映画鑑賞記

恋するシャンソン
On Connait La Chanson(1997/フランス・スイス・イギリス/120分)
[監督] アラン・レネ
[脚本] アニエス・ジャウイ / ジャン・ピエール・バクリ
[撮影] レナート・ベルタ
[音楽] ブリュノ・フォンテーヌ

[出演]
アニエス・ジャウイ、ジャン・ピエール・バクリ、サビーヌ・アゼマ、アンドレ・デュソリエ、ランベール・ウィルソン、ピエール・アルディティ、ジェーン・バーキン

[評価] ★★★★☆
 来もしない家族のために大きな部屋を借りようとするニコラ。部屋を斡旋するシモンは年甲斐もなく若いカミーユに思いを寄せるが、カミーユはシモンの上司マルクに恋をする。そのマルクはカミーユの姉オディールに部屋を売りつけようと躍起。そのオディールとの夫婦関係に悩む夫クロード ・・・。偶然出会った人間たちの恋と人生の行方を描いたコメディ。繊細でドラマチック。ちょっと変わったミュージカル風ドラマ。
ストーリー
 八年ぶりにパリに帰ってきた事業家・ニコラがオディールのもとを訪れます。親しげに話す二人の横にはオディールの夫・クロード。しかしオディールはクロードは生気がないと不満顔。そのクロードは内心で二人に嫉妬していました。一方、オーディルの妹・カミーユはパリの観光ガイド。ある時、パリに詳しい年配の客が他の客にひそひそと説明を始め、迷惑だと文句を言う羽目に。その後図書館で偶然その嫌な客と再会。しかしラジオ作家だという彼・シモンは、話してみると印象が変わり、時折会っては話しをするようになります。が、実はシモンはカミーユに思いを寄せていたのでした。
 ある日、カミーユは姉・オディールの新居探しに付き合うことに。待ち合わせ場所にいたのは不動産屋の若い社長・マルク。物件を早く売りつけたいマルクでしたが、遅刻の姉を置いて二人で部屋を見に行き、互いに惹かれ合うようになります。同じ頃、ニコラも家族を呼び寄せるつもりで部屋探し。斡旋しているのはマルクの部下・シモン。実はこちらが本業。偶然ニコラがカミーユの知り合いだと知ると、不動産屋であることは黙っていてい欲しいと頼みます。そしてそんなニコラも体裁ばかりを気にする男。実は仕事も家庭もオディールやシモンに自慢するほどうまくいってはいないのでした。
 ある夜、新居の購入に慎重なクロードはオディールと口げんかをしてしまい、もはや夫婦として続けていけないことを悟ります。そんな時、カミーユが発作を起こし息苦しさを訴えます。恋人マルクと姉オディールは大したことはないと言いますが、シモンはうつ病だと言ってカミーユを怒らせてしまい ・・・。

コメント
 久々にアラン・レネの名前を聞くことになった本作。オールド・ファンには感慨深い映画となったのではないでしょうか。一方、アニエス・ジャウイは、本作以降は監督業でも才能を発揮。いまや世界で最も注目される監督のひとり。本作でもジャン・ピエール・バクリとコンビで脚本に参加。その才能をいかんなく発揮しています。
 舞台はパリ。偶然関わりあうことになった7人の男女の人生や恋愛をユーモラスに追っていきます。特に、皆一人合点している人間模様が、徐々に交わり、ついに本音同士ぶつかっていく様が描かれています。が、人物の繊細な心の中がひしひしと伝わってくるにもかかわらず、物語は決して深刻になりすぎず、決して見る者にプレッシャーを与えません。このバランス感覚は見事ではないでしょうか。
 さて内容。不動産屋マルクの部下・シモン(アンドレ・デュソリエ)が若いカミーユ(アニエス・ジャウイ)に憧れ近づきますが、カミーユはマルク(ランベール・ウィルソン)に惹かれます。一方、マルクはオディール(サビーヌ・アゼマ)に部屋を売りつけたくて躍起。夫クロード(ピエール・アルディティ)はそのオディールとの夫婦関係に悩み、自称事業家のニコラ(ジャン・ピエール・バクリ)はオディールに見栄を張ります。が、妻ジェーンとの関係は崩壊寸前で医者通いの日々。それぞれが三角関係や夫婦関係、さらには人生に悩む姿が何とも人間的。しかもそれぞれの人物の個性の違いが描き分けられていて、人物が入れ替わるたび、それぞれに感情移入してしまいます。
 その手助けともなるのが時折入る歌。絶妙のタイミングと歌詞で見事に本音を表現しています。しかし一曲歌い上げるなんて野暮なことはしません。短いフレーズを重ねるつくり。普段ミュージカルを敬遠しがちな人もこれなら十分許容できるはず。それに内容が直接繊細な心情表現となっていて、物語を支えているのは好感が持てます。
 冒頭から最後まで、繰返し映される貝のようなオブジェ。実は見栄と本音の象徴。ある時は醜く見え、ある時は美しく見える。 ♪気づいてほしい、わかってほしい、と言いながらも自分を偽り、あるいは飾ってしまう登場人物たちの背後には、必ずこの貝のオブジェが見えてきます。
 最後は互いが互いの本音を知り泣く者あり笑う者あり。ペーソスもちょっぴり効かせてしまうのがまた憎いところではあります。つまりは八方丸く、とはいかない終わり方。が、見ている方は不思議にも大満足。ちょっと速めのテンポに追い立てられるのは玉に瑕ですが、様々な恋愛模様を通じて、人間同士の機微や繊細な真情をユーモラスに綴った佳作と言っていいのではないでしょうか。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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