Index |
Information |
|||
「ザ・ヒッチコッキアン1」・・・ ヒッチコック・マニア初級篇:最盛期のスリラー ・・・
サスペンスの神様、ヒッチコックの作品を振り返る企画。ヒッチコック・マニアは特に「ヒッチコッキアン」と呼ばれます。今回は初級篇として最もポピュラーな5本を振り返ります。いずれもが1950年代から1960年代初めまでの最盛期約十年の間につくられた傑作。マニアならずとも映画ファン必見の作品ばかりです。
◆「北北西に進路を取れ」(1959)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック"North By Northwest" [脚本] アーネスト・レーマン [撮影] ロバート・バークス [音楽] バーナード・ハーマン [出演] ケーリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント ヒッチコックを形容するスリルとサスペンス。その言葉を最も実感できるのが、「北北西に進路を取れ」です。ヒッチコック最盛期の中でも最も脂の乗り切った時期の作品で、徹底的に娯楽に特化した作品でもあります。そしてロマンスをきちっりと絡めて行くのが見事な点。ヒッチコック作品が幅広い層に受け入れられている一因と言えます。 [STORY] ある時、ロジャーはタウンゼントという見知らぬ男に拉致される。タウンゼントはロジャーをキャプランと呼び、ロジャーは人違いだと気付いて説明するが信用されず、殺されかけたところを命からがら逃げのびる。ほどなく、タウンゼントが国連にいると聞き国連本部へ潜入。が、彼は拉致した人物とは別人だった。しかもその場でタウンゼントは殺され、そばにいたロジャーが容疑者として追われることになってしまう。逃亡するロジャーは、今度はキャプランの行方を追い列車に乗り込むのだったが ・・・。
ある平凡な男がスパイに間違われ、期せずして恋に冒険に活躍するという物語。スリルあふれる展開の一方、巧みにロマンスを織り交ぜているのが心憎いところ。しかしロジャーが恋をした相手は敵方のスパイ。この恋の行方もまた目が離せないところとなります。ヒッチコック作品四作目となったケーリー・グラントは50代半ば。役は青年実業家風。実は展開やシチュエーションには不自然な点も多いのですが、圧倒的な面白さでカバーしてしまっています。ともかくも数あるヒッチコックのサスペンス作品の頂点が本作。派手なオープニングからどんでん返しが続くラストまでの140分間、抜群のストーリーテリングで終始見る者の目をひきつけます。これを観ずしてサスペンスは語れません。 ◆「知りすぎていた男」(1956)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック"The Man Who Knew Too Much" [原案] チャールズ・ベネット、D.B.ウィンダム・ルイス [脚本] ジョン・マイケル・ヘイズ、アンガス・マクフェイル [撮影] ロバート・バークス [音楽] バーナード・ハーマン [出演] ジェームズ・スチュワート, ドリス・デイ 「知りすぎていた男」は、ヒッチコックみずからが戦前に製作した「暗殺者の家」のリメイク。あえて自分の作品をリメイクしただけあって恐るべき完成度の映画となりました。スリルに感動、そしてユーモア、と、ヒッチコック作品随一のバランス感覚で、最もポピュラリティの高い作品と言えます。 [STORY] マッケンナ夫妻は子供と三人で北アフリカへ旅行。が、途中知り合ったベルナールという男が、、「アンブローズ・チャペル」という謎の言葉を残して目の前で殺されてしまう。さらにその直後、子供のハンクが誘拐され、警察には何もしゃべるなと脅迫電話を受ける。そして警察への協力を拒んだマッケンナ夫妻は、自分たちだけで子供を助け出そうと決意。アンブローズ・チャペルを探そうとするのだったが ・・・。
ヒッチコック定番の巻き込まれ型サスペンス。仲の良い家族がスパイに間違われ、ある暗殺事件に関わっていきます。みずから誘拐された子供を助けようとするマッケンナ夫妻。アンブローズ・チャペルとは一体何なのか。やがてそれは、ある要人暗殺計画へと結び付いていきます。その間、夫婦の苦悩と愛情の深さが見事に伝わっています。ジェームズ・スチュワート,とドリス・デイの名演にも注目したいところ。物語をさらに盛り上げたのが、ドリス・デイの歌う「ケ・セラ・セラ」。そしてロイヤル・アルバート・ホールの伝説的なクライマックス・シーン。本作では音楽そのものが最大のキーワード。その美しい調べが、登場人物の緊張感と重なっていく過程が実にスリリング。さらには適度なユーモアも散りばめられ、最も幅広い層で楽しめる映画となっています。 ◆「ダイヤルMを廻せ!」(1954)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック"Dial M For Murder" [原作・脚本] フレデリック・ノット [撮影] ロバート・バークス [音楽] ディミトリ・ティオムキン [出演] レイ・ミランド、グレース・ケリー、ロバート・カミングス ヒッチコック中期の総決算とも言える傑作サスペンス。ヒッチコックの転換点ともいえます。不倫をモチーフに使うことの多いヒッチコック。不倫のみならず、ここまでの作品の多くには、人間の内面的な影を垣間見ることができます。本作は、それを極限のスリルにまで昇華させた一本。全編あふれる静かな緊迫感が見事。ヒッチコックのすさまじい手腕を体感することができます。 [STORY] 元テニス選手のトニーは裕福な家のマーゴと結婚。が、今では夫婦仲は冷め、マーゴは作家マークと不倫。離婚の決意を固めつつあった。それを知ったトニーは妻の殺害を計画。自分が外出中に知り合いのやくざ者スワンを家に忍び込ませる。そして家に電話。ダイヤルMに指をかける。電話に出たマーゴをスワンが襲い、うまくいけば口笛を吹くはずだ。が、聞こえてきたのは、「警察に連絡を」と言うマーゴの声だった ・・・。
妻殺害の完全犯罪を目論んだ夫。しかし忍び込ませた男は逆に殺されてしまいます。正当防衛、のはずが、ハバート警部は鋭敏ゆえに、事件の矛盾に気付きます。犯人はドアから入ったと断定される。しかし鍵を持っていない。ではどうやって入ったのか? そしてスワンのポケットからは浮気相手からマーゴへのラブレターが。スワンは脅迫していたのでは? そしてマーゴがみずから誘い入れて仕組んだ殺人では! 実はすべてトニーの仕組んだ陰謀。妻は逮捕されてしまうのです。すでに舞台で評判を取っていたようで、さすがに脚本のデキは秀逸。素人にもはっきりと分るほど。それがヒッチコックの映像手法と結び付き、見事にはまったと言うべきでしょうか。派手なシーンがまったくないにもかかわらず、終始目が離せない展開。抜群のおもしろさを演出しています。 何と言ってもこの静かな緊迫感は特筆もの。舞台のほとんどはアパートの一室。にもかかわらずまったく単調感はありません。その原因のひとつは会話のおもしろさ。片方の人物が疑問を投げかけ、片方の人物が答える。一体どう答えるのか、次にどんなせりふを発するのか。予測のつかない会話は実にスリル満点。 そしてラスト10分間はあまりにも有名。すべてを目撃してきたはずの観客。が、物語はひた隠しにしてきたたった一点の事実、鍵をめぐる謎をここで明かすことになります。大どんでん返しの結末はこれ以上のないサスペンスの醍醐味を観る者に味わわせることとなります。 ◆「裏窓」(1954)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック"Rear Window" [原作] コーネル・ウールリッチ [脚本] ジョン・マイケル・ヘイズ [撮影] ロバート・バークス [音楽] フランツ・ワックスマン [出演] ジェームズ・スチュワート、グレース・ケリー かつてのヒッチコック作品には、人間内面の暗影描写に及んだり、理不尽さを正義と掛け合わせるようなところがありました。それが完全に払拭され、垢抜けたのは「裏窓」から。非常にスマートで洗練されたつくり。ヒッチコックが日常描写力でも実力者であることを示しました。この作品から、ヒッチコックの最盛期がはじまることになります。 [STORY] カメラマンのジェフは足を骨折し、自宅アパートで寝たきり状態。暇つぶしでしていた裏庭の覗きがいつの間にか楽しみに。そしてある時、裏庭の向かい側のアパートに住む夫婦のうち、奥さんがいつの間にかいなくなっていることに気付く。旦那が殺して捨てた、と、推理したジェフだったが ・・・。
原作はコーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュの別名義)の短編。舞台のほとんどはジェフの部屋。しかしそこから彼が見る世界は、まさに社会の縮図。様々な人生模様が目に飛び込んでくるのです。影絵のようなヒッチコック・ドラマは、その多彩さを如実に物語ります。そして問題の向かいのアパート。観客は、ジェフと同じ目線でその部屋を覗くことになります。そして得る情報も同じ。席から立てないのも同じ状況。ジェフと観客はまさに一体と化し、同じ緊張感を味わうことになります。すでに円熟していたヒッチコックのスリルを生み出す手法の凄まじさを、限られたシチュエーションを逆手に取った本作では、改めて思い知らされることになります。 一方、絶世の美女、グレース・ケリーの美しさをちゃっかり利用しているのも面白いところ。随処にアップを挿入して見る者の緊張感をコントロールしています。ジェフの言うように殺人は本当に行われたのか。疑いつつ危険を冒して、向かいの部屋に侵入するリザの姿には少なからず心が動かされます。何より、本作を支える驚異的なストーリーテリングを、人間観察と共にじっくりと堪能したい作品です。 ◆「サイコ」(1960)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック"Psycho" [原作] ロバート・ブロック [脚本] ジョセフ・ステファノ [撮影] ジョン・L・ラッセル [音楽] バーナード・ハーマン [出演] アンソニー・パーキンス、ジャネット・リー、ヴェラ・マイルズ ヒッチコック作品の中でも最も知名度の高いのが「サイコ」。サイコ・スリラーの金字塔として知られますが、実は、この次の「鳥」と共にヒッチコック映画の中では異端的な存在。本作ではほとんどの作品でベースに敷いているラブストーリーやヒューマニズムを控え、代わりにホラー要素を強調。独特のオカルティシズムを創出しています。 [STORY] ある時、OLのマリオンは、まじめに勤めていた会社の金を横領。町から逃亡する。途中、激しい雨に見舞われ、偶然見つけたベイツ・モーテルに泊まることに。そこは寂れたモーテルで、出てきた主は神経質そうなノーマン。そして声だけで姿の見えない母親。ほどなく、マリオンはノーマンから食事に誘われるのだったが ・・・。
ベイツ・モーテルの謎と恐怖を描いたサイコ・スリラー。マリオンを取り巻く人間関係にも注目したいところ。社長、恋人、妹、そして探偵、と、後半になって存在感を強めていきます。一方では次々と変わる主人公が、本作の異常性を象徴しているとも言えます。そして本作であまりにも有名なのが、マリオンが殺されるシャワー・カーテン越しの殺人シーン。が、当時は規制が厳しく、苦肉の策だったとか。これほど有名なシーンになるとはヒッチコック自身は思っていなかったかもしれません。サイコ・キラーと言えばシャワー。サスペンス映画とホラー映画の中で、後に類似シーンが無数につくられることになります。 本作は1983年にはリチャード・フランクリン監督で続編がつくられました。主演は本作と同じアンソニーパーキンス。1998年には完全リメイクを目指した「サイコ」がガス・ヴァン・サントの手により製作。しかしいずれも賛否別れる評価となっているようです。いずれにせよ、本作をきっかけに、異常心理を扱う作品にサイコという言葉が頻繁に使われるようになります。何かと後世に大きな影響を及ぼした作品と言えます。 |
■アマゾン検索■ ◆同時期の作品◆
ファーリー・グレンジャー
ルース・ローマン ロバート・ウォーカー
テニス選手のガイは電車の中でブルーノという男と出会い、愛する人がいるが妻は離婚を承知しないと話す。が、それを聞いたブルーノは、完全犯罪だといって交換殺人を持ちかける。それは、ブルーノがガイの妻を殺し、ガイがブルーノの父を殺すというものだった。断るガイだったが、その夜、ブルーノはガイの妻を本当に殺してしまう ・・・。交換殺人を迫る男の恐怖を描いたスリラー。
◆
モンゴメリー・クリフト
アン・バクスター カール・マルデン
ある日、マイケル・ローガン神父に、教会で働くケラーが懺悔を行う。生活のためにビレット弁護士を殺して金を奪ったと告白。そして、ケラーが僧衣をまとって犯行に及んだことから、嫌疑はマイケルに向けられ始める。しかしマイケルは真実を話すことができない。神父は、懺悔の内容を誰にも洩らしてはいけないという不文律があったのだ ・・・。告白を受けた神父の苦悩を描く異色サスペンス。
◆
ジョン・フォーサイス
シャーリー・マクレーン
森に横たわるハリーの死体が見つかる。近くに住むジェニファーの夫だと分るが彼女は気にも留めていない様子。そこで、自分が撃ったと思い込んだ狩猟中のワイルス船長は、貧乏画家サムに協力を求め死体を埋めようとする。が、偶然から船長は自分が殺したのではないことを知り、今度は掘り返そうとする。かくして一日、村人たちのハリーをめぐる災難が始まる ・・・。情緒豊かなブラックコメディの快作。
◆
ケーリー・グラント
グレース・ケリー
かつての有名な宝石泥棒キャットことロビーは、今ではリビエラで静かに暮らしていた。が、キャットをまねた宝石盗難事件が続発。疑惑を受けたロビーは、仲間からも白い目で見られるようになる。そこで偽者を暴こうと決意したロビー。偽キャットが目をつけそうな裕福なわがまま娘、フランシーに近付こうとしたのだが ・・・。怪盗キャットの活躍を描いたサスペンス。
◆
ヘンリー・フォンダ
ヴェラ・マイルズ アンソニー・クエイル
ある時、貧しい楽団員マニイは、借金を申し込むために保険会社を訪れる。しかし受付の一人がマニイを見て驚く。以前ここに入った強盗の顔と同じだったのだ。そしてマニイは留置所に入れられてしまう。妻ローズは夫の身の潔白を証明しようと奔走。ようやく証人を見つけるもすでに死亡。やがてローズは、精神的に追い詰められていく ・・・。冤罪の恐怖を描いたサスペンス・ドラマ。
◆
ジェームス・スチュアート
キム・ノヴァク
療養中の刑事スコティは、旧友から妻マデリンの尾行を依頼される。妻が知るはずのない曾祖母の霊にとり憑かれていると言う。尾行しているうちマデリンは海へ投身。助けたスコティだが互いに惹かれあってしまう。ある時、マデリンは今度は塔に上り飛び降り自殺をしてしまう。傍にいたスコティは極度の高所恐怖症で動けなかったのだ ・・・。オカルト風味たっぷりの傑作ミステリー。
◆
ティッピ・ヘドレン
ロッド・テイラー
ある小さな港町を訪れたメラニーは、突然一羽のかもめに襲われけがを負ってしまう。以来、鳥は次々と押寄せ、メラニーが知り合いの弁護士ブレナーの家を尋ねた時には、鳥の大群が煙突から侵入してくる。一方では学校の子供たちもとりは襲い掛かっていた。鳥が人間を襲う現象は次第に激化。ついに死者が出てしまう ・・・。ヒッチコック唯一の不条理パニック映画。
|
|||
www.sasaraan.net |
cinema selection |
(c) morijoh |