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風の谷のナウシカ

(1984年/日本/116分)

[監督]宮崎駿
[原作]宮崎駿
[脚本]宮崎駿
[作画]小松原一男
[音楽]久石譲
[出演](声) 島本須美、辻村真人、京田尚子、納谷悟朗、永井一郎、松田洋治、冨永みーな、榊原良子、家弓家正

[内容]

 産業文明が崩壊してより千年。風の谷に虫に襲われた大型船が不時着。積荷は世界を焼き尽くした巨神兵の繭だった。続いてトルメキア軍が襲撃。谷を占領してしまう。谷の姫・ナウシカは人質として護送。が、途中、ペジテの船に襲われ墜落。ナウシカは瘴気を放つ腐海へと落ちてしまう ・・・。宮崎アニメ初期の傑作。アニメ特有の脈絡の希薄さとベタさ加減には閉口だが深いテーマを冒険色たっぷりのストーリーで彩る。映画史上としても名作に挙げたいところ。宮崎駿作品の原点的な作品でもある。
[評価]★★★★★

cinema review

STORY

 巨大産業文明が崩壊して千年。地上には腐海と呼ばれる毒菌類の森が広がり、人類の存続を脅かしていた。その一角に風の谷と呼ばれる緑豊かな地があった。その平和な谷に剣士ユパが立ち寄る。ユパは、失われた大地を取り戻す救世主を探す旅を続けていた。そしてユパは谷の長ジルの親友でもあった。
 ある朝、谷に突如トルメキアの大型船が墜落する。トルメキアは西方にある強大な軍事国家だ。皆とともに駆けつけたジルの娘ナウシカは、鎖につながれた少女を救出。すると少女はペジテの姫・ラステルと名乗る。が、積荷を燃やしてと言い遺して息絶えてしまう。積荷は誕生前の巨神兵の塊だった。巨神兵はかつて地上を七日で焼き尽くした怪物だ。絶滅したはずが生き残りが地下に埋まり、何者かが掘り返したのだった。
 ほどなく、今度はトルメキアの大軍が谷を襲ってくる。この時長のジルが殺され、谷は占領されてしまう。怒りに任せて反撃を試みるナウシカだったが、皆殺しを恐れたユパの機転で争いは収められる。そして司令官のクシャナ殿下は、あとを参謀のクロトワに任せ、ナウシカを人質として占領したばかりのペジテへと連行する。しかしその途中、ペジテのガンシップが襲撃。ナウシカはガンシップの少年・ペジテのアスベルとともに腐海の底へと落ちてしまう。が、そこで二人が見たものは、意外にも澄んだ空気ときれいな水だった。腐海は大地の毒を浄化していたのだ。
 その頃、谷では毒を放つ胞子が見つかり騒ぎとなっていた。胞子が広がれば谷は腐海と化してしまう。皆は胞子の焼却に奔走するが、これに乗じて反乱を起こそうとしていた。一方、ナウシカはアスベルに連れられペジテに向かう。ところが町は巨大な虫・王蟲(おうむ)に襲われ壊滅。ペジテ人がトルメキア軍を倒すためにわざと襲わせたのだ。さらに、巨神兵を取り戻すために風の谷をも虫に襲わせるという。驚いたナウシカは谷へ戻ろうとするが、ペジテ人に捕まり監禁されてしまう ・・・。

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COMMENT

 昔、まだアニメ雑誌がマイナーだった頃、ナウシカの連載を目にしたことがあります。当時はさほど話題ではありませんでしたが映画になって一気に注目を浴びました。予算の違いがあるので仕方がありませんが、画質的にはまだまだディズニーには及ばないものの、感動的なストーリーと質の高さはある種の衝撃を映画界に与えました。子供映画、マニアック、といったアニメの位置を覆しただけではなく、大人の鑑賞に耐え得るアニメは、実質上ここからスタートしたと見れるかもしれません。ただ、物語的に大変優れていることは確かですが、一点だけ。筆者は虫が大嫌いなのです。何度見てもこれだけはいまだに慣れません。
 物語は風の谷の姫・ナウシカ(島本須美)の冒険を描きつつ、腐海の謎をもって物語のテーマとしています。背景設定は現代のような文明が崩壊して千年。中世ヨーロッパ的な世界観、石とセラミックの文明世界を構築しています。人類が衰退したとはいえ、剣や鎧はセラミック。さらに空を飛ぶ文明力は維持されています。ただし、今と変わらない戦車や機関銃の姿はちょっとアンバランス。実は、前文明が滅んだ経緯や巨神兵がなぜ世界を焼き尽くさねばならなかったなど、脈絡不明の点も多いことは確か。このあたりは、まずシチュエーションありきで説明不足に陥ってしまうアニメ特有の欠点と言えるでしょう。
 しかし圧倒的な物語の面白さで、しかもアニメとしては長い二時間という長丁場を見事な簡潔さで乗り切ってしまっています。各モチーフ間のバランス配分も絶妙。短くも長くもなく、モチーフをきちんと見る者に入り込ませて展開を進めていく。実写映画でもここまでの質の高さは稀有ではないでしょうか。本作の高い評価の背景には、内容のみならず、このようなつくりの上の質の高さにこそあります。
 物語は、平和な風の谷に飛行船が不時着したところから始まります。落ちたのは軍事国家トルメキアの大型船。トルメキアはペジテを攻撃して占領。そこで巨神兵の繭を発見。本国に輸送するところでした。巨神兵が復活すれば再び世界は焼き尽くされる。巨神兵が象徴するものは現代の核兵器であるとも捉えられます。
 ナウシカは人質として捕らえられますが、途中、ペジテの少年・アスベル(松田洋治)とともに腐海の底に落ちてしまいます。そこで、二人は人類の存続を脅かしていると考えられた腐海の真実を知ることになります。腐海が大地の毒を吸収してきれいな水と土をつくっている。虫たちはそんな森を守っているのだ、と。
 自然に逆らうことの愚かしさ、人知の及ばない自然への畏れ、そんな想いが腐海の謎には込められているように思います。さらに、冒頭と終盤には、救世主という宗教的な視点が入っているのがミソ。「その者青き衣を身にまとい金色の野に降り立つべし」 というくだり。人類には必ず救いがある、そして重要な点は、救世主が自然と人間とを融和させるというところにあるでしょうか。これが実に神々しい雰囲気を醸成しています。ラストではナウシカは王蟲の不思議な力によって復活。これもイエス・キリストの復活を連想させます。
 作中には様々な感動的なシーンがちりばめられ、思わずほろっとしてしまいます。ちょっとベタさがないわけでもないですが、そう感じること自体、純粋さを失っている証かもしれません。つまりは、実に真摯で純粋な物語であると言えます。
 本作以降様々な作品を送り出した宮崎駿ですが、いまだに本作のテーマを踏襲して描き続けている感があります。この次につくられた「天空の城ラピュタ」もそうですが、「もののけ姫」にいたっては、本作をそのまま日本の戦国時代に置き換えたような印象。その意味では、「ナウシカ」の物語は宮崎駿のライフワークであるのかもしれません。

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宮崎駿●主な監督作品
「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)
「風の谷のナウシカ」(1984)
「天空の城ラピュタ」(1986)
「となりのトトロ」(1988)
「魔女の宅急便」(1989)
「紅の豚」(1992)
「もののけ姫(1997)」
「千と千尋の神隠し」(2001)
「ハウルの動く城」(2004)

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