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回路(2001年/日本/118分)
cinema review ![]() STORY
あるサニー・プラント販売の会社。社員の田口が何日も無断欠勤をしていた。仕方なくミチが仕事に必要なフロッピーを取りに家まで行くと意外にも元気そう。が、ミチがフロッピーを探している間、田口は隣の部屋で自殺してしまう。
その頃、大学生の川島のパソコンには、インターネットに接続した覚えがないのに、スクリーンに見知らぬ部屋が映っていた。そこに浮かび上がる不気味な顔。怖くなって電源を切る川島だったが、翌日気になって大学のパソコン室を訪れ、コンピュータに詳しい春江に相談する。 田口の同僚・矢部はある時、「助けて」と言うだけの奇妙な電話を受ける。さらに田口のフロッピーには、部屋の中に同じ部屋が映り込んでいる不思議な映像が入っていた。不審に思った矢部は田口の部屋に調べに行くと、「あかずの間の作り方」という文書を発見。それらしき部屋を探し入ってみる矢部だが、そこには黒いもやのような女性がいた。 元気のない矢部に気付いたミチと同僚の順子。問い詰めるが何も話そうとしない。ただ、赤いテープで目張りされたあかずの部屋には絶対に入るなと諭される。あかずの間に一体何があるのか。 一方、川島は図書館でもやのような黒い女性を見つける。確かめようと近付くが消えてしまう。春江の大学院生の先輩・磯崎によると、霊魂が入るエリアが許容範囲を超え、現実の世界に溢れているのだと言う。そして霊魂は、人間たちを生きたまま孤独の中に閉じ込めているのだとも説明する。信じない川島だったが、ほどなく、生きる気力を失った春江を発見する。 その頃、順子はあかずの間に入ってしまう。ミチが気付いて順子を救い出すが、以来、死人のようになってしまう。何とか看病を続けるミチだったが、ある時突然、順子は黒い影となって消えてしまう ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
一味違ったカルト的なホラーで話題となることが多い黒沢清作品。本作品も大変毛色の変わったホラーといえるでしょう。常識的な恐怖に捉われず、そこに一歩踏み込んで哲学的とも取れる要素を盛り込んでいった作品と呼べるでしょうか。あるいは特定のジャンルや思惟にこだわらずにつくっていったらこうなった、ということかもしれません。
物語は工藤ミチ(麻生久美子)と川崎亮介(加藤晴彦)という二人の視点から構成されています。周りの人間たちが次々と原因不明の自殺をして戸惑う二人。その現場には人の形をした黒い跡が残っています。その黒い跡は何なのか。いきなり衝撃的な謎を提示して物語は進行していきます。彼らが死に至る過程を最もよく伝えたのが小雪演じる春江です。つまりは、恐怖、孤独、不安、といった人間なら誰もが持つ心理状態。小雪は、どうしようもない、誰にも制することができないほどの負の心理状態を見事に演じ切っています。この耐え難い苦しみを死という形にみずから変えた、ということなのでしょう。 怪奇現象を説明するシーンもあります。霊魂が入る場所が臨界点に達し、いつ溢れてもいい状態となったのが発端。そんな時、ある男が廃アパートの一室のドアを赤いテープで目張りします。それはとてもばかばかしいこと、と作中でも言うように、部屋自体が霊魂を受け入れる装置となり、数日後、そこに本当に霊魂が現れたのです。 が、ほどなくして取り壊される建物。それはコンセントの中に入り、ついに公の場へ溢れることとなります。霊魂、と言う精神世界の対極に、回路という文明の象徴的な道具を置いたのがおもしろいところで、不条理な展開にもかかわらず、より身近な恐怖を醸成することに成功しています。 また、物語中には、あふれた霊魂たちはこれ以上あふれないために人間を殺さず孤独の中に閉じ込める、というくだりもあります。絶対的な孤独が存在するとしたら、人間は生きられるだろうか? それともみずから死を選ぶだろうか? コミュニケーションという現代的な問題を浮き彫りにしているとも捉えることができます。この終盤では、大型輸送機が墜落していくというもっとも有名なシーン。文明が破滅へ向かっていく救いの薄い様を伝えて物語は幕を閉じています。 とは、書いてはみたものの、やはり、ひどく観念的な作品であることに違いはありません。脈絡という点で考えていくと、どこまでついて行けるものか。論理的に処理していくとたちまち混乱してしまいます。が、一方では、感覚的に捉えていけばそれなりに恐怖感を味わいながら見れてしまう映画。賛否両論の映画ではありますが、いずれにしても一見の価値は十分のような気はします。 |
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