Index

HOME > 映画TOP > おすすめ映画

Information



「チャンバラ時代劇」

・・・ 江戸時代を舞台にした剣劇傑作選 ・・・

■娯楽時代劇

 娯楽時代劇といえば黒澤明監督の二作品。問答無用の面白さで、いまだこれらの魅力の取り付かれるファンが後を絶ちません。
 世界的にも知られる「用心棒」(1961)は、マカロニ・ウェスタン「荒野の用心棒」、ギャング映画「ラストマン・スタンディング」としてリメイクされるほど。世界規模での面白さ、とは言いすぎでしょうか。主人公は浪人・三十郎(姓はその場その場で適当に名乗るらしい)。二つの勢力がしのぎを削る宿場町。そのために町は荒れ放題。見かねた三十朗は両方に自分を用心棒として売り込み、潰し合いを画策するという物語。
 剣はめっぽう強いが口汚くふてぶてしい。正義感が強く人情家の癖に、妙に悪ぶって斜に構えるおかしさが絶妙の魅力を生んでいます。後の浪人時代劇のスタイルを決定付けたと言えます。最大の見所はラストの目抜き通りでの対決シーン。刀対ピストル。その顛末やいかに!
 娯楽に徹した「用心棒」ですが、黒澤流の真に迫った人間描写は隠しようがありませんでした。それすらも払拭したのが「椿三十朗」(1962)です。よりコミカルになったつくりで、黒澤作品随一の娯楽性を誇ります。主人公は同じ三十郎。名前を同じにしたために続編扱いを受けますが、物語は別もの。
 藩を憂い、藩政改革を家老に相談した青年藩士たち。しかし取り付く島がなく、今度は大目付へ訴え出ます。すると改革の推進を快諾。が、実は家老が味方で大目付自身が陰謀の親玉。敵味方の区別すらつかず、窮地に陥った若侍たち。そのあまりに頼りない様子を見かね、偶然居合わせた三十朗が悪党一味に立ち向かいます。
 原作は山本周五郎の短編「日々平安」。小才臆病な主人公をまったく逆の人物像に設定。原作キラーたる黒澤監督の実力が娯楽作品でも十二分に発揮された一本でもあります。
 同じ山本周五郎の小説を映画化したのが「どら平太」(2000)。こちらは長編「町奉行日記」が原作。映画・テレビですでに何度も映像化されている名作ですが、骨太なヒューマニズムが特徴の山本文学の中では、娯楽性豊な作品となっています。
 ある小藩。江戸から特命を帯びて新町奉行・望月小平太が帰国。領内には「濠外」と呼ばれる藩の支配が及ばない地域があり、顔役たちが私腹を肥やしていました。が、藩はそれを黙認。藩ぐるみで顔役たちと結託して利益をむさぼるという不正が行われていたのです。小平太は遊び人に化けてみずから濠外に潜入。悪党たちを一網打尽にして、藩内部の黒幕を暴こうとします。
 監督は名匠・市川崑。物語は、時にユーモアを交えて、活劇にドラマに、と、実に絶妙のバランスを保ちながら進行します。さらに監督独特の色調・カットは時代劇でも健在。つくりはオーソドックスですが、安定味は抜群。娯楽時代劇の定番的な映画となりました。
 そして、こちらも何度も映像化されてきた時代劇の古典・丹下左膳。それがリメイク作品ながらも復活。「丹下左膳 百万両の壺」(2004)の主人公・丹下左膳は、右手右腕を失いながらも剣豪として大活躍を見せる英雄。本作では駄々っ子のようなコミカルな左膳を豊川悦司が演じています。
 藩主・柳生対馬守は、江戸の道場に婿養子に出た弟・源三郎に下げ渡した安物の壺に、百万両の隠し金のありかが塗込められると知って大慌て。ところが源三郎の家では古物屋に売り払ってしまうのです。壺はさらに少年・安の手から、矢場の女主の厄介になっている丹下左膳の元に。そして、熾烈な壺回収作戦が展開されつつある中、そうとは知らない左膳は壺を金魚鉢にしてしまうのです。
 本作のつくりはかなりアットホーム。実にほのぼのとしたもので、緊迫感は希薄。むしろ人情コメディともいえる出来で、本来の丹下左膳とは相当にイメージを異にしています。丹下左膳としての評価は微妙なところかもしれませんが、娯楽性は十分。満足のいく面白さではないでしょうか。ちなみにオリジナルは1935年。主演は大河内伝次郎でした。

■時代ドラマ

 シリアス時代劇の代表格は山田洋次監督初の時代劇となった「たそがれ清兵衛」(2002)。時代小説化・藤沢周平の数本の短編をまとめたもの。時代劇としての魅力は薄くなりましたが、生々しいまでのリアリズムと細やかな人物描写で、見事なまでの感情伝達を実現しています。
 庄内海坂藩。貧しい下級藩士・井口清兵衛は痴呆の母と幼い子二人を抱えています。家計は苦しく、いつもみすぼらしい身なり。藩御蔵役の終業時になるとすぐに帰宅して内職。そのため、「たそがれ清兵衛」と皆から呼ばれていました。ある日、幼馴染の朋江が夫の暴力が元で離縁。清兵衛の家に再び現れるようになり、互いに想いを寄せるようになっていきます。が、そんな中、藩命に逆らう一刀流の使い手、余吾善右衛門への討ち手として、清兵衛に白羽の矢が立ってしまいます。
 物語は、淡いラブストーリーや友情、そしてラストには緊迫感十分の一対一の対決、など、どれをとっても重厚なヒューマニズムを醸成。時代劇以上に映画としての完成度が極めて高い作品。一方ではややペシミスティックな内容で、痛快時代劇とまではいかないのですが、本作の評判は高く、数々の映画賞を受賞。海外でも極めて評価の高い作品となりました。
 山田洋次監督二本目の時代劇「隠し剣 鬼の爪」(2004)も同じ庄内が舞台。やはり下級武士・片桐宗蔵を主人公にした物語。かつての奉公人・きえが嫁ぎ先でひどい仕打ちを受けていると知った宗蔵は、相手方へ乗り込み強引にきえを連れ帰ってしまいます。やがてきえは元気を取り戻しますが、宗蔵の悪評が立ち、実家に帰ることに。そんな中、謀反の罪で投獄されていた狭間弥市郎が牢破りを。そして、宗蔵が弥一郎を討つべく派遣されることになります。
 「たそがれ・・・」と類似したシチュエーションであることがやや残念ですが、人物像や視点、思想性など、背景は大きく異なり、新たな魅力を創出しています。どうせなら二本続けてみるのもいいかもしれません。
 北国、貧困、下級武士、というキーワードはどうも時代ドラマになりやすいようです。幕末を舞台にした「壬生義士伝」(2003)(みぶぎしでん)は浅田次郎が原作。実在の人物をモチーフにしているようで、悲劇指向は否めませんが、感動の物語でもあります。
 幕末。新撰組に一人の男が入隊してきます。盛岡南部藩出身の吉村貫一郎は、普段は物腰柔らかな男ですが、剣の実力はかなりのもの。一方では命惜しみをする守銭奴として他の隊士たちから蔑まれることも。が、実は、貧困のために脱藩し、国許に残してきた家族に仕送りをしていたのでした。そんな中、ついに京で戦争が勃発。激しい戦闘に吉村も巻き込まれてゆくことになります ・・・。
 周りに嫌悪されながらも己を貫こうとした武士・吉村の姿を描いた物語。家族のため、義理のため。が、それはまた手前勝手さと紙一重。その間に出来る隙間が悲劇を生んだのです。映画は時に冗漫なほどに人物をじっくりと映し出します。ぜひ、どっしり構えて見たい映画と言えます。
 山本周五郎原作の「雨あがる」(2000)も、国際的に評価の高い作品。監督は、今やヒューマン・ドラマで定評のある小泉堯史。
 剣の腕は一流ながら、優しい性格でつい相手に譲ってしまう三沢伊兵衛。がために仕官が適わず、長年の浪人暮らし。妻・たよと友に旅を続けていました。そんなある時、侍同士の果たし合いに偶然出くわし、仲裁に入る伊兵衛。その様子を感心して見ていた藩主・永井和泉守は、伊兵衛を剣術指南役にしようと考えます。そのため、御前試合を開き、改めて実力を吟味することに。そして当日、順調に相手を倒していった伊兵衛でしたが ・・・。
 人間味たっぷりの主人公・伊兵衛を寺尾聰が好演。実に心地よい映画となりました。しかも人間の泥臭さもほどよく描出。ドラマとしては、非常にバランスに優れた物語ではないでしょうか。

■座頭市撰集

 子母沢寛が生んだアンチ・ヒーロー「座頭市」は、勝新太郎がはまり役となり、全26作が製作されました。座頭市はやくざ者で盲目の按摩。しかも居合いの達人。初期作品では、その目にも留まらぬ早業を見ることができます。本当に抜いたのか?、と疑ってしまうほどの物凄さでした。
 そのシリーズの中でも最大のヒットとなったのが、「座頭市と用心棒」(1970)。 "用心棒" 役はもちろん三船敏郎。ただし、名前はさすがに「三十郎」とはいかず、「佐々大作」となっています。いずれにせよ黒澤明監督の「用心棒」との夢の対決を最大の見所としています。物語は散々に引っ張っておいて、最後にようやく二人の対決。その結末や如何?
 「座頭市」は25作で一旦ストップ。それを勝新太郎自身が復活させたのが「座頭市」(1989)。実に16年ぶりに復活。ダーティ・ヒーローのはずが正義の味方と化していた座頭市ですが、ここでは本来の泥臭さを取り戻した感があります。さすがに往年のシャープな動きとまではいきませんが、壮絶な殺陣はさらに迫力を増しています。ライバル役は緒形拳。
 勝新太郎版「座頭市」は、さらに14年後、北野武監督・主演で再復活。「座頭市」(2003/北野武版)では、 もともとシリーズにあった雑ぱく感を完全に払拭。イメージ映像の分りにくさはありますが、ずいぶんスマートな展開になりました。何と言ってもスピード感抜群の生々しい殺陣は実に新鮮です。映像美、テンポ、緩急モーションなど、様々な手法で見事に物語のアクセントにしています。ただし、コントの多用は好悪が出るかもしれません。いずれにせよ、北野監督のコメディ性とバイオレンス性、そして芸術性が、時代劇と絶妙に融合したと言えるでしょうか。

■異色時代劇

 昔ながらの時代劇が衰退する中、新しいタイプの時代劇が登場してきています。ややもすると、時代劇としては ・・・、と言われそうですが、以下の作品の面白さは折り紙付き。中には脱線気味の作品もありますが、いずれも娯楽色十分の超個性派作品です。
 MTVで有名だった中野裕之初監督作品はなんと時代劇「SF サムライフィクション」(1998)。従来の時代劇の枠に捉われず、自由な発想から生まれたこの作品。斬新さは抜群。ストーリーの面白さにキャラクターの絶対的魅力が見事に絡まり、映画としての出来もかなりのものと言えます。
 将軍家拝領の宝刀を刀番・風祭(布袋寅泰)が強奪。逃亡してしまいます。それを耳にした家老の息子・犬飼平四郎(吹越満)は風祭を追跡。追いつきますが返り討ち。何とか一命を取り留め、隠遁生活を送る浪人・溝口(風間杜夫)とその娘・小春(緒川たまき)に助けられます。溝口は剣の腕は超一流ながら度を越えた平和主義者。溝口が止めるのを聞かず、美しい小春に後ろ髪を引かれながら、平四郎は再び風祭を追おうとするのです。
 物語は、シリアスなシチュエーションの上にコミカルなモチーフを次々と繰り出し、最後まで飽きることのない展開。一方ではそれぞれのキャラクターのデフォルメが著しく、これが、各シーンを瞬発力の高いものにしています。この点は絶妙のバランス感覚と言えますが、新感覚時代劇だけに、好き嫌いも出るかもしれません。
 「幕末純情伝 」(1991)に至ってはシチュエーションもハチャメチャ。つかこうへいの同名小説の映画化ですが、新撰組の美剣士・沖田総司が女だったら、という発想から生まれたコメディ。ところがストーリーは意外にシリアス。組長・土方歳三(杉本哲太)のひそかに想いを寄せる男勝りの剣豪・沖田総司(牧瀬里穂)。新撰組の敵でありながら、総司を女だと知り好きになってしまった坂本竜馬(渡辺謙)。おかしな三角関係が不思議と物語の感動を盛り上げています。
 海外でも人気のチャンバラ映画。「レッド・サン」(1971)はヨーロッパに渡ったチャンバラ映画(フランス・イタリア・スペイン合作)という映画史上貴重な経歴の持ち主。主演は、当時日米欧それぞれを代表するスター、三船敏郎、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロン。アメリカ西部を舞台に、ダイナミックなアクション・ドラマが展開します。
 1870年。日米修好のために日本から使節団がアメリカへ。が、大統領に贈るはずの宝剣が列車強盗団によって奪われてしまいます。これを期日までに取り戻すべく、黒田重兵衛(三船敏郎)が追跡。途中、仲間に裏切られたリンク(チャールズ・ブロンソン)が味方となり、狡猾な首領・ゴーシュ(アラン・ドロン)へと迫るのです。
 この映画、実は、侍が西武劇に、というより、アラン・ドロンが西部劇に、という方に、筆者は違和感を感じてしまいました。時代劇と西部劇は意外にも共通点が多く、しかし欧州近代劇と西部劇は雲泥の違い。先入観が招く不思議さと言えます。
 物語は敵味方が二転三転。が、どうも豪華キャストで押し切ってしまった感も。ともかくも、西部劇としても、時代劇としても、異色作筆頭であることには間違いありません。


■アマゾン検索■
DVD Search
人気順 発売順

DATA

「用心棒」(1961)
[監督] 黒澤明
[出演] 三船敏郎, 仲代達矢

DATA

「椿三十郎」(1962)
[監督] 黒澤明
[出演] 三船敏郎, 加山雄三


 マカロニ・ウエスタンとはイタリア製西部劇のこと。本作はセルジオ・レオーネ監督の傑作。クリント・イーストウッドの出世作ともなった。



監督:ウォルター・ヒル
主演:ブルース・ウィリス


DATA

「どら平太」(2000)
[監督] 市川崑
[原作] 山本周五郎
[出演] 役所広司, 片岡鶴太郎

DATA

「丹下左膳 百万両の壺」(2004)
[監督] 津田豊滋
[出演] 豊川悦司, 和久井映見





DATA

「たそがれ清兵衛」(2002)
[監督] 山田洋次
[原作] 藤沢周平
[出演] 真田広之, 宮沢りえ

DATA

「隠し剣 鬼の爪」(2004)
[監督] 山田洋次
[原作] 藤沢周平
[出演] 永瀬正敏, 松たか子



 シリアス時代劇の伝説的名作。三船敏郎と加藤剛の親子役が話題に。粛とした様式美に満ちた小林正樹監督独特の世界観にも注目したい。


DATA

「壬生義士伝」(2003)
[監督] 滝田洋二郎
[原作] 浅田次郎
[出演] 中井貴一, 佐藤浩市

DATA

「雨あがる」(2000)
[監督] 山田洋次
[原作] 山本周五郎
[出演] 寺尾聰, 宮崎美子



 TVでもおなじみのなつかし時代劇。映画版は監督・五社英雄、主演・丹波哲郎。典型的な痛快娯楽時代劇だ。


 あまりにも有名な「鬼平」。池波正太郎原作の傑作時代劇だ。主演・中村吉右衛門は四代目。最も原作の鬼平のイメージに近いと言われている。


DATA

「座頭市と用心棒」(1970)
[監督] 岡本喜八
[原作] 子母沢寛
[出演] 勝新太郎, 三船敏郎

DATA

「座頭市」(1989)
[監督] 勝新太郎
[原作] 子母沢寛
[出演] 勝新太郎, 緒形拳

DATA

「座頭市」(2003)
[監督] 北野武
[原作] 子母沢寛
[出演] 北野武, 浅野忠信





DATA

「SF サムライフィクション」(1998)
[監督] 中野裕之
[出演] 吹越満, 風間杜夫, 緒川たまき, 布袋寅泰

DATA

「幕末純情伝」(1991)
[監督] 薬師寺光幸
[原作] つかこうへい
[出演] 牧瀬里穂, 渡辺謙

DATA

「レッド・サン」(1971)
[監督] テレンス・ヤング
[出演] チャールズ・ブロンソン, アラン・ドロン, 三船敏郎


www.sasaraan.net

cinema selection

(c) morijoh