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助太刀屋助六

(2002年/日本/88分)

[監督]岡本喜八
[原作]生田大作 『助太刀屋』
[脚本]岡本喜八
[撮影]加藤雄大
[音楽]山下洋輔
[出演]真田広之、鈴木京香、村田雄浩、鶴見辰吾、風間トオル、本田博太郎、友居達彦、山本奈々、岸部一徳、小林桂樹、岸田今日子、仲代達矢

[内容]

 七年ぶりに故郷へと帰って来た助六。これから敵討ちが始まると聞き血が騒ぐ。助六の稼業は助太刀屋だった。そこで仇の老武士・片倉に助太刀を申し出るが、断られた上に気絶させられてしまう。が、正気に戻った助六は、ふとしたことから、片倉が自分の父親であることを知る ・・・。歌舞伎の映画化?、と思いきやオリジナル時代劇。岡本喜八監督がユーモアたっぷり、人情味たっぷりに仕上げる。さすがに衰えが目立ち小ぢんまりしたつくりとなったが、終始スクリーンに引き込まる魅力は十分。また本作は、残念ながら巨匠の遺作でもある。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 上州、ある宿場町。十七歳で故郷を飛び出した助六は、道すがらで敵討ちに巻き込まれて助太刀をしてからすっかり病み付きになってしまう。以来、敵討ち稼業をはじめ一稼ぎ。七年ぶりに上州に帰って来たところだった。まずは顔も知らぬ父に捨てられた母の墓前に参拝。するとそこに一輪の花が供えられているのを見て首をひねる。親類などは一人もいないはずなのだ。
 その後町へと歩を進めた助六だったが、なぜだか町はしんと静まり返っている。するとそこに、幼なじみの太郎が現れる。ガキ大将を争った仲だったが、今は番太となっていた。懐かしがるのもそこそこに聞いてみると、これから仇討ちが始まるのだという。兄を討たれた兄弟、脇屋某と堀田某、仇の片倉梅太郎との決闘がこれからはじまるのだ。助六はすわ助太刀屋の出番かと意気込むが、討手には既に助太刀が二人ついていると聞き肩を落とす。しかも討手のバックには八州出役がおり、仇討ちの検分にこちらに向かっているところらしい。
 そこで助六は、今度は片倉がいる桶屋の桶甚へと向かう。桶甚の親爺も昔から知った仲だ。しかし片倉梅太郎に会ってみると、とても仇面には見えない温厚な老人なのに驚く。片倉は既に死を覚悟しており、自分の棺桶まで作らせていた。助六は片倉に助太刀したいと申し出るが、片倉は助六を気絶させ、いよいよ決闘の場へと向かう。そこには既に八州出役・榊原織部が到着していた。実は榊原織部は、片倉にとって因縁深い人物だった。
 一方、正気に戻った助六は片倉の後を追おうとする。と、そこに、一輪の花が落ちているのに気付く。それは母の墓前に供えられていたのと同じ花だった。そこで助六は気付く。片倉が自分の実の父親であることを ・・・。

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COMMENT

 岡本喜八監督のアクション風時代劇。さすがに往年の勢いある作風とは比べるべくもありませんが、全編相変わらずのおもしろさを演出。また、2時間3時間をだらだらと費やす昨今の作品に反し?、90分というコンパクトさで勝負。若手と巨匠の実力の差を見事に見せ付けました。まあ、そんなことは本人の意識にはなかったでしょうが、改めてそのつくりの堅牢さには思い至ります。ただ、そのかわりと言えるかどうか、小ぢんまりとした印象は否めません。インパクトという点では、今ひとつだったかもしれません。
 舞台は江戸時代。文政年間といいますから江戸時代後期、将軍は十一代・家斉の治世。物語の主人公は助六(真田広之)なる町人。しかも「敵討ち」がモチーフとなれば歌舞伎の「助六」を連想してしまいますが、ストーリーは別もの。わざわざ同じ名前にしていますので、少なくともインスパイア作品ではあるのでしょう。ちなみに、原作の生田大作と岡本喜八監督とは同一人物であるということです。
 物語は、この助六がひょんなことから助太刀屋となって成功し、上州に帰郷するところからはじまります。本人は錦を飾ったつもりながら、どうみてもお調子者のただのサンピン。なのですが、序盤、母のみすぼらしい墓を建て直そう、と決意するあたりでこの人物の情のありようを一瞬で描き切ってしまっています。そして観る者を早々と助六派にさせてしまうのです。ここもまた巨匠の巧さに違いありません。
 故郷の宿場町に帰って来たものの、助六を待っていたのは、これからはじまるという「仇討ち」。当時、仇討ちは幕府が正式に認めた殺人許可のようなものでした。しかし返り討ちもまた正当な行為。武家社会の不思議なさであり、理不尽さを象徴した制度でした。ともかくも、兄を討たれた二人の武士が、仇の老武士・片倉梅太郎(仲代達矢)を討たんと集結。助六は片倉に会い、その人品に魅了されて助太刀を申し出ますが断られてしまいます。やがて決闘で命を落とす片倉でしたが、その助六は、片倉が実の父親であることを知り、本当の敵討ちを決意することになるわけです。
 実は片倉が仇となったのは、八州回りの榊原織部(岸辺一徳)の袖の下を糺そうとしたのが原因。物語は勧善懲悪の方向へと進み、これまた日本人ならそそられずにはおれない展開と呼べます。物語には、いまだガキ大将感覚が抜けない幼なじみ・番太の太郎(村田雄浩)、やはり幼なじみで助六を慕う“あおっぱな”お仙(鈴木京香)なる能天気な女が脇に登場。破天荒ながらも不思議と浮いた感はなく、一人一人のキャラクターのつくりこみにも感心してしまいます。
 終盤はもう昔の喜八流アクション映画を思い起こさせるような活劇。敵討ちに奔走する助六、助六を追う織部、さらにはそんな助六をさりげなく助ける町の人々、と、随処に人情話を絡めて一気にラストまで進んでゆきます。そして最後はハッピーエンド。これも娯楽映画の大原則。さらに、英雄町を去る、はヒーロー映画の大原則でもあります。インパクトが薄めとの印象があり、度合いの大小はあるでしょうが、確実に満足を得られる映画と呼べるのではないでしょうか。
 さて本作は、岡本喜八監督の遺作となってしまいました。「独立愚連隊」(1959)をはじめとした一連のアクション映画はいまだに面白さを維持し続けています。日本映画史上、というより、日本歴史上貴重な足跡となった超大作「日本の一番長い日」(1967)のような作品もあります。晩年では、今なお絶大な支持を受けている感動の犯罪コメディ「大誘拐」(1991)が記憶に新しいところでしょう。間違いなく、日本映画史を支えてきた一人でした。

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