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元禄忠臣蔵(前編:1941年/112分) (後編:1942年/111分)
cinema review ![]() STORY
元禄十四年三月十四日。江戸城松の廊下。吉良上野介が赤穂藩主浅野内匠頭長矩を面前で愚弄。内匠頭は小さ刀に手をかけ上野介に斬りかかる。しかし浅手を負わせただけで他将に止められてしまう。内匠頭はそのまま田村右京太夫屋敷にお預け。すぐさま詮議が行われる。目付・多門伝八郎は神妙に仕置きに従おうとする内匠頭に同情するが、一方で内匠頭は上野介を打ち果たせなかった無念を隠さなかった。
処分は間もなく言い渡され内匠頭は所領没収の上切腹。しかし上野介にはお構いなし。伝八郎は激しく抗議するが処断は側用人柳沢出羽守の独断でなされ、最早どうしようもなかった。小姓・片岡源五右衛門が辛うじて最後に面会した後、内匠頭は切腹して果てる。 内匠頭切腹の知らせは、足軽頭・原惣右ヱ門によって赤穂藩にもたらされる。城代家老・大石内蔵助以下集まった家臣たちは内匠頭辞世の句が伝えられむせび泣く。その後城明け渡しの日が迫る中、家中はお家再興、籠城や殉死、上野介討入など意見がまとまらず、内蔵助は自分に一任する旨の誓紙血判をもって収拾を図る。しかしその最後の評定の時、三百人いた家臣のうち、残っていたのは五十二人にすぎなかった。 半年後、内蔵助の姿は京・山科にあった。しかし吉良邸討入のつもりでいた藩士たちの意に反して内蔵助は遊蕩三昧。そのうわさは江戸にまで達していた。そんな中、内蔵助の元にある届く。内匠頭弟・大学をもって願い出ていた浅野家再興が潰えたのだ。それを聞いた内蔵助は態度を豹変させる。みずから願い出たお家再興の望みがあるうちは吉良邸討入はできないと内蔵助は思い悩んでいたのだ。そして吉良上野介を討つべく、ついに江戸への下向を決意する ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
溝口健二版「忠臣蔵」。映画は前編・後編に分けてつくられ、公開に至っています。太平洋戦争開戦前後の時期のせいか、フィルムの状態はまだいいようですが、音声の状態は悪く、言葉遣いも古い言い回しが多くなっています。今となってはやや見づらさは残ります。
物語はいきなり「刃傷松の廊下」のクライマックスから始まります。江戸城中、播州赤穂藩藩主・浅野内匠頭(たくみのかみ / 嵐芳三郎)が遺恨により吉良上野介(三桝万豊)に斬りかかり、ほどなく切腹の処分を受けた実際にあった事件。ところが、喧嘩両成敗が武家の法であったにもかかわらず、吉良上野介はにはおかまいなしとの断が下るのです。これには、京都からの勅旨の饗応役に任ぜられた内匠頭ですが、指南役の高家・吉良上野介へ賄賂を送らなかったために疎まれ、様々な嫌がらせを受けたという背景があります。しかし物語ではこのあたりの事情の説明はありません。当時誰もが知っている忠臣蔵だからこそ、あえて省いたということでしょう。そのため、普遍性という点での見劣りは免れないだろうと思います。 その後物語は大石内蔵助に焦点を当て、じっくりと描いていきます。これまた群像劇たる忠臣蔵とは一線を画すつくりと言えるでしょうか。赤穂藩城代家老・大石内蔵助(河原崎長十郎)は残った家臣をまとめ上げ、やがてなき主君の無念を晴らそうと吉良邸に討ち入り、見事成就。上野介の首を墓前に供えることになるわけです。 最も注目すべきは、最大の見せ場である、この吉良邸討入のシーンがまったくないこと。そこに至る浪士たちの感動的なドラマもまったくないという点にあります。この点、つくりもの的な展開を排除したと見れるでしょうか。決して、他でよく言われるようにリアリズムを追求したとも見れないのですが、その代わりにワンシーンワンシーンが実に丁寧につくられ、そこに登場する人物の実像を浮き彫りにしています。忠臣蔵としては異色のつくりで、娯楽的にはやや不満は残りますが、映画としての表現力は見事に伝わってきます。 物語はその後の赤穂浪士(ここでは四十六士。他説では四十七士、四十八士とも)も丹念に描いていきます。これほど時間をかけるのも珍しいことで、通常は、赤穂浪士たちが切腹する悲劇はさほど時間をかけません。幕府側も同様で、通常描かれる五代将軍徳川綱吉と側用人柳沢出羽守は登場せず、代わりに徳川綱豊(のちの六代将軍 / 市川右太衛門)に重要な役どころを与えています。なるべくこれまでの忠臣蔵とは別の面を見せようとした節が多々うかがえるようです。これは、すでに見る人が「忠臣蔵」の物語を知っているのが前提で作られたと見れるでしょうか。その意味では上級者向けの忠臣蔵と言えるのではと思います。 ちなみに本作では、様式美に満ちたセットやよく考証された小道具も貴重と言われます。しかしおもしろいのは、決してそれらが安易にクローズアップされていない点で、どこまでも人間ドラマとしての統一性が考えられているように感じます。これもまた名匠溝口監督の流儀なのかもしれません。 |
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真山青果
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