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時をかける少女(1983年/日本/103分)
cinema review ![]() STORY
土曜日の放課後、芳山和子は堀川、深町と三人で理科室の掃除当番に。が、和子が誰もいないはずの実験室で物音を聞いて入っていくと、ラベンダーの香りと共に白い煙が発生。和子の意識が遠のいていきます。そして気がついた時、実験室には何の痕跡も残されていないのでした。
その日から時間の感覚に違和感を覚え始めた和子。日曜日には自分でも知らぬ間に何時間も経っている事に気付きます。そして月曜日の夜。郊外にある和子の家。部屋にいる時に大きな地震が。外へ避難すると、揺れは治まったものの町の方には火の手が上がっているのを見つけます。クラスメイトで幼馴染の堀川吾郎の家のあたり。駆けつけてみるとぼや程度で済んだとのことで安心します。帰りには近所に住む深町に会い、これまでのことを相談しようとしますが言い出せません。 さらに次の日の火曜、和子が学校へ行くと授業の内容が昨日と同じ。和子は昨日と同じ一日を過ごすことに。が、ほどなく、和子は今日が火曜ではなく月曜であることに気付きます。帰り道、和子は意を決して深町の家に行き、これまでのことを打ち明けます。深町はデジャヴのようなものではないかと慰めますが、和子は今夜地震が起こると予言。その夜、はたして昨日と同じように地震が起き、和子は深町と再会。深町も和子の話を信じはじめるのでしたが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
筒井康隆原作のSFジュブナイルもの。ですが、個人的にはとても不思議な雰囲気を持った映画としていまだ記憶しています。切り貼りのようなカットや学生役の俳優たちのつたない演技、と、まあ、なかばアイドル映画という印象。決してうまいとはいえないつくりだと思うのですが、何度見ても感動してしまう作品。結局、技術が人の感動に与える影響など大したものではない、そんなものは感動を伝える小さな手段にすぎない。そんなことを強く感じさせる不思議な魅力を湛えている映画ではないでしょうか。
冒頭、モノクロのシーン。スキー教室での小さなエピソードが描かれていきます。和子とクラスメートの堀川、深町が紹介されるという何でもないこのシーンが、終盤、展開上最も重要なシーンとなります。続く理科実験室のシーン。ラベンダーの香りとともに気を失った和子(原田知世)。気付いた時にはタイムリープ(時間跳躍)とテレポーテーション(瞬間移動)の能力を備えてしまいます。しかし、そんな能力に和子は苦悩することになるわけです。 ストーリーはもちろんのこと、情緒たっぷりの美しい背景にも酔ってしまいます。尾道の景観や古い街並み、そして部屋の中のおもちゃや古い小道具。おとぎの町に入ったような感覚になるのではないでしょうか。それに松任谷正隆の叙情色豊かなBGMが終始物語を盛り上げます。この別世界感の演出は後の作品でも発揮する大林監督お得意の世界と言えるでしょう。 そんな雰囲気の中、学生たちのつたないと思っていた演技がしっくりと馴染んで見えてくるのはふしぎな効果。特に和子のいかにも純真無垢、といったイメージが何ともいとおしく映ります。逆に大人の脇役陣はみずからいい味を出します。特に往年の大俳優、上原謙と入江たか子。老優ながらアップを使ってその表情をきっちりと捉えているのはつぼをおさえたカットになっています。家族を亡くして寂しい胸のうちが伝わってきて何とも切ない気持ちにさせられてます。 終盤、時間の狭間に迷い込んだ和子はついに真実を知ります。それはあまりにも切ない真実。最後、自分の記憶が深町に埋め込まれたことを知った和子が言います。私の記憶はうそではなかった、と。それは深町を愛する自分の気持ち。そして深町(高柳良一)もまた、それは自分の望んだこと、と打ち明けるのです。期せずして互いの愛を知った二人。しかし、その記憶は消されなければならない。また会える? と和子。うなずく深町。しかしその時、互いにそれとは気付かない、とも。それでも和子は力強く言います。私にはわかる、と。キスシーンすらないラブストーリーですが、どんな名作にも劣らないほどの名シーンではないでしょうか。 やはりこのストーリー、秀逸といっていいでしょう。タイムトリップものはドラマを生みやすいことは確か。ファンタスティックなシチュエーションに、人間味と現実味のある展開をきっちりと加味し、さらにそのすべてを多感な少女の心情に結びつける繊細さが本作の見事なところ。それが見る者の心の琴線にしっかりと触れてくるわけです。感動がうまさに勝るものであることを体感できる映画ではないでしょうか。特に雰囲気に酔いやすい方なら、完全に涙ものの一本となることでしょう。 |
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大林監督の尾道を舞台にした初期作品は「尾道三部作」と呼ばれています。男と女が入れ替わってしまう「転校生」(1982 / 主演:尾美としのり、小林聡美)、少年の恋とふしぎな少女との交流を描いた「さびしんぼう」(1985 / 主演:富田靖子、尾美としのり)。いずれもノスタルジックな秀作です。
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