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乱(1985年/日本/162分)
cinema review ![]() STORY
戦国時代。一代で一文字家を興し国を治めた秀虎は、巻狩後の席で、突如、家督を長子・太郎孝虎に譲り隠居すると発表。周りを驚かせます。さらに一の城を太郎、二の城を次郎正虎、三の城を三郎直虎に譲ると言い兄弟協力し合うよう諭しますが、三郎は兄弟が争うようになる、と秀虎の隠居に反対。秀虎の逆鱗に触れ、三郎をかばった重臣・平山丹後と共に追放されてしまいます。
しかし、その実直さを見込んだ隣国・藤巻家の当主・信弘は三郎に婿に来て欲しいと請い、三郎は藤巻家へ。一方、一の城の本丸を譲り二の丸へ移った秀虎でしたが、大殿の体裁は保つとしたことが家臣たちの混乱をまねいていきます。さらに正妻・楓の方にそそのかされた太郎は、秀虎を招くと下座に座らせ、自分に従うという起請文に署名血判を迫り、親子の対立を決定的なものにしてしまいます。 怒った秀虎は、一騎当千の郎党三十人や侍女たちと共に一の城を飛び出し、次郎の二の城へ。が、次郎は重臣たちと共に家督乗っ取りを謀っていた最中。太郎からの指示もあり、邪魔な秀虎を拒否。秀虎は野をさまようことになってしまいます。さらに村々には秀虎を助けるなという御触れが出され、一行たちは飢えにも苦しむようになっていきます。 その頃、三の城の兵たちは三郎に従うため藤巻領へ移動。代わりに太郎の命で三の城を受け取りに行った小倉が入城します。小倉は秀虎の元臣。ほどなく秀虎は三の城へ。しかし翌朝、小倉と秀虎の腹心・生駒が裏切り、太郎と次郎の軍勢を呼び寄せます。城兵は皆殺し、侍女たちは自害、郎党も皆討ち死に。が、その間、次郎の側近・鉄(くろがね)が太郎を暗殺。そして一人残った秀虎もまた自害しようとするのでしたが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
黒澤監督が再度取り上げたシェークスピア。その四大悲劇のひとつ、「リア王」をベースに、設定を日本の戦国時代に変えてつくられたのが本作。三人の娘は三人の息子に置き換えられ、さらにこのシチュエーションは、三本の矢の話を引用していることから、毛利元就と三人の息子にもダブらせているようです。
物語は、戦国武将一文字秀虎(仲代達矢)が,三人の息子に領地を引き継ぐと宣言するところから始まります。しかし実直で親思いの三男・三郎(隆大介)は、兄二人(寺尾聡・根津甚八)に野心があることを見抜いて反対。これがもとで逆に追放されてしまい、領地は兄二人が継承。が、その途端掌を返したように秀虎を邪険にし、ついには軍勢を率いて攻め滅ぼしてしまうのです。それでも狂人と化して生き延び、野をさまよい歩く秀虎。ほどなく、藤巻家の婿となった三郎が父・秀虎を救いに出陣。再開し、秀虎はようやく三郎の真の姿を悟ります。それは、苛烈さをもって他家を滅ぼし、国を奪ってきた秀虎が始めて悟った、あるべき人間の姿ではなかったでしょうか。しかし、それももうひとつの悲劇を生む運命でしかなかったことが、やがて明らかになります。 太郎の妻・楓(原田美枝子)、次郎の妻・末(宮崎美子)は、婚姻関係を結んでおいてからその家を滅ぼすという戦国時代の非情な世界を象徴しています。しいては秀虎の非情さを象徴する存在でもあります。が、みずからの死をも顧みず、遠謀をめぐらして一文字家滅亡を望む楓。一方では確執を捨て、仏と共に穏やかに生きようとする末。同じ仕打ちを受けながら異なる態を見せる二人の対比は、"因果" が巡る世界を描き分けているとも言えます。 さらに、人間らしい感情を押し殺した楓はともかく、仏などいないと豪語する秀虎に対し、仏の加護を信じる末の方はこの物語の "救い" を象徴するものではなかったでしょうか。が、終盤、末の方の末路はあまりにも残酷なもの。皮肉にも、末の方は救いのなさを象徴する存在であったことが分かります。行き着くところは "業" ということなのでしょう。人間が己のまねいた因果によって滅ぶ。そんな救いのなさが、次々と周りの人間にまで及んでいく様が最後まで描かれた物語といえるでしょう。 舞台のような、絵画のような、と言われるのが、「赤ひげ」以来の黒澤作品。本作も娯楽性はやや犠牲になっており、特に悲劇性を強調した作風は好き嫌いを生みやすいところ。黒澤カラー映画が、玄人受けはしても一般には敬遠されがちな理由はこんなところにあるのでしょう。が、その哲学性を見事に表現し切った本作が紛れもない名作であることには疑いようもありません。 |
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黒澤監督の前作が、世界的な話題となった「影武者」(1980)。武田信玄の影武者となった男を、武田家の興亡と共に描いた歴史大作です。主演は本作と同じ仲代達矢。海外映画では「影武者」のポスターが背景に使われるほど。
「影武者」(1980年/日本)
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