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君よ憤怒の河を渉れ

(1976年/日本/152分)

[監督]佐藤純彌
[原作]西村寿行
[脚本]田坂啓、佐藤純彌
[撮影]小林節雄
[音楽]青山八郎
[出演]高倉健、中野良子、原田芳雄、倍賞美津子、池部良、田中邦衛、伊佐山ひろ子、大滝秀治、西村晃、岡田英次、内藤武敏、大和田伸也、下川辰平

[内容]

 検事・杜丘は、ある日突然強盗強姦の容疑者として逮捕される。さらに翌日にも杜丘が泥棒だと訴える男が現れる。自宅からは盗難品が発見。これが罠だと悟った杜丘は隙を見て逃走。そして自分を訴えた二人が、ともに偽名で、しかも夫婦だったことを突き止める ・・・。抜群のスピード感を誇るアクション型のサスペンス大作。後半やや失速するものの、ヒッチコックばりのスリリングな展開で面白さは満点。サスペンス邦画の傑作。
[評価]★★★★☆

cinema review

STORY

 東京・新宿。検事・杜丘冬人は突如逮捕される。水沢という見知らぬ女が、一週間前泥棒に入られ強姦までした犯人だと訴えたのだ。翌日にはさらに寺田という男に杜丘にカメラを盗まれたと訴えられる。単なる人違いだと上司の伊藤検事正に説明するが家宅捜索で盗難品が次々と見つかり、これが何者かの罠だと悟る。
 杜丘は無実を晴らすべく隙を見て脱走。水沢が郷里・奥能登に帰ったことを突き止め、行ってみると水沢は偽名だった。本名は横路加代。ところが家を尋ねてみると加代は死体となっていた。杜丘は、直前に家から出てきた二人の男が犯人だとにらむ。さらに部屋にあった加代の結婚写真を見て驚く。相手は寺田だったのだ。
 この殺人事件から、杜丘を追っていた警部・矢村も、水沢と寺田の正体がわかり、二人の訴えがでっちあげだと勘付く。が、加代を殺したのは杜丘だと疑わなかった。次は寺田が狙われる。寺田の本名は横路敬二。矢村は横路が帰ったという郷里・日高へと赴く。
 誰がなぜ自分を罠にはめたのか? 杜丘は捜査中のある事件に思い当たっていた。ある日、朝倉代議士が7階のレストランから飛び降りて自殺。同席していた長岡は、朝倉は突然飛び降りたと証言。しかし杜丘は、朝倉と長岡の間に何かがあったと推理していた。長岡が超タカ派の政界の黒幕だったからだ。
 やがて杜丘も横路の居場所を突き止め北海道へ飛ぶ。が、先回りしていた警官たちに見つかり日高山中に逃げ込む羽目に。するとそこで熊に襲われる女性・遠波真由美に出くわす。杜丘は真由美を助け、彼女の家に匿われることになるのだったが ・・・。

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COMMENT

 佐藤純彌×高倉健は黄金コンビと呼べるのでしょうか。本作は前作の「新幹線大爆破」に続くもので、いずれもがサスペンス大作として評価を受け、海外でも上映されています。特に本作は、アクションやサスペンス、ミステリーにロマンス、と、バランスよく配置され、終始面白さを失うことがありません。娯楽モノとしては超一級の映画ではないかと思います。
 主人公は地方検事・杜丘(高倉健)。ある日の街中、突然見に覚えのない罪で逮捕されます。見知らぬ女からは強盗強姦の犯人、見知らぬ男からは窃盗犯として訴えられてしまうのです。杜丘はみずから無実を証明するために隙を見て脱走。北陸から北海道、そして東京へと手がかりを追っていくことになります。
 冒頭からこれ以上ないというほど緊迫したシーンで見る者をスクリーンに引き込みます。もっとも、訴え出た二人は偽名で、また、すぐに行方をくらましてもおり、おとなしく待って入れば杜丘は無実が晴れそうではあります。しかし考える隙を与えないほどのスピード感で、ストーリーはずんずんと進んでいきます。
 中盤にはロマンスの相手・真由美(中野良子)が登場。男臭い殺伐とした雰囲気がガラッと変わります。物語にはライバル役として警視庁の刑事・矢村(原田芳雄)も登場。盲目的に杜丘を信じる真由美と誰も信じないと言って杜丘を追い詰めてゆく矢村は実に対照的。悪役の政界の黒幕・長岡(西村晃)もそうですが、デフォルメに近い極端な人物設定で物語の情緒面を大いに盛り上げているのが分ります。
 ただ、終盤はやや失速。ホステス(倍賞美津子)に匿われるというやや冗長なシーンを経て舞台は新宿へと戻ります。ここで真由美が杜丘を助けるために馬を放って疾走させるシーンがありますが、これは強引に過ぎます。その後の精神病院のシーンも繰返しが多く停滞気味。結局二時間半に及ぶ長編となっていますので、もう少しコンパクトに、というのが筆者の実感ではあります。
 最後は暴力的な結末で終わりますが、痛快感は十分。杜丘は、「法で裁けない悪」を知った、と事件を振り返ります。中ほどにも、「法律の条文だけで裁いてきた」、と、反省するシーンもあります。決して大きくクローズアップされているわけではありませんが、わずかに社会派の顔ものぞかせてはいます。いずれにしても、抜群のプロットの面白さではなかったでしょうか。
 余談ですが、本作の音楽(青山八郎)にはギターをメインに使った陽気な曲が含まれており、ちょっとした違和感を感じなかったでしょうか。主に主人公が逃亡するシーンで使われており、ツィターを使った「第三の男」風のようでもあります。ただ、ひどく新鮮なことには違いありません。しかも、見終わるとなぜか頭にこびりついてしまうメロディー。意外とマッチしていたのでは? などと錯覚してしまっているから不思議です。

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スーパースター・高倉健は当時はヤクザ映画からの転換期。前作は国際的にも評価を受けた列車サスペンスの傑作「新幹線大爆破」(1975)。この翌年には歴史超大作「八甲田山」(1977)に感動のロードムービー「幸福の黄色いハンカチ」(1977)、と、70年代を代表する日本映画に立て続けに出演しています。

www.sasaraan.net

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