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カオス

(2000年/日本/104分)

[監督]中田秀夫
[原作]歌野晶午
[脚本]斎藤久志
[撮影]喜久村徳章
[音楽]川井憲次
[出演]萩原聖人、光石研、菜木のり子、夏生ゆうな、國村隼、中谷美紀

[内容]

 商事会社社長・小宮山孝幸の妻・佐緒里が誘拐される。実は佐緒里が便利屋・黒田五郎に依頼して起こした狂言誘拐だ。そして五郎は警察の裏をかき、孝幸の姉・栗原小枝子からまんまと金を奪う。が、潜伏場所に帰ると佐緒里は死体となっていた ・・・。狂言誘拐をめぐる犯罪サスペンス。意外性十分のミステリーで、二重三重のどんでん返しが見事。が、制作者本位のわかりにくいつくりには閉口。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 商事会社社長・小宮山孝幸は妻・佐緒里と昼食にでかける。が、別れた後、会社へ戻った孝に、佐緒里を誘拐したとの脅迫電話がかかってくる。身代金は3000万。翌日、孝幸は刑事たちとともに誘拐犯からの電話を自宅で待つ。しかし誘拐犯は会社に電話。伝言ダイヤルのナンバーを言い残す。かけてみると、今すぐタクシーで身代金を羽生パーキングエリアまで持って来るようにとの指示だ。が、指定された時間になっても犯人は来なかった。
 その頃、孝幸の姉・栗原小枝子の家に誘拐犯から電話がかかっていた。今すぐ有り金を持って阿佐ヶ谷駅まで来いとの脅迫だ。驚いた小枝子だが、家にあった500万を持って駅に向かう。そしてホームで待っていたところ、不意に犯人が後ろからかばんをさらっていく。
 前日の昼過ぎ、しがない便利屋・黒田五郎の家に小宮山佐緒里がやって来る。五郎は、以前水道の修理が元で佐緒里と知り合い、狂言誘拐の相談を受けていた。浮気をしている夫の気持ちを確かめたいという。佐緒里は監禁場所まで用意していた。旅行中の友人・相馬ルミのアパートで、留守中熱帯魚の世話を頼まれているというのだ。五郎は佐緒里とともにルミの部屋に向かい、夫・孝幸に脅迫電話をかけ始める。
 栗原小枝子からまんまと金を奪った五郎は、夜になって佐緒里の待つアパートへ向かう。が、部屋で待っていたのは死体となった佐緒里だった。一体何が起こったのか? その時電話が鳴る。佐緒里を殺したと言う男は、警察に通報されたくなければ死体を処分しろと脅迫するのだった ・・・。

・・・

COMMENT

 歌野晶午のミステリー「さらわれたい女」の映画化。死体を埋めたり掘り返したり、と、これはヒッチコックの「ハリーの災難」。何と言っても、死んだはずの女性を目撃する展開は「めまい」に類似。実は同一人物というからくりも、美女に翻弄される探偵(ここでは便利屋)という図式も似通っています。偶然なのかヒッチコックへのオマージュなのか。現代の都会を舞台にしたサスペンスながら、どことなくサイコ・スリラー風のイメージを醸成しているのも同様で、その他に、いくつかの不備を指摘されることとなりました。歌野晶午のストーリーのおもしろさ、中田秀夫の雰囲気作りの見事さにもかかわらず、評価を分けた一本と言えそうです。
 物語はある社長夫人の誘拐事件から始まります。が、実は狂言誘拐。社長・小宮山孝幸(光石研)の妻・佐緒里(中谷美紀)はうらぶれた便利屋・黒田五郎(萩原聖人)に協力を依頼。五郎は100万の報酬でこの危険な賭けに乗ることになります。そして五郎は佐緒里の計画に反して、独断で孝幸の姉から身代金を奪取。が、潜伏先のアパートに帰ると佐緒里は死んでいたのです。
 実は五郎が姉に脅迫をかけるくだりはリスクが高い上に意味のある行動ではありません。姉が弟の妻の誘拐を知っているなら余計に通報するのが当然。第一この方法で身代金略取が成功するなら,弟の事件に便乗する必要はまったくないと言えるのです。しかし本作で最も分りにくいのが、時間を前後させる構成。つくる方は分ってつくるので何でもないのですが、それが伝わるかどうかは別問題。五郎と佐緒里の出会うシーンがいつにあたるなどは、ちょっと考え込んでしまいます。
 しかし展開のおもしろさは見事。二重三重の罠が張られていたことに後半になって気付きます。何者かの強迫によって死体を森に埋めた五郎。が、ある時、佐緒里そっくりの女性を見かけます。おそるおそる死体を掘り返してみると何と別人。調べてみると潜伏先の部屋の主は津島さとみ。佐緒里だと思っていた女性は実はさとみで、死体が本物の佐緒里だと悟るわけです。一方、企てが成功して抱き合う二人の姿、孝幸とさとみ。が、やがて、五郎は、ついにさとみに行き着くことに成功します。
 ただラストはひどく感覚的。五郎とさとみの逃避行の不思議な結末を描いて幕は閉じられます。カオス(混沌)、とは、不確定要素に満ちた犯罪の背景であり、後先を失った五郎の奇妙な体験であると言えます。そして、それを象徴するものは、二人の男を理不尽に翻弄しつくして消えていったさとみの精神であると見れるのではないでしょうか。個人的には、分りにくいタイトルは好きではありませんが、タイトルの持つ感覚的な面が、本作の内容を反映しているとも考えられます。いずれにしてもおもしろさ十分の展開ではあります。できればストレートな構成で見たかったと思うのは筆者だけでしょうか。

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ホラー映画のイメージが強い中田秀夫監督ですが、「ガラスの脳」や「ラストシーン」といった感動のドラマも手がけています。いずれも作りはほぼオーソソックス。ストーリーはともかく、本作のつくりは監督作の中でも最も異色と言えるかもしれません。

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