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四月物語

(1998/日本/67分)

[監督]岩井俊二
[脚本]岩井俊二
[撮影]篠田昇
[音楽]CLASSIC
[出演]松たか子、田辺誠一、留美、藤井かほり、津田寛治、加藤和彦

[内容]

 北海道の高校を卒業後、大学へ通うために上京してきた卯月。ある本屋に毎日のように通い詰める。実は高校時代に片想いしていた先輩・山崎のアルバイト先。ある日、ふとしたことから言葉を交わすことになったのだが ・・・。岩井俊二監督の中篇ドラマ。一人の少女の胸に秘めた恋を描いたリリカルなラブ・ストーリー。あまりにも甘酸っぱく繊細。美しさに酔いしれる少女映画の佳作。
[評価]★★★★☆

cinema review

STORY

 武蔵野大学に通うため北海道から上京してきた楡野卯月。引越し荷物も届き、東京での新たな生活が始まることに。あいさつに行った隣の照子はどこかはかなげ。大学に通い始めるとさえ子という同級生が近寄ってきます。が、卯月は、物怖じしない上にずけずけものを言うさえ子に戸惑うばかり。さえ子に誘われるまま、つりのサークルに入ることに。
 ほどなく、自転車を買う卯月。武蔵野堂という書店を探し当てると毎日のように通い始めます。実は高校時代に片想いしていた先輩・山崎がアルバイトしていると聞いていたのですがなかなか会えません。
 一方、東京での生活にも慣れてきた卯月。隣の照子や同級生のさえ子とも少しづつ心が通い合うようになっていきます。そんな中、通い詰めていた本屋で、ついに憧れの先輩・山崎に会うことができたのですが・・・。

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COMMENT

 岩井俊二監督の中篇映画。ドキュメンタリー風、というよりはやはりリリカル、という方がこの映画には似合います。感性重視のシンプルなストーリーライン。ややもすると緩慢になりがちですが、美しい背景、あまりにも繊細な心理描写、それに応える演技。おもしろさ、という点では一歩も二歩も後退しますが、むしろエンターテイメントを超えた感性で見事に一人の少女の恋を描き切っています。
 冒頭は雪の北海道。続いて新居のドアを開けるシーン。そして空っぽの部屋。やがて荷物が届くとたちまち部屋が物で満ちていきます。まるでまだ空白となっている新たな生活のスタートと卯月(松たか子)の思いの詰まった様を象徴するよう。が、引越し屋に "はあ" としか言えずおろおろする卯月の姿がひどく印象的です。一方では、服にたまった桜の花びらをささっと落とすところに、緊張がほぐれた彼女のありのままの姿を見ることができます。こんな何気ないところにも物語の繊細さが表れています。
 さらに大学での卯月。やはり最初はおどおどし通し。物怖じのない上にずけずけものを言うさえ子とは対照的に映ります。さえ子は、いつもの調子で半ば無理やり卯月をつりのサークルに入れてしまうのですが、卯月がサークルを休むと言うと、やめたいの?、などと気を遣ってきます。無神経と思われたさえ子。実はそれが個性なのだと悟っていきます。そして、そんなさえ子に卯月は少しづつ心を開いていくことになります。
 隣の部屋に住む照子もいいアクセント。 "一緒に食事しませんか" という卯月。そのことばは山崎先輩に合えた喜びで開放的になった顕れ。が、都会のアパートでのひとり暮らしではめったにないこと。逆に照子が戸惑ってしまうのがおかしいところ。それでも、互いに距離が縮まっていくのが見ていてわかります。
 そして最後のシーンは土砂降りの雨。が、荒れる天気とは裏腹に卯月の気持ちは高鳴ります。山崎は卯月を覚えていたのです。そして、その不意の出来事が卯月の心を一気に解放させます。
 作中では、雪、桜の花びら、雨、と自然の営みを見事に背景にして美しい物語を一層際立たせています。全編を覆うナチュラルな人物描写にも好感が持てます。そして何と言っても、一人の少女のあまりに微妙な心の変化を見事に描ききっているのです。彼女のその姿は見るにほほえましいのですが、こうなると卯月の恋の行方がどうなっていくのかは気になるところ。最後、先輩との再会を愛の奇跡などと言っているところがいかにも少女っぽい心の美しさ。静かな展開の中、畳み掛けるように見るものに語りかけてくる終盤もまた見事なもの。
 自然で分かりやすく演じきったたか子はすばらしい表情ではないでしょうか。繊細さと脆さ、緊張と弛緩、さらにはせつなげではかなげな姿までもがよく出ています。が、余談を言わせてもらいますと、最後に一番おいしいところを持っていったのは加藤和彦だったりするのが、唯一この物語の変なところ。まあ、それはともかくひたすら美しい映画。癒し効果も抜群でしょう。

(ビデオメーカー)
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岩井俊二関連作
(花とアリス、PiCNiC)
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(HERO、いつもふたりで)


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 岩井監督の少女映画、女性映画は他に、「Love Letter」、「花とアリス」。いずれも繊細で透明感に満ちているのは本作と同じ。どちらもおすすめ。一人でじっくり見たい映画です。
「Love Letter」(1995年/日本)
「花とアリス」(2003年/日本)

www.sasaraan.net

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