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「トーキー創成期の名画」・・・ 懐かしのクラシック映画にふれてみよう ・・・
世にサイレント映画(無声映画)しかない1920年代。その後半にフィルムに音を入れる技術が確立。トーキー映画(有声映画)はまたたく間に映画界を席捲。1930年代に入ると、ハリウッドの新作はほとんどがトーキーとなりました。ここでは、そんなトーキー創成期の名画の中、個人的にお気に入りのものを取上げてみました。
◆いまだ衰えを知らぬ人間群像劇の名作
[監督] エドモンド・グールディング「グランド・ホテル」(1932年/アメリカ) [原作] ヴィッキ・バウム [出演] グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード [物語] ベルリン。余命いくばくもないクリンゲラインは、最初で最後の贅沢を、と、全財産をもってグランド・ホテルに宿泊。ホテルには、偶然、クリンゲランの会社の非情な社長プレイジングも泊まっていた。プレイジングは経営に行き詰まり、他社との提携交渉に来ていたのだ。 そのプレイジングの許に若く美しい速記者フレムヒェンが訪れる。そこに声をかけたのはガイゲルン男爵。人好きのする男爵だったが、内実は借金だらけ。その返済のためホテル荒らしを画策。狙いはバレリーナ・グルシンスカヤの部屋。グルシンスカヤはみずからの衰えを悟り、客が集まらないことを嘆いていた。その夜、公演に出かけた彼女の部屋に忍び込んだ男爵。が、グルシンスカヤが途中で帰ってきてしまい ・・・。 様々な背景を持った人間が一つの場所で繰り広げるドラマ、いわゆる「グランドホテル形式」とは本作が語源。いまだ舞台での上演が続けられており、時代を超えた名作であることは疑う余地はありません。本作はそのお手本。舞台となるのはベルリンの高級ホテル。登場人物を一気に映し出していく雑然とも思える冒頭。が、二日の間、彼らは徐々に係わり合い、様々なドラマを生みながら一つの結末へと昇華されていきます。 余命少ない労働者階級のクリンゲライン。その社長で非情な男プレイジング。クリンゲラインに同情する奔放な速記者フレムヒェンと借金まみれのガイゲルン男爵。そして人気の低迷に悩む往年のバレリーナ・グルシンスカヤ。彼らの夢と絶望が交錯しながら、物語は悲劇へと展開していくのです。 グランド・ホテルとは社会の縮図。人生はうまくいかないもの。登場人物たちがもがく姿と望みを見出す姿が実にリアル。何より、人間が装う虚飾の中に、真の姿を浮き立たせているのがわかります。最後、クリンゲラインが言います。グランド・ホテルは世界中にある、と。「人が訪れては去っていく ... 何事もなかったかのように」 人生と社会の普遍性を象徴する見事な映画と言えます。 ◆フランス発痛快コメディ・ドラマの快作
[監督・脚本] ルネ・クレール「自由を我等に」(1931年/フランス/2006年10月時点で未DVD化) [出演] アンリ・マルシャン、レイモン・コルディ、ローラ・フランス [物語] ある監獄。毎日の強制労働に嫌気がさしたルイとエミールは自由を求めて脱獄。しかし途中で見つかってしまいエミールは捕縛。ルイだけが脱獄することに。その後ルイは露天で蓄音器とレコードを売り始め、これが大成功。瞬く間に大工場を持つ会社に成長する。 一方、刑期を終えて出所したエミールは、流浪の途中、ある美しい娘に一目ぼれ。尾けて行くとそこはルイの工場。偶然にも就職試験の真っ最中で、そのまま工場に就職してしまう。しかしそこは監獄同様自由のない工場だった。 すぐさま飽きて仕事そっちのけで娘を探すエミール。途中、偶然出くわしたのが、すっかり町の名士となったルイ。たちまち昔の友情が蘇り、ルイは人間らしさを取り戻す。が、監獄にいた他の仲間たちもルイに気付き、脅迫しようと押しかけてくる ・・・。 この時期、フランス映画も多くの名作を世に出しています。本作はその代表。「古き良きフランス映画」は、ここから始まると言えるかもしれません。内容は、二人の監獄仲間が起こす騒動を人情味と風刺たっぷりに描いたコメディ。展開やカット、登場人物のやドタバタ・コメディぶりは、実はチャップリン映画に似たところがあります。当時のチャップリンの影響力がうかがい知れます。が、一方、のちにつくられたチャップリンの「モダン・タイムス」が、逆に本作の影響を受けたと言われるのはおもしろいところです。個人的には、気にするほどのことでは ・・・、と思うのですが、当時は訴訟問題にまで発展しています。 ともかくも、非人間的な機械文明への風刺、という点で本作は捉えられることが多いのですが、実際はもっと気楽な作品だと思います。機械が人間を自由にする、という結末がその象徴的なシーン。何より、「歌って飲んで恋をしよう、自由を我等に」、と歌い上げ、自由こそ人生たる本質と、本作は陽気に語りかけてきます。 実は本作、展開自体はかなり大雑把。まあ、それがかえってスピード感を生む一因ともなっています。そして少ないせりふと派手な動きもこの時代ならでは。楽しい音楽も特筆もの。バランスに優れたエンターテイメント映画となっています。 ◆やっぱりチャップリンが基本かな
[監督・脚本] チャールズ・チャップリン「街の灯」(1931/アメリカ) [出演] チャールズ・チャップリン、ヴァージニア・チェリル [物語] ルンペンのチャーリーはある時、盲目の花売り娘と出会い恋に落ちる。娘はなぜかチャーリーを金持ちの紳士と勘違い。チャーリーは紳士と偽りつつ、金を稼いで娘と付き合おうと一念発起。が、やることなすことうまくいかず、結局もとのルンペンのまま。 そんな時、金持ちの酔っ払いと遭遇。二人はすっかり意気投合して楽しい夜を過ごす。挙句に金持ちはチャーリーに大金をプレゼント。喜び勇んでチャーリーは娘に金を届ける。が、酔いがさめた金持ちはチャーリーを覚えていなかった。そしてチャーリーは泥棒として捕まってしまう ・・・。 「街の灯」はチャップリンの作品の中でも大変な感動作として知られますが、実はトーキーではありません。音楽付きせりふ無しの映画として製作されました。当時は、ハリウッドのほとんどがトーキー映画。が、チャップリンは、映画は世界共通の文化、世界中の人に見てほしい、と、あえてせりふ無しで挑んだということです。そして驚くべきことに、この次の作品「モダン・タイムス」(1936)もまた、音楽つきせりふ無しの形式で製作。いずれも名作として絶大な支持を受けたのですから、チャップリンの天才ぶりがよくわかります。 そして本作のラストシーンは映画史上最も感動的なシーンの一つ。出所したチャップリンは花売り娘と再会。花売り娘はついに真実を悟るのです。それは、言葉では決して伝えられない、言葉があってはいけないとさえ思える美しいシーン。本作は言葉のない世界を活かし切った究極の映画であり、サイレント映画の頂点、と、筆者は呼びたいと思います。 一方、そんな感動的なストーリーの一方で、本作は旧態のドタバタ喜劇も踏襲。サイレントとトーキーの過渡期として、象徴的な作品ともなりました。 ◆モンスター・ホラーの草分け
[監督] ジェームズ・ホエール「フランケンシュタイン」(1931年/アメリカ) [原作] メアリー・シェリー [出演] ボリス・カーロフ、コリン・クライブ [物語] 野心的な科学者ヘンリー・フランケンシュタインは、死体を集め、新たな生命を創造しようと実験場にこもる。その間、4ヶ月間も顔を見せないヘンリーを心配した婚約者エリザベスは友人ビクターに相談。ヘンリーの師フェルドマン博士とともに実験場へと向かう。が、そこで彼らは、怪物に生命が吹き込まれる瞬間を目撃する。 しかし怪物は凶暴になり助手のフリッツを殺害。正気を取り戻したヘンリーは、怪物を薬で眠らせる。が、怪物は、自分を解剖実験しようとしたフェルドマン博士を殺害し脱走してしまう。助手が手配した怪物の脳は、実は冷酷な殺人鬼のものだった ・・・。 今度はガラッと変わってホラー映画。原作はメアリー・シェリーの怪奇小説。SF小説の先駆とも言われます。吸血鬼ドラキュラとともに一世を風靡しました。この後度重なるリメイクや続編、アレンジ版などが登場し、世界的に浸透しました。原作はヒューマニズムを帯びていますが、映画ではモンスターへの恐怖に主軸を置いています。 中身は極めてオーソドックス。第一部はフランケンシュタインの狂気とモンスターの誕生。第二部はヘンリーの結婚式とモンスターの徘徊を対比的に描写。そして第三部はモンスターがまねく惨劇とヘンリーとの対決。起承転結の美しさを実感できるのも、クラシック映画のいいところと言えます。 もうひとつ有名なのが、フランケンシュタインという名前。実は怪物の名前ではなく、怪物を造った博士の名前。しかもかなり二枚目な点は皮肉。いつしかフランケン = 怪物となっていくわけですが、筆者の年代ではまんが「怪物くん」のフランケンのイメージが強かったりします。 それはともかく、もはや伝説的なモンスター映画と言っていい本作。1935年には続編「フランケンシュタインの花嫁」が製作。こちらでは、より人間味を帯びたフランケンシュタインを描出。悲哀のこもったストーリーとなっています。 ◆日本初の字幕入りトーキー
[監督] ジョゼフ・フォン・スタンバーグ「モロッコ」(1930/アメリカ) [原作] ベノ・ヴィグニー [出演] ゲーリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ [物語] モロッコ。フランス軍外人部隊の兵隊トム・ブラウンは名うてのプレイボーイ。大胆にも士官の妻を情婦にするほど。ある時キャバレーで、歌手のエイミーと出会う。が、エイミーもまた男を手玉に取るしたたかな女。二人は互いにそれと知りつつも魅かれ合ってゆく。 そんな二人の姿に嫉妬したトムの情婦は無頼たちを雇ってエイミーを襲わせる。トムが救って事なきを得るが、この騒動が元で、危険な任務へと追いやられてしまう。一方エイミーは富豪のラベシュールから求婚。トムへの思慕を残しながらこれを受ける。が、そんな時、トムが負傷したとの知らせが入る ・・・。 モロッコはしばらくフランス領だった時代がありました。一時ナチス・ドイツが介入。その政治的に複雑な背景がドラマを呼び、一方では異国情緒に満ちた雰囲気が好まれました。つまりはドル箱的なシチュエーションであり、本作と「カサブランカ」はその代表作。ヒッチコックの名作サスペンス「知りすぎた男」も、前半はモロッコのマラケシュを舞台にしています。 日本映画にも、本作に脚光を浴びせた意外な作品があります。名探偵金田一耕助が活躍する「悪魔の手毬唄」(1977)がそれで、本作が登場したことで弁士が失業する、という点を犯罪の背景に採用しています。その中でも紹介されたラストシーンはあまりにも有名。外人部隊という特殊な世界にもスポットを当てており、これら異世界観のすべてがドラマティックな雰囲気を盛り上げていると言えます。 悪ぶる主人公、危険な恋、ロマンスとサスペンス、そして悲しい別れ。その後ラブストーリーのヒットパターンを、本作では早くも垣間見ることができます。映画ファンなら一度は見ておきたい作品ではないでしょうか。 |
■アマゾン検索■ (スウェーデン/1905〜1990)
【主な出演作品】 「ニノチカ」(1939) 「征服」(1937) 「椿姫」(1937) 「アンナ・カレニナ」(1935) 「クリスチナ女王」(1933) 「グランド・ホテル」(1932) 「お気に召す儘」(1932) 「マタ・ハリ」(1931) 「ロマンス」(1930) 「アンナ・クリスティ」(1930) 「アンナ・カレニナ」(1927) 「肉体と悪魔」(1926) (フランス/1898〜1981)
【主な監督作品】 「リラの門」(1957) 「夜の騎士道」(1955) 「夜ごとの美女」(1952) 「悪魔の美しさ 」(1949) 「沈黙は金」(1946) 「そして誰もいなくなった」(1945) 「幽霊西へ行く」(1935) 「最後の億萬長者」(1934) 「巴里祭」(1932) 「自由を我等に」(1931) 「巴里の屋根の下」(1930) (イギリス/1889〜1977)
【主な監督作品】 「ニューヨークの王様」(1957) 「ライムライト」(1952) 「殺人狂時代」(1947) 「独裁者」(1940) 「モダン・タイムス」(1936) 「街の灯」(1931) 「黄金狂時代」(1925) 「キッド」(1921) (イギリス/1889〜1957)
【主な監督作品】 「ショウ・ボート」(1936) 「フランケンシュタインの花嫁」(1935) 「透明人間」(1933) 「魔の家」(1932) 「フランケンシュタイン」(1931) (イギリス/1887〜1969)
【主な出演作品】 「殺人者はライフルを持っている!」(1968) 「古城の亡霊」(1963) 「忍者と悪女」(1963) 「ブラック・サバス」(1963) 「征服されざる人々」(1947) 「虹を掴む男」(1947) 「恐怖の精神病院」(1946) 「吸血鬼ボボラカ」(1945) 「死体を売る男」(1945) 「フランケンシュタインの館」(1944) 「恐怖のロンドン塔」(1939) 「フランケンシュタインの復活」(1939) 「歩く死骸」(1936) 「大鴉」(1935) 「フランケンシュタインの花嫁」(1935) 「黒猫」(1934) 「暗黒街の顔役」(1932) 「ミイラ再生」(1932) 「魔の家」(1932) 「フランケンシュタイン」(1931) (オーストリア/1894〜1969)
【主な監督作品】 「罪と罰」(1935) 「スペイン狂想曲」(1934) 「上海特急」(1932) 「間諜X27」(1931) 「モロッコ 」(1930) 「嘆きの天使」(1930) (アメリカ/1901〜1961)
【主な出演作品】 「昼下りの情事」(1957) 「ヴェラクルス」(1954) 「真昼の決闘」(1952) 「誰が為に鐘は鳴る」(1943) 「打撃王」(1942) 「ヨーク軍曹」(1941) 「群衆」(1941) 「西部の男」(1940) 「ボー・ジェスト」(1939) 「平原児」(1936) 「オペラハット」(1936) 「生活の設計」(1933) 「武器よさらば」(1932) 「市街」(1931) 「モロッコ」(1930) |
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