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花とアリス

(2003/日本/135分)

[監督]岩井俊二
[脚本]岩井俊二
[撮影]篠田昇 / 角田真一
[音楽]岩井俊二
[出演]鈴木杏、蒼井優、郭智博、相田翔子、阿部寛、平泉成、木村多江、大沢たかお、広末涼子

[内容]

 ハナとアリスは同じバレエ教室に通う親友同士。高校に進学したハナは、片想いの彼・雅志のいる落研に入る。ある日、雅志が頭をぶつけて気絶したのをいいことに、記憶喪失と信じ込ませ、自分は恋人だとうそをつく。さらに成り行きから親友アリスを別れた彼女に仕立てるが、雅志はアリスを本当に好きになってしまい ・・・。小さな恋を通して、二人の少女の友情と成長を描いた青春コメディ。あまりに瑞々しく、繊細さと透明感に満ちたおとぎ話。やわらかであたたかな感動に心ゆくまで浸りたい一本。
[評価]★★★★☆

cinema review

STORY

 ハナ(荒井花)とアリス(有栖川徹子)は同じ中学とバレエ教室に通う親友同士。ある日、ハナは同じ電車で通う、いつも文庫本を手にした高校生を好きになります。ほどなく、同じ高校に進学したハナとアリス。ハナは片想いの先輩がいる落研へ。そこはたった二人だけの部で、かれが宮本雅志という名前であることを知ります。
 ある放課後、ハナが密かに雅志のあとを尾けていると、雅志は文庫本に夢中でシャッターに激突。失神してしまいます。思わず駆け寄り様子をうかがうハナ。これをいいことに自分を恋人だと言い張り、雅志を記憶喪失にしてしまいます。雅志はそんな覚えがないと訝しく思いつつも、自分を記憶喪失だと信じ込んでいきます。
 一方、アリスは買い物中に三流芸能プロダクションからスカウトされ、様々なオーディションに出かけるようになります。が、自分をうまく出せず合格することができません。そんな中、デートを重ねていたハナは雅志を家に呼びます。が、以前雅志を隠し撮りした写真を見られ窮地に。とっさに、雅志の前の彼女がストーカーとなって送りつけてきたとうそを言ってしまいます。そしてアリスに元カノを演じてもらうことに。
 その頃、雅志は、自分はハナを好きなのだと段々と思い込むようになっていきます。しかし、雅志は記憶を取り戻そうと、たびたびアリスに会って昔の事を聞きに行くようになると、今度はアリスを好きになっている自分に気付きます。ハナの恋心とアリスの演技もむなしく、雅志はアリスに告白。そんな雅志の想いに気付いていくハナだったのですが ・・・。

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COMMENT

 岩井俊二のコミカルな青春ドラマ。冒頭出てくる駅の名前が、水木、石ノ森、藤子、と往年の名漫画家の名前。次の駅や前の駅の名前はその作品名やキャラクター名をもじったもの。さらには通う学校も手塚高校。はたまたドラッグストアのマツモトキヨシがマツモトヒトシだったりして、随所にしゃれっ気がたっぷり。あまりやりすぎるとマニアックになってしまうのですが、本作は、特に内容を損なうものになっていないところが好感を持てます。
 内容は親友同士の少女ハナ(鈴木杏)とアリス(蒼井優)の物語。片想いの先輩・雅志(郭智博)に記憶喪失と思い込ませ、自分を恋人とうそをついたことから起こる騒動をコミカルに描いています。物語の途中、アリスはスカウトに声をかけられ芸能界へ挑戦することになります。しかしオーディションでは自分をうまく表現できずいつも不合格。一方ではハナに頼まれて雅志の元カノを演じ、楽しんでいる姿が何とも皮肉に映ります。
 やがてアリスを好きになってしまう雅志。ハナを "生理的に好きになるタイプじゃない" と静々とつぶやくのが、おかしさと切なさが入り混じって何とも複雑。雅志の本心とハナの恋心に挟まれ、 "ハナ、ピンチじゃん" と明るく話すアリスが、その人物を象徴しています。が、当のハナは、そんな雅志の気持ちを知りつつも決して受け入れようとはしません。親友アリスを犠牲にしながらも、恋の成就に邁進します。
 終盤、やがてアリスも雅志を好きになっていることに気付きます。が、これ以上付き合ってはいけない、という彼女の想い。相手に分からないよう、中国語でアイラブユーと言って明るく別れる姿。そこに隠された想いが涙を誘います。一方、ハナは、ある時、同じバレエ教室に通う友人から、花やしきと少女の物語を聞かされます。花やしきとは一年中色とりどりの花に囲まれたハナの家。話に出てきた気味悪がられていた少女は引きこもっていた自分。ハナは、自分をバレエ教室に誘ったのがアリスであることを思い出し、自分を変えたアリスの想い、相手を幸せにしたいという心を悟ると、ついに現実の世界へと歩み出すことを決意するのです。
 アリスも変わります。オーディションでみずから進んでバレエを演じ、自分を思い切り表現するアリス。アリスもまた、ハナのため、母のためという枠を越え、みずからの幸せのため、現実の世界へ飛び出すことに成功するのです。その姿を刹那的な美にまで昇華させたこのシーンは見事としかいいようがありません。こういうシーンでは、長時間見せられて閉口するとも多いのですが、この数分にわたるバレエのシーンは、興味のあるなしに関係なく、純粋に映画のワンシーンとして見入ることができます。まったく違和感はなく、それどころか最初から最後の一秒にいたるまで感動に浸っている自分に気づくのです。そして、ハナとアリスのおとぎ話は、現実の世界のハナとアリスのお話しとなって幕を閉じます。
 本作のような瑞々しいキャラクター、透明感あふれる映像、純粋で繊細な心情表現は、いずれも岩井俊二監督のトレードマークと言っていいのではないでしょうか。本作に限らず、特に感覚的な分かりやすさは図抜けているように思います。この点、岩井作品はどこまでもリリカル。切なさの中にある明るさも、何とも心地良く心に沁みこんでくるのではないでしょうか。一方、今回はやや演出上で盛り上げたという感もあります。が、まあ、これほどの作品ですから、得た感動に比べれば気にするほどのことはないのかもしれません。実は、続けて三回見てしまった本作。こうして思い出しているだけでももう一度見たくなってしまいます。

(アミューズソフトエンタテインメント)
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岩井俊二関連作
(Love Letter、スワロウテイル)
鈴木杏関連作
(リターナー、
がんばっていきまっしょい(TV))
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(ニライカナイからの手紙、
星になった少年)


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 本作は岩井俊二監督の青春映画。この前には、松たか子を主演に迎えて、同様の青春映画を撮っています。「四月物語」は、上京した手の女子大生の恋を描いた中篇。瑞々しさと透明感が、見事に見る者の心を和らいでいきます。
「Love Letter」(1995/日本)
「四月物語」(1998年/日本)

www.sasaraan.net

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