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怪談(1965年/日本/187分)
cinema review ![]() STORY
【黒髪】 京都。主家が没落したために出世の道を断たれ、貧しい生活を送る武士がいた。ある時、武士は遠国に向かう国守に仕官する。夫を支えてきたやさしい妻はすがって引き止めようとするが武士は聞かず、それどころか、立身出世のために家柄の娘を娶ってしまう。しかし二番目の妻は冷たくわがままだった。武士はようやく前の妻を愛していたことを悟る。やがて任期を終え、京へ戻った武士。何年ぶりかで前の妻の許へと帰ると、そこには以前と変わらぬ妻が待っていた ・・・。
【雪女】 武蔵の国。木こりの老人・茂作とその奉公人で十八才の巳の吉は毎日森へと出かけていた。しかしある日の帰りは大吹雪であった。やっとのことで川の渡し場へつくも渡し守はすでに向こう岸へ帰ってしまっていた。仕方なく二人は渡し守の小屋へ入るが、しばらくすると白装束の若い女が現れる。女は茂作に覆いかぶさると白い息を吐きつけ、血の気を吸い取って殺してしまう。そして女は、巳の吉に、見逃すかわり、今夜見たことを話したら殺す、と言って去っていく ・・・。 【耳無し芳一の話】 源平合戦が繰り広げられた壇ノ浦。平家は滅亡し、敗れた平氏の女たちは次々と海に身を投げる。以来、ここは怨霊にたたられ続けているという。その近く、赤間が原に供養のため阿弥陀寺が建立されてからも怪しい出来事が止むことはなかった。盲目ながらも琵琶の名人・芳一はその寺の住人であった。ある夜、芳一を武士が訪ねてくる。近くに逗留している貴人が琵琶を聞かせてほしいからと迎えに来たという。しかしそれは毎夜に及び、徐々に芳一は死人のように衰えていった。心配した住職が何があったのか訊ねるが、芳一は武士から堅く口止めされていて話さない。が、ある嵐の夜、小間使いの弥作と松蔵があとをつけてみると、そこは墓場だった。芳一は、平家と共に幼くして入水した安徳天皇の墓前で、一心不乱に琵琶を弾いていた ・・・。 【茶碗の中】 明治32年。ある老人が不思議な物語を執筆していた。その話は220年前にさかのぼる。主君の中川佐渡守について本郷の菩提寺に出向いていた関内。水を飲もうと茶碗に水を汲むと、そこに男の顔が浮かび上がる。何度も水を汲み直すが男は現れ、ついに関内は構わず水を飲み干してしまう。が、ほどなくしたある夜、主君の邸を警護していた関内の前にその男が姿を現す。式部平内と名乗り、先日の振舞いが理不尽だと責める。関内は逆に斬りつけるが、平内は壁の中に消えてしまう ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
小泉八雲の「怪談」の映画化。「怪談」は日本に昔から伝わる不思議な話を著したもの。その中から四本を選んで製作した短編集となっています。原作者小泉八雲はもとアイルランド人(当時はイギリス)、ラフカディオ・ハーン。明治時代後期に日本に帰化し、本書を書き上げました。ただし、映画の方はややゆったりした流れで飽きが出るきらいはあります。が、他方、じっくりとした人間描写、古風なセットの再現、シンメトリーを巧みに織り交ぜた美しい構図など、当時の日本映画ならではの長所が顕著で、このような物語以外の要素にも注目したいところです。
「黒髪」は、出世のために優しい妻を捨てた武士(三國連太郎)の話。怪異談「雨月物語」にも似た話がありますが、こちらはより恐怖を増幅させた話。妻への愛に気付いた武士はやがて妻(新珠三千代)の許へと帰ります。そこには以前と変わらぬ妻が。が、それはすでに亡くなった妻の怨霊だったのです。黒髪がうごめくシーンはまさに鳥肌モノ。男と女の愛憎劇を恐怖で彩った作品と言えるでしょうか。 「雪女」は多くの作品でモチーフとして描かれています。黒澤明監督も短編集「夢」の中で同様の話を製作しました。吹雪の中、小屋に避難した二人のうち老人が雪女(岸恵子)に殺され、もうひとり・巳の吉(仲代達矢)は若さを惜しまれて助かります。が、このことを話せば殺すと念を押されるのです。 そして数年。身の吉はお雪という美しい女性と出会い、やがて妻に迎えることに。子にも恵まれ、平凡ながらも幸福な日々。が、周りの人々は不思議がります。お雪は子を三人も産んだというのにまったく美しさは衰えず、若いままでした。そんなある日、巳の吉は、ふとしたことから忘れていた雪女のことを思い出します。そして、思い出話の感覚で、ついお雪にしゃべってしまうのです。こちらは「黒髪」とは逆に愛の物語でもあります。愛し合ってしまった巳の吉と雪女。ちょっと切ない物語ではあります。 「耳無し芳一」は本作のメイン・イベントとも言える力作。冒頭は最後の源平合戦、壇ノ浦の戦いを鮮やかに再現しています。終始背景に流れるのはまさに狂ったように躍動する琵琶の音。戦い敗れた平家の女たちは幼い天皇を抱いて海に身を投じてゆく一大悲劇。この壮麗な歴史絵巻をせりふを使わずに見事に再現しています。 その後始まる物語の舞台はその壇ノ浦の近くの寺。盲目の若い琵琶法師・芳一(中村賀津雄)は、夜毎現れる武士に誘われ、琵琶を弾じに出かけます。貴人が相手だと思い込んでいた芳一でしたが、そこは墓場で、聞き入っていたのは平家の怨霊たちでした。住職(志村喬)は芳一を助けようと全身に般若心境を写し、念をかけます。そこにやって来た迎えの武士。が、怨霊たる武士には芳一の姿が見えないのでした。 途中、芳一が琵琶一本で演じる平家物語は鬼気迫る迫力。琵琶が激しい楽器であることを見る者は思い知らされます。怖い、というイメージからは離れますが、日本の昔話の真髄を体験することができたように思います。 「茶碗の中」は二つの物語からなります。明治時代、「茶碗の中」を書いているある作家(滝沢修)の物語。ところが執筆中のこの話、結末がありません。なぜ結末がないのか? そこで物語は、作家の書いた「茶碗の中」の世界へと跳ぶのです。そこは江戸時代。ある時、関内(中村翫右衛門 かんえもん)という武士が、茶碗の中の水に男が映り込んでいるのを発見します。水を汲み替えても、茶碗を取り替えても男は現れ、不敵な笑みを寄越してきます。後日となり、その男(仲谷昇)は、今度は関内の目の前に現れます。斬って捨てようとした関内。手ごたえはあったものの男は壁の中に消えてしまうのです。さらにその後、男の家臣だという三人が関内を尋ねてきます。それは主人が関内に復讐をすることを告げる使者でした。 やや不条理モノの要素が強いでしょうか。怪異談の前後の説明がまったくなく、しかしそれが、この話の異常性を高めています。物語は終盤で明治時代に戻ります。作家がたどった奇異な運命が語られることになるわけですが、これもまた唐突で、不条理な展開と呼べるでしょう。 本作は全体的に緩やかなテンポで、そのことが現代の視聴者にどこまで影響するかは気になるところです。ましてや三時間に及ぶ長大な作品。物語だけを追い、またはホラーにのみ期待する観方はかなり辛いものがあります。いずれにせよ、怖さを強調したホラーというよりは、怪談文学に触れる格好の作品という位置づけの方が合っているのではないでしょうか。 |
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かつては夏の風物詩だった怪談映画ですが、題材は古典モノが多く採用されていました。現代では「怪談 新耳袋」が新たな定番となりつつあります。内容は全国から集めた怪奇話をまとめたもの。怖いだけじゃなくコミカルな作品もあったりして実に多彩。が、日本映画が描く幽霊の姿の原点はやはり古典。これも日本独特の文化と呼べるでしょうか。
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