、縛られてピアノの前に座らされているのに気付く。犯人の男は、リュに自分を思い出すよう強要。思い出せないでいるとミランの指を切ってしまう。男はかつてリュの映画にエキストラとして出演した男だった。男は、リュの富と才能を妬んで犯行に及んだのだ。やがて男は、リュに、妻を助けたければ殺人を犯せと命令。するとどこかから子供をさらってくる。そしてリュは、子供の首に手をかけるのだったが ・・・。

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COMMENT

 香港、日本、韓国の人気監督が短編ホラーを競った作品。いずれも、人間のエゴや欲求が、その精神を歪ませてゆくプロセスを描いています。タイトルが暗示している通り、それはグロテスクでおぞましく、しかしいずれもが人間の心の醜さが生んだもの、というテーマを掲げます。この意味では、映像上の表面的な怖さより、より内面的な恐怖を描いたと言えるでしょうか。
 第一話「Dumplings」は香港のフルーツ・チャン監督作品。Dumplingsとはここでは餃子のこと。美に執着を持つ元女優リー夫人(ミリアム・ヨン)。夫(レオン・カーファイ)は若い女性と浮気をしており冷え切った関係。そんなある時、若りの効果があるという餃子を知り、メイ婆(バイ・リン)のアパートへ。以来、得体の知れない餃子を食べに通い続けるリー夫人でしたが、ある時、その中身を見てしまいます。それは驚くべきことに人間の堕胎児だったのです。が、美への誘惑に負けたリー夫人は、それでも餃子を食べ続けます。やがて当局に目を付けられメイ婆は逃亡。その時リー夫人は、餃子ほしさに世にもおぞましい行動に出ることになります。
 非常にグロテスクな作品で、妊娠、堕胎、胎児、と直接生命にまつわるモチーフを極限にまで歪めて描ききっています。この物語の皮肉なところは、誕生=死という究極の生命から、老いを知らない美を生む錬金術にあります。さらに輪をかけて、エロチシズムあふれた映像も多々用意されており、生者と死者の対比を鮮やかに映し出してもいます。あえて言えば、グロテスク・ホラーと呼ぶことができるでしょうか。
 第二話「BOX」は三池崇史監督作品。女流作家・鏡子(長谷川京子)は毎夜悪夢で目覚めます。やがて現れる双子の姉の幻影。鏡子の記憶は少女時代へと飛びます。姉妹の面倒を見ていた男・曳田(渡部篤郎)が姉を寵愛していると思い込んだ鏡子は、ある時姉を奇術用の箱の中に閉じ込めてしまいます。さらに見咎めた曳田の目を錐で刺し、そのはずみでストーブが倒れて火事に。しかし鏡子は一人逃亡し、姉は焼け死んでしまうのです。そしてある日、大人となった鏡子は、不思議な運命によって、再び姉の亡くなった家を訪れることになるわけです。
 非常に凝った世界観を構築。しんしんと降る雪、その静かな雰囲気と柔らかな質感が秀逸です。鏡子と鏡子をひそかに想う編集者・吉井(渡部篤郎・二役)との繊細なやり取りが静かに心に染み入ります。が、だからこそ、己の犯罪を忘れ、あるいは正当化する鏡子の心の闇が恐ろしいものに思えてきます。ただ、ロマンチシズムを湛えた秀作ですが、物語的にはインパクトはやや低め。心理ホラー的な装いと呼べると思います。
 第三話「CUT」は韓国のパク・チャヌク監督作品。若手映画監督、リュ・ジホ(イ・ビョンホン)は自宅に帰ると妻共々、富と名声に妬んだエキストラの男に拘束。妻を助けたければ子供を殺すよう強要されます。どうしても殺せないリュでしたが、その代わり妻の指が一本、また一本と切断されてゆくのです。やがて明らかとなる妻の不倫。そして子供を早く殺せと叫ぶ残虐性。さらにリュ自身の中にも、おぞましい願望が膨らんでいく、というわけです。
 この作品は、コメディと残酷さを同居させた新感覚ホラー。犯人のあまりにも身勝手で理不尽な要求。が、リュは、この事件で、みずからの真の願望に気付きます。人間の心の奥底に潜む、その残酷さこそが、本編のテーマであるかもしれません。さらに、冒頭にクローズアップされるバンパイア映画と、その後に起こる事件とを引っ掛けているのがミソで、これがとんでもないオチへとつながっているのが分ります。緻密さ、奇抜さ、インパクト、共に強烈な印象を残した作品となりました。タイトル「CUT」とは、指の切断から転じ、妻との関係を断ち切る、という暗示が込められているようです。
 つまるところ、すべてが「ブラック・ホラー」のつくりとなっているわけですが、3本見終わると結構な疲労感です。それだけ充実した作品群と言えるわけですが、決してポピュラリティは高くないだろうと思います。この点ではマニアックさは否めないかもしれません。また、ホラーとしての怖さが希薄であることも気になるところです。どのような期待と視点で見るか、が、この映画の満足度を大きく左右しそうです。

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