映画鑑賞記

エクソシスト
The Exorcist(1973/アメリカ/121分)
[監督] ウィリアム・フリードキン
[原作・脚本] ウィリアム・ピーター・ブラッティ
[撮影] オーエン・ロイズマン / ビリー・ウィリアムズ
[音楽] マイク・オールドフィールド / ジャック・ニッチェ

[出演]
エレン・バースティン、マックス・フォン・シドー、 リー・J・コッブ、キティ・ウィン、ジャック・マクガウラン、ジェーソン・ミラー、 リンダ・ブレア、(声)マーセデス・マッケンブリッジ

[評価] ★★★★☆
 撮影のため娘を伴い町を訪れていた女優クリス。が、ほどなく娘リーガンの奇行と共に怪現象が起こり始める。やがてその形相は醜く変化し野太い声で人を罵倒。ついには殺人事件を起こしてしまう。万策尽きたクリスは、最後の望みを悪魔祓いに賭けるのだが ・・・。少女に取り憑いた悪魔と神父たちの壮絶な戦いを描いたオカルト・ホラー。恐怖シーンのみならず、ポイントを絞りきったつくりが秀逸。今や古典となりつつあるオカルト映画の名作。
ストーリー
 イラク北部。イエズス会メリン神父が遺跡の発掘中、小さな悪魔の偶像を発見。これまで数多くの悪魔祓いをしてきた神父は、新たな悪魔の出現を予感し戦慄します。
 ワシントン近郊、ジョージタウン。女優クリスは映画の撮影のため12歳の娘・リーガンと滞在中。が、住まいとしていた屋敷の屋根裏には毎夜物音が。ネズミかと思い使用人に調べさせますがネズミはまったく見つかりません。同じ頃、精神科医でもあるデミアン・カラス神父は、病気中で一人暮らしの母を訪問。良い病院に入れることができず悩んでいたところ、母が亡くなってしまいます。
 一方、リーガンには奇行が目立つようになっていきます。ある時は誕生パーティで公然と失禁し、ある時はベッドの上で狂ったように激しく体をゆする姿を目にします。クリスは病院へ連れて行き、医師からは脳の病気と言われ治療を受けますが様子はひどくなるばかり。やがて、子供とは思えない声で、他の人間を罵倒するようになります。
 そんな中、リーガンに付き添いを頼んでいた映画監督バークが窓から落ちて死んでしまう事件が起きます。が、首が真後ろになるまで捻じ曲げられた異様な死に方に不審を抱いたキンダーマン警部は、殺人と疑い捜査を始めます。
 やがてリーガンは精神病院へ。しかし何人もの医師がさじを投げ、クリスは医師が口にした悪魔祓いに最後の望みを賭けることにします。すでにリーガンの形相は人間のものではなく、ベッドに縛り付けなければ手に負えない状態。クリスも殺されかけます。ほどなくクリスはデミアンに悪魔祓いを依頼。最初はまったく信じないデミアンだったのですが ・・・。

コメント
 「フレンチ・コネクション」とはがらりと変わったつくりようとなった本作。が、名匠ウィリアム・フリードキン監督の安定した演出はすばらしく、オカルト一辺倒の物語を第一級のメジャー作品に仕上げたのは、その実力に負うところが多いのではないでしょうか。そして本作でその実力を最大限に発揮したのがウィリアム・ピーター・ブラッティ(製作・原作・脚本)。悪魔の出現〜悪魔が起こす現象〜その滅亡、と、シチュエーションを絞り込み、一方では端的に過ぎるほどの心理描写でストーリーを進めていきます。さらに、シリーズに欠かせない要素となったディック・スミスの世にも恐ろしいメイク。刺激という点では過激になった現代のそれには及ばないかもしれませんが、本作のつくりの巧さ、ひいては完成度の高さはやはり名作と呼ぶにふさわしいと言えるでしょう。
 物語はまず仲の良い母娘を映し出します。が、やがて娘リーガン(リンダ・ブレア)は、徐々に奇行が目立つようになります。さらにはポルターガイスト現象が相次ぎ、リーガンは邪悪に満ちた形相へと変化していきます。そして、何十人もの医師がさじを投げた末に、母クリス(エレン・バースティン)は悪魔祓いに最後の望みを繋げる決心をするのです。
 "エクソシスト" とは悪魔を祓う人のことで、本作ではマックス・フォン・シドーがメリン神父役で出演。そして何と言っても、現実主義の精神科医でもあるデミアン・カラス神父のジェーソン・ミラーが好演。悪魔憑きを否定する心理から徐々に疑い始め、ついにその存在に驚愕する過程をごく自然に演じ分けています。その陰のある姿も本作の雰囲気にマッチしたもので、この点、当たり役と言っていいのでしょう。また、名脇役で知られるリー・J・コッブの重厚な演技はオールド・ファンにはたまらないところ。
 終盤はすべてが悪魔祓いのシーン。ややつくりすぎの感もないではありませんが、様々な人格を使い分ける悪魔に翻弄されるカラス神父に、"悪魔はひとつだ" 、さらに、"うその中にわずかな真実を入れ人を惑わす" と、人間の弱さの本質を衝いているところなど、悪の本質をも描いた名シーンと呼べます。一方で、悪魔はどこから来てどこに消えていくのか、その謎は明らかにされません。が、それもまた、オカルティシズムの神秘性の一面であり、エクソシズムの本質のひとつなのかもしれません。
 今のことは分かりませんが、公開時、悪魔祓いという儀式は確かに存在し、カトリックでは公認するエクソシストが人知れず活動していたと言います。本作ももともとは実際にあった悪魔祓いのモチーフをアレンジしたもので、作品中漂うリアリズムに大きく影響しているようです。製作から二十年以上も問題視されたことも、その信憑性を高める結果となりました。ともあれ、オカルト映画を語るには欠かせない本作。映画史の上でも必見の作品と言えます。

* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。

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