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女王蜂

(1978年/日本/139分)

[監督]市川崑
[原作]横溝正史
[脚本]日高真也、桂千穂、市川崑
[撮影]長谷川清
[音楽]田辺信一
[出演]石坂浩二、岸恵子、司葉子、高峰三枝子、中井貴恵、沖雅也、草笛光子、坂口良子、萩尾みどり、加藤武、神山繁、小林昭二、大滝秀治、白石加代子、三木のり平、伴淳三郎、仲代達矢

[内容]

 大道寺銀三の元にその娘・智子に言い寄る男は命を落とすとの警告文が届き、ほどなく智子への求婚者が撲殺される。金田一は19年前の智子の本当の父・日下部仁の死に関わりがあると確信して調べ始める。が、その間、二人目の求婚者が殺されてしまう ・・・。石坂金田一第四弾。次々と起こる魔術的な殺人事件が見事に見る者の目を釘付け。ただし、慌しい前半に落ちすきすぎた後半、と、ややアンバランスな構成。しかしシリーズ中最も感動を極めた作品でもある。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 昭和7年、伊豆・月琴の里。源頼朝の末裔と言われる大道寺家の研究のため、大学生の速水銀三と日下部仁志が訪れる。そして三ヶ月の間に仁志と琴絵は愛し合うようになり婚約。仁志は祖母ゆかりの指輪を琴絵に贈る。が、琴絵は、住所すら教えない仁志に不審を抱く。さら突然仁志が婚約解消を言い出したため口論に。やがて唐の間には頭を殴られた仁志の死体が。しかし何者かにより死体は近くの崖下に運ばれ、転落事故として事件は終わる。
 昭和11年。銀三が大道寺家を訪れ琴絵に求婚。婿養子に入り大道寺銀三となる。この時琴絵には仁志との間にできた娘・智子がいた。そして昭和27年。琴絵はすでに病死。銀三は京都で事業に成功し、蔦代という公認の妾と住んでいた。一方智子は伊豆で家庭教師の神尾と暮らす。神尾は琴絵の代からの家庭教師であった。
 ある日、智子は時計室で遊佐の撲殺死体を発見する。遊佐は、智子の三人の求婚者の一人だった。部屋には、昨日知り合ったばかりの謎の男・多門連太郎も潜んでいて、無実を訴えると逃げていく。
 早速、静岡県警から等々力主任が出張り捜査を開始。多門を追う。そこに、京都の加納弁護士の依頼で金田一がやって来る。加納は銀三とも親交があった。ほどなく、加納に調査を依頼した謎の人物と、銀三の元には同じ文面の手紙が届いていたことがわかる。"智子が京都に来れば血が流れる ... 智子に言い寄る者は命が危ない"、という警告文だった。智子は19歳で京都に移ることになっており、今日は智子の誕生日。丁度銀三が智子を迎えに京都から来ていたところだ。
 一方金田一は19年前の事件を知る者が今回の犯人だと推理する。加納は、仁志が指輪を持っていなかったことに疑問を感じていた。死の直前、琴絵に指輪を返してもらっていたからだ。銀三もまた、仁志の死はおかしいともらす。仁志は植物採集で崖に行ったと言われるが、そんな趣味はなかったという。さらに捜査に加わっていた山本駐在も、宮内省から圧力がかかって捜査は中止になったと回想。金田一は仁志の正体に鍵があると考えて探り始める。
 そんな中、京都の蔦代から銀三に連絡が入る。また警告状が届いたというのだ。銀三に智子、神尾、そして等々力と金田一も急ぎ京都へと向かうのだったが ・・・。

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COMMENT

 市川崑×石坂浩二の金田一シリーズ第四作。名探偵・金田一耕助の推理の信憑性が最後まで分らないという珍しい展開。真相は、最後、犯人からの手紙によってようやく明らかとなります。極めてドラマティックなストーリーで、感動的な雰囲気を見事に醸成。涙を誘う終盤でポピュラリティを高めてはいます。が、過度に感傷的でもあり、評価の方は割れやすい作風となりました。

●主要登場人物
・金田一耕助 ... 私立探偵。
・等々力警部 ... 静岡県警。今回の捜査主任。
・加納弁護士 ... 東小路家の顧問弁護士
・大道寺銀三 ... 大道寺家の当主。婿養子。仁志は親友だった。
・大道寺琴絵 ... 銀三の亡き妻で仁の元婚約者。智子の母。
・大道寺智子 ... 琴絵と仁志の娘。
・日下部仁志 ... 琴絵の婚約者。19年前に殺害される。
・東小路隆子 ... 元公爵家夫人。京都に住む元能登藩士の末裔。
・蔦代  ... (姓不明)銀三の妾。元芸者。
・文彦  ... (姓不明)蔦代の子。
・九十九龍馬 ... 心霊研究家。蔦代の兄。
・遊佐  ... 智子の求婚者。時計室で殺害される。
・駒井  ... 智子の求婚者。
・赤根崎 ... 智子の求婚者。
・神尾秀子 ... 大道寺琴絵と智子の家庭教師。
・多門連太郎 ... 謎の男。執拗に智子に近付こうとする。

 今回は前三作に比べればややすっきりとした人間関係。終盤で銀三の過去が語られるあたりで複雑さを帯びてきますが、混乱するほどではありません。物語は、まず、19年前に遡って語られます。伊豆の大道寺家で日下部仁志という若者が殺害。仁志は大道寺家の娘・琴絵(萩尾みどり)の婚約者。しかし婚約破棄を伝えに来ていたところでした。現場の唐の間の前には放心状態の琴絵。見る者を含めた誰もが、琴絵が犯人、と思うわけですが、これが本作最大の映像トリックとなります。
 そして現代(昭和27年)、再び大道寺家で惨劇が起こります。亡き仁志と亡き琴絵の娘・智子(中井貴恵)に三人の求婚者が現れ、その一人が撲殺されるのです。この時大道寺家の当主は、仁志の親友だった銀三(仲代達矢)。しかし普段は京都で事業を営み、伊豆に留まる琴絵が公認した妾だった蔦代(司葉子)とその子・文彦(高野浩之)と同居。一方智子には琴絵時代からの家庭教師・神尾秀子(岸恵子)が一緒に住んでいました。
 「女王蜂」とは、銀三に送られた警告状の文面から来ています。大道寺家の娘に言い寄る男は皆命を落とす、と。この警告文もそうですが、作中では、頼朝伝説が登場し、伝記ロマン的なイメージを醸し出しています。そして中盤、舞台は草深い伊豆から華やかな京都の社交場へ。が、その野立ての会で第二の殺人は起こってしまいます。智子の入れた茶で二人目の求婚者が毒殺。紅葉という美しい自然を背景に流れ出る血の残酷さ。この対比が物語の残虐性を際立たせています。このシリーズの殺人の扱い方は常に血をともないます。一体誰がどうやって毒を入れたのか? 事件は混沌とした状況に陥っていきます。そして、このあたりから、謎の男・多門連太郎と東小路元公爵夫人の正体が明らかとなります。
 前半はめまぐるしく場面が移り変わり、やや落ち着きに欠ける展開ではあります。対する終盤ではワンシーンをじっくりと描いていきます。この点はアンバランスさをどうしても感じてしまいます。ただし、この終盤は極めてドラマティック。犯人の動機は憎悪に満ちた意外なもの。が、物語の感動は、その後に無私の愛を描いたところにあります。金田一の推理は正しかったのか? それとも間違っていたのか? しかし事件の結末は、決して真実を問題にはしません。ラスト、自分は間違っていたとつぶやく金田一。が、真実を知らないはずの等々力主任(加藤武)は、金田一に「いいや、君は正しかったさ」と訳知り顔で言葉を放つのです。何とも粋なシーン。見事な物語の締めくくり方ではなかったでしょうか。本シリーズでは、最早名物ともいえる加藤武演じるこの刑事が、作を重ねるにつれて、重要な役割を担うようになってきています。
 ともあれ、本作はシリーズ中最も感動的な作品と呼べるでしょう。見る側にさほど推理を要求しない、やや冒険譚的な装いでもあります。つくりはともかく、ストーリー的には最も満足感を得られる作品であるかもしれません。

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