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「透明な映画2」・・・ 再び心洗われる日本映画を集めてみました ・・・
「透明な映画」の第2弾。かつての少年少女映画の代名詞と言えば大林信彦監督。「転校生」などの尾道三部作はいまだに新たなファンを獲得し続けています。ここでは大林監督作品の中から、筆者お気に入りの少女映画を取り上げたいと思います。そのほかにも、市川準監督など、近年のピュアな日本映画を代表する作品をいくつか振り返ってみます。
●「時をかける少女」(1983)
[監督] 大林宣彦[原作] 筒井康隆 [脚本] 剣持亘 [出演] 原田知世, 尾美としのり, 高柳良一 [物語] ある土曜日の放課後、芳山和子(原田知世)は、清掃中に誰もいないはずの実験室に気配を感じる。そして入ってみるがラベンダーの香りと共に白い煙に包まれ気を失ってしまう。ほどなくして同じクラスの吾郎(尾美としのり)と深町(高柳良一)に発見され保健室に運ばれるが、再び実験室を調べに行くと、何の痕跡も残されていなかった。 やがて月曜。夜大きな地震が起こり、幼なじみの吾郎の家が火事に。心配して見に行くがぼやで安心する。が、次の日、和子が学校へ行くと授業の内容が昨日と同じ。火曜だと思っていた今日が月曜であると悟る。不安な和子は近所に住む深町に相談。深町はデジャヴだと言って半信半疑。しかしその夜、和子の予言通りに地震が。深町は和子の話を信じはじめるのだったが ・・・。 筒井康隆原作のSFジュブナイル。大林監督得意の切り貼りのようなカットや学生役の俳優たちのつたない演技、と、まあ、決して巧いとは言えないつくりなのですが、何度見ても感動してしまう不思議な映画。松任谷正隆の叙情色あふれる美しい音楽も印象的でした。結局、技術が人の感動に与える影響など大したものではない、そんなことを強く感じさせる作品でもあります。 内容は、物語の主人公が、ある不思議な体験をきっかけにタイムリープとテレポーテーションの力を身につけてしまい、苦悩するというもの。SFにありがちな、ミステリーやアクションに傾倒せず、主人公の心理と主人公をめぐる人間ドラマにしっかりと軸を置いているのが分ります。 本作はまた「尾道三部作」の中の一本。尾道の美しい背景を中心とした郷愁をそそるシチュエーションも十分に堪能できます。そして終盤、最も感動を呼ぶシーン、時間の狭間に迷い込んだ和子がついに真実を悟るくだりは特に注目したいところ。キスシーンすらないラブシーンですが、どんな名作にも劣らないほどの名シーンに仕上がっています。 やはりこのストーリーは秀逸です。タイムトリップものの代表作ではないでしょうか。しかも哀しいまでの人間味をきっちりと加味し、さらにそれらを多感な少女の心情に結びつける繊細さが見事なところ。それが見る者の心の琴線にしっかりと触れてくるわけです。叙情SFの傑作と言えます。 ●「ふたり」(1991)
[監督] 大林宣彦[原作] 赤川次郎 [脚本] 桂千穂 [出演] 石田ひかり, 中嶋朋子、岸辺一徳、富司純子 [物語] 中学生の時、実加(石田ひかり)は優等生の姉・千津子(中嶋朋子)を不慮の事故で亡くしてしまう。この事故が原因で、千津子に目をかけていた母(富司純子)はノイローゼに。常に姉と比較され劣等生として見られていた実加だったが、以来、何とか姉の溝を埋めようと必死になる。が、いつも空回り。 ある夜、ピアノの練習に通う実加は、途中で変質者に襲われのしかかられてしまう。が、そこに助けに現れた少女が。それは何と姉の千津子だった。以来、美香がピンチになると現れてアドバイスをする千津子。やがて実加は、少しづつ自信をつけるようになっていく ・・・。 赤川次郎原作の映画化。「新尾道三部作」と呼ばれる一本でもあります。叙情色の強い尾道の背景を巧みに利用して映像日を演出しているのがわかります。内容は、夢見がちな一人の少女に軸を置きつつ、その周辺で起こる様々な出来事をオムニバス風に綴っていったもの。少女自身が体験する恋、クラスメイトの一家心中、父親の浮気など。コミカルさを出しながらも、時に感動を誘うエピソードもあり、思わず涙してしまうシーンも。 そして物語の最大のポイントは、劣等生の妹に前に現れる優等生だった姉の幽霊。姉の幽霊とそれをすんなり受け入れる妹、というちょっとおかしなシチュエーションなのですが、テーマ自体は非常にしっかりとしたもの。鈍いようで実は感受性の強い妹・実加。「死んだのが自分だったら良かった」、とつぶやく姿があまりに切なく目に映ります。 一方、時にピンチを迎える主人公は、姉の幽霊に助けられながらもひとつひとつ乗り越えていきます。さらに、今まで見えなかった姉の真の姿や家庭の事情が見えるようにもなっていくのです。そうして少しづつ成長し、自身を付けていく少女。しかしいつしか姉に頼っている自分にも気付くこととなります。 終盤では、この姉・千津子が、夢を語る妹に対して、「わたしには過去だけ」とつぶやくのもまた何ともいえない切なさ。いい大人が幽霊に感情移入してしまうのですから不思議な名作と呼べるでしょう。個人的にはそれまでの大林監督の青春映画の総決算的な印象。大林カラーがもっとも発揮された作品でもあります。 ●「はるか、ノスタルジィ」(1992)
[監督・脚本] 大林宣彦[原作] 山中恒 [出演] 石田ひかり, 勝野洋, 松田洋治 [物語] 人気恋愛作家・綾瀬慎介(勝野洋)は、親友の挿絵画家の死をきっかけに小樽の少年時代を想い出す。そして数十年ぶりに帰郷。そこで、自分のファンだと言う少女・はるか(石田ひかり)と出逢う。以来、はるかに振り回されるように毎日のように出かける二人。 そんなある時、慎介の前に佐藤弘と名乗る古風な学生服姿の少年(松田洋治)が現れる。が、それは綾瀬の本名だった。彼は一体何者なのか? 少年はなぜか執拗に慎介に過去を思い出すよう迫る。そして慎介の頭には、みずから閉じ込めていた忌わしい過去が徐々によみがえる。飲んでばかりで一行も書けない作家の父。そんな父の面倒を見て生活に疲れ、やつれ果てた母の姿。 そして娼館に住む遥子(石田ひかり=二役)という少女を愛したこと。遥子もまた慎介を愛したが、あることがきっかけで、弘は遥子に酷い仕打ちをして捨ててしまう。しかし弘は、慎介に、当時気付かなかった驚くべき真実を悟らせる ・・・。 山中恒が映画のために書き下ろし。ある作家が、閉じ込めていた少年時代の嫌な記憶を呼び覚ましつつ、真の自分の姿を見い出していくというもの。自分を失い続けた作家・慎介と不思議な少女・はるかの運命的なラブストーリーでもあります。物語では、少年時代の自分自身が出現し、作家は過去を再び体験することになります。貧しく荒んだ家庭。そして愛する女性・遥子。ちょっとした誤解からその遥子にひどい言葉を投げかけ、少年時代の作家は町をあとにしていたのでした。が、そこには少年の知らない真実が潜んでいたのです。 物語のもう一方の主人公は遥子そっくりの少女・はるか。物語は、やがてこの少女一人に収束していきます。時を超えた運命のファンタジーと呼べるでしょうか。はるかの謎は終盤になって明らかとなります。現実と過去、さらには未来までをも描く、はるかと慎介の壮大な物語を、小樽の美しい背景で描き切っていると言えます。 本作の映像は大林作品の中でも特に秀逸。現在の美しい小樽の風景に加えて、古い小樽の歓楽街を完璧に再現。見る者の郷愁を巧みに誘う映像をつくりあげています。ともかくも悲劇性を巧みに絡ませたファンタスティックな物語。非現実的なシチュエーションに抵抗感さえ覚えなければ、実に感慨深い作品として捉えることができるでしょうか。このリアリズムを超越した物語は大林作品にはよく見られること。もはや大林監督のお家芸とも呼べるかもしれません。 ●「はつ恋」(2000)
[監督] 篠原哲雄[脚本] 長澤雅彦 [出演] 田中麗奈, 真田広之, 原田美枝子 [物語] ある日、聡夏(田中麗奈)は、入院中の母・志津枝(原田美枝子)の想い出のオルゴールを開けてしまう。そして中から一通の手紙と古い写真を見つけ出す。それは、母が学生時代、初恋の相手に宛てた別れのラブレターだった。 聡夏は母が喜ぶと思い、相手の男・藤木(真田広之)を探し出して再会させようと思いつく。が、ようやく探し当てた藤木は、その日暮らしの落ちぶれ果てた中年男だった。 幻滅する聡夏だったが、それでも再会させようと、嫌がる藤木を無理やりジムやエステに連れまわし、こぎれいにさせようと奔走をはじめる。一方の藤木は迷惑顔。しかし昔の思い出がよみがえるにつれ生気を取り戻していく。そんな中、聡夏の父・泰仁は、医師から、志津枝の余命が幾ばくもないことを告げられる ・・・。 コミカルでちょっと切ない、そしてちょっとハートウォーミングな人間ドラマ。病気の母のために初恋の相手と再会させようという少女の暴走を瑞々しいタッチで描いています。 物語の主人公・聡夏は入院中の母を喜ばせようと初恋の相手・藤木を探し出します。ところが相手は落ちぶれた中年男。以来つきまとってまっとうな姿に改造しようと必死。が、やがて聡夏は、父と母の深い絆、さらに藤木の悲しい過去に触れ、人の本当の幸せがどこにあるのかを悟ることになるのです。 本作は、そんな少女のちょっとした成長がもたらす美しい物語と呼べるでしょうか。母の死という悲劇的なモチーフを含んではいますが、コミカルさもドラマ性もほどよいバランスで、むしろ見終わって爽快感に浸れる心地良さがあります。何より、個々の登場人物の中で、徐々に彼らの想いが昇華されていく過程が実に繊細に描写されているのではないでしょうか。 度の過ぎないコミカルさと伝えすぎない感動の浅さ。見る側が一歩踏み込んでしか得られない感動にはぜひ到達したいところ。ただし、終盤の付け足しの連続のような構成は玉に瑕。いずれにしても、こういう映画はちょっと構え気味にしてじっくりと鑑賞したいところです。 ●「東京マリーゴールド」(2001)
[監督・脚色] 市川準[原作] 林真理子 [出演] 田中麗奈, 小澤征悦、樹木希林 [物語] 短大を卒業して小さな輸入車販売会社に就職したエリコ。しかし恋人とは別れたばかりで寂しさがつのる毎日。そんなある日、友達に誘われて合コンに参加する。そこでタムラという男と出会い、帰り際、何気なく携帯番号を交換し合う。それからしばらくして、ふとタムラのことを思い出したエリコは電話をしてみることに。そして二人は再会の約束を交わす。 そこでタムラには、一年アメリカに留学している彼女がいることをエリコに明かす。が、それでもエリコはタムラに言う。「一年間わたしと付き合って」、と。いつもと同じ。どうせ一年続かない。そうして気軽に付き合い始めたエリコ。二人だけの部屋を借り、時に甘いひと時を過ごす。そして間もなく一年。しかしエリコの中で、タムラの存在は消しようのない大きさになっていた ・・・。 林真理子原作のラブストーリー。現代女性エリコを主人公にしながらも、最後にはタムラの秘密を通して、二人の真の姿を浮き彫りにしています。それは愛によって傷つき、愛によって再生する人間の姿。男女間のあまりにも脆い心の綾が、静かな感動を誘います。 恋人がいると知りつつ一年限りの付き合いを始めるエリコとタムラ。エリコにとっては寂しさを紛らわすだけの軽い付き合い。いつもと同じように。が、エリコは真の恋に触れてしまうのです。物語は、エリコの平凡な日常を淡々と映し出します。ストーリー一辺倒ではないつくりが不思議な心地良さを見る者にもたらします。そして、そんな日常に埋もれ過ごすエリコが真の恋に一瞬光り輝き、しかし別れの時が迫るにつれ、どうしようもなくなっていく様に、徐々に感動を深めていくのです。 が、やがて時が経ち別れの時。一時は自分を見失うエリコ。しかし偶然からエリコはタムラのついた重大な嘘に気付くのです。たった一つの、それはあまりにも哀しい嘘。最後はそれを知ったエリコの吹っ切れた姿。このラストシーンはあまりにも見事。ややわかりにくさはありますが、瑞々しさや繊細さ、そして希望にあふれた実に美しいシーンではなかったでしょうか。 ●「eiko/エイコ」(2003)
[監督] 加門幾生[脚本] 三澤慶子、加門幾生 [出演] 麻生久美子, 沢田研二, 阿部サダヲ [物語] エイコ(麻生久美子)は一人暮らしのOL。超お人好しのエイコは、キャッチセールスにもひっかかりまくり、それがために借金までしている始末だった。ある日、給料日のはずが支払いは一日待つよう社長に言われ真に受けたエイコ。ところが翌朝会社に行くともぬけの殻になっていた。 アパートには給料日を知る借金取りが張り込んでいて中に入れず。困った挙句社長のマンションを尋ねることに。が、出てきたのは見知らぬ老人・江の本(沢田研二)。エイコを見ると、加代、と呼んで家に招き入れる。相手がボケ老人だと気付いたエイコ。勧められるがまま江の本の家に泊まり、江の本の世話を始めるのだったが ・・・。 超がつくお人好しのOLの姿を綴ったコミカルなドラマ。やや取り留めのない展開なのですが、エイコの魅力に注目を集めて押し切ってしまっています。序盤から、皆にだまされ、それでも人を信じ、明るく生きるエイコ。そんなキュートなエイコの姿にどっぷりとはまってしまいます。 エイコはお人好しがゆえにキャッチセールスに引っ掛かり借金まみれ。借金取りには負われ、恋人は麻薬で逮捕、会社では社長が夜逃げ、と、踏んだりけったり。そんなある時ボケ老人の江の本と知り合い居候することに。新しい恋人もでき新たなスタート、のはずが二人ともとんでもない詐欺師だったのです。 お人好しぶりが仇になるという何とも痛々しい展開。しかしエイコのあまりにも純粋な姿は、まわりの人間を少しづつ変えていきます。ところがエイコは逆に人間不信。さもありなん、とうなづきつつ、いつの間にかエイコに幸せになってほしいと思っているから不思議です。 とにかくも一人の女性の挫折と再生の物語、と言えるでしょうか。終盤の息切れした展開は残念ですが、最後にはちょっと幸せな気分になれる作品ではあります。 |
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【主な監督作品】 「22才の別れ」(2006) 「理由」(2004) 「なごり雪」(2002) 「あの、夏の日〜とんでろじいちゃん〜」(1999) 「SADA」(1998) 「風の歌が聴きたい」(1998) 「あした」(1995) 「女ざかり」(1994) 「水の旅人 -侍KIDS-」(1993) 「はるか、ノスタルジィ」(1992) 「彼女が結婚しない理由」(1992) 「青春デンデケデケデケ」(1992) 「ふたり」(1991) 「異人たちとの夏」(1988) 「漂流教室」(1987) 「彼のオートバイ、彼女の島」(1986) 「野ゆき山ゆき海べゆき」(1986) 「さびしんぼう」(1985) 「廃市」(1984) 「天国にいちばん近い島」(1984) 「時をかける少女」(1983) 「転校生」(1982) (日本/1967〜)
【主な出演作品】 「紙屋悦子の青春」(2006) 「大停電の夜に」(2005) 「サヨナラ COLOR」(2004) 「落下する夕方」(1998) 「あした」(1995) 「満月」(1991) 「彼女が水着にきがえたら」(1989) 「黒いドレスの女」(1987) 「私をスキーに連れてって」(1987) 「早春物語」(1985) 「愛情物語」(1984) 「天国にいちばん近い島」(1984) 「時をかける少女」(1983) (日本/1972〜)
【主な出演作品】 「竜二 -Forever-」(2002) 「アドレナリン・ドライブ」(1999) 「愛は波の彼方に」(1999) 「ベル・エポック」(1998) 「はるか、ノスタルジィ」(1992) 「彼女が結婚しない理由」(1992) 「ふたり」(1991) 「あいつ」(1991) (日本/1971〜)
【主な出演作品】 「ベロニカは死ぬことにした」(2005) 「MPD-PSYCHO/FAKE MOVE REMIX EDITION」(2002) 「がんばっていきまっしょい」(1998) 「ふたり」(1991) 「あさってDANCE」(1991) 「つぐみ」(1990) 「四月怪談」(1988) 「永遠の1/2」(1987) 「時計 Adiue I 'Hiver」(1986) 「北の国から」(TV/1981-2002) (日本/1962〜)
【主な監督作品】 「地下鉄(メトロ)に乗って」(2006) 「female」(2005) 「天国の本屋/恋火」(2004) 「深呼吸の必要」(2004) 「オー・ド・ヴィ」(2002) 「命」(2002) 「木曜組曲」(2001) 「死者の学園祭」(2000) 「はつ恋」(2000) 「洗濯機は俺にまかせろ」(1999) 「きみのためにできること」(1999) 「月とキャベツ」(1996) 「草の上の仕事」(1993) (日本/1980〜)
【主な出演作品】 「ゲゲゲの鬼太郎」(2007) 「暗いところで待ち合わせ」(2006) 「幻遊伝」(2006) 「容疑者 室井慎次」(2005) 「きょうのできごと」(2003) 「ドラッグストア・ガール」(2003) 「東京マリーゴールド」(2001) 「玩具修理者」(2001) 「クリックシネマ 好き」(2000) 「はつ恋 」(2000) 「ekiden」(2000) 「GTO」(1999) 「がんばっていきまっしょい」(1998) (日本/1948〜)
【主な監督作品】 「あおげば尊し」(2005) 「トニー滝谷」(2004) 「竜馬の妻とその夫と愛人」(2002) 「東京マリーゴールド」(2001) 「大阪物語」(1999) 「たどんとちくわ」(1998) 「東京夜曲」(1997) 「トキワ荘の青春」(1996) 「東京兄妹」(1995) 「病院で死ぬということ」(1993) 「つぐみ」(1990) 「BU・SU」(1987) |
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