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病院坂の首縊りの家(1979年/日本/139分)
cinema review ![]() STORY
昭和26年、吉野。金田一耕助は渡米すべくパスポート写真を撮りに本條写真館を訪れる。すると、写真館の主・徳兵衛から、自分を狙っている者がいるから調べて欲しいと頼まれる。その夜、写真館に出張撮影を頼みに女性が尋ねてくる。徳兵衛の息子・直吉が指示通り廃墟同然の法眼病院へ。そこで花婿と花嫁だけの不思議な結婚記念写真を撮らされる。二人の前にはなぜか風鈴が吊り下げられていた。が、翌夜、再度撮影依頼が入り、金田一と弟子の黙太郎と共に赴くと、そこには花婿の生首が吊り下げられていた。
ほどなくして現場から逃げる吉沢という男が捕らえられる。さらに現場には呼ばれた建物の持ち主・法眼弥生と一族の田辺光枝・五十嵐滋親子。被害者を知る者はいなかったが、結婚写真の花嫁は弥生の娘・由香利にそっくり。しかし弥生は由香利ではないと証言。間もなくその由香里も現場に訪れる。 一方、吉沢の口から、被害者が同じジャズバンドの山内敏男であることが分る。敏男は腹違いの妹・小雪と結婚しようとしていたらしい。吉沢は仕事を休んだ敏男を探していだけだという。そして敏男と小雪が住処にしている空きガレージ行ってみると大量の血痕が。しかし小雪は見つからず、行方不明であった。 担当の等々力警部が小雪を追う一方、金田一は五年前、同じ場所で起きた首吊り自殺を調べ始める。首を吊ったのは山内冬子。冬子は小雪の実母、山内敏男にとっての養母であることを突き止める。そんな中、小雪から警察へ手紙が届く。殺人を自白し、自殺するとの内容だった。筆跡はバンドのメンバーが確認し事件解決かと思われた。が、金田一は偽造ではと疑う。そして金田一の推理通り、手紙には指紋がまったく付いていなかった ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
横溝正史原作の本格ミステリー。市川崑×石坂金田一の五作目に当たります。原作では、本件は金田一耕助最後の事件であり、解決まで何と20年を要したいわく付きの事件でもあります。もう事件に関わりたくないと思いつつまた事件に関わってしまう、そんな探偵の運命論が作中では語られます。本作でも引退を決めた金田一耕助が、再び病院坂の事件に、しかもあまりに深く関わり、そして事件後、アメリカへと去っていく物語が描かれます。金田一さんは犯人に同情的なんですね、と黙太郎に言われてしまう金田一。最後はみずから証拠品を隠滅するほどに金田一が感情移入を極めた事件でもあります。
物語の舞台は吉野、病院坂。空き家となった法眼病院で首だけが吊られた常態で発見されます。被害者は山内敏男(あおい輝彦)。腹違いの妹・小雪(桜田淳子)と結婚しようとしていたと言います。が、その小雪も行方不明。一方、法眼病院の理事長・弥生(佐久間良子)には小雪そっくりの娘・由香里(桜田淳子 = 二役)が。やがて小雪から遺書代わりの犯行声明が届くも偽造と判明。さらに、なぜか写真館主の本條徳兵衛(小沢栄太郎)が惨殺死体となって発見。混沌とする中、金田一は、解決の鍵が5年前の病院坂での首吊り自殺事件にあると推理。押しかけ探偵助手の黙太郎(草刈正雄)と共に事件を追うというわけです。 事件は風鈴と歌集が解決のきっかけとなりますが、さほど存在感はなく、後半では、法眼家をめぐるどろどろの人間関係が明らかとなり、むしろ情緒的な味わいとなっています。また、本作のシチュエーションの不自然さは有名で、これは小雪と由香里という双子でもないのに瓜二つという設定に起因しています。一緒に住んでいた人間が誰も気付かず、赤の他人(バンドのメンバー)が最初に気付くのもいかにもつくりものらしい設定。もともと双子そのもののシチュエーションが横溝ミステリーには多く、最初から推理を混乱させるには安易として嫌われる手法と言われます。いずれにしても双子ですらない本作ですから、本格ミステリーとしての魅力がさらに薄らいだことは確かです。 その分登場人物はさほど多くもなくシンプル。と思いきや、スクリーンに登場しない人物との関係がぐちゃぐちゃ。五十嵐剛蔵に猛蔵に泰蔵、法眼朝子に千鶴に弥生に由香里、さらに田辺家。法眼弥生と田辺光枝・五十嵐滋親子との関係など、何度見ても今ひとつピンときません。作中でも黙太郎が金田一に説明し、金田一がよく分らない、と言うシーンがあるほど。等々力警部が、光枝と滋の関係を聞いて首をひねるシーンもあります。この複雑に過ぎる人間関係と説明不足はこのシリーズ最大の欠点であり、本作でも払拭されませんでした。 登場人物としては黙太郎の存在がアクセントとして秀逸で、実はプロット上の必然性は希薄。しかしシリアスな物語の緩衝材としての効果は抜群で、絶妙のユーモアを醸し出しています。一方、二役の桜田淳子は熱演ですがやや大仰。舞台なら名演かもしれませんが映画では現実味が希薄です。もっとも、登場人物のキャラクターにこだわる市川監督ですから、狙いであったのかもしれません。等々力警部(加藤武)もおなじみ。ここでは奈良県警の警部。金田一を見て、"どこかで会ったような" といったシリーズ・ファン限定のせりふまで吐いています。 本作では、このシリーズではじめて、金田一耕助がみずから生い立ちを語る珍しいシーンがあります。北国で生まれ貧しい家庭、両親とは幼くして別れ、と、これが金田一が、同じような身の上の犯人に同情する理由となっています。この点、シリーズ・ラストを飾るにふさわしい金田一への焦点の当て方。ところが、その金田一の姿で物語が終わっていないのがまた市川流、ということになるのでしょうか。 生首や地しぶきなど、残虐表現も健在。何より高い娯楽性に情緒的なストーリー。展開の妙もあって二時間半の長丁場を一気に乗り切っています。ややこなれた感と推理モノとしての色合いを薄めたのは残念ですが、情緒的・心理的な面をクローズアップさせる手法はまさに日本のミステリー映画そのもの。このシリーズをもって、ジャパニーズ・ミステリーともいえるジャンルが確立されたと言っても過言ではないように思います。 市川×石坂コンビは本作をもって一応一区切り。「八墓村」三度目の映画化(1996)では、豊川悦司が石坂浩二を踏襲した金田一耕助を見せてくれています。さらにテレビでも金田一モノが事切れることはありません。が、やはり代表格は本作を含めたこの時期の市川作品。この強烈な個性を超えるのは至難の技でしょう。 |
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