映画鑑賞記

サイコ (98年版)
Psycho(1998/アメリカ/104分)
[監督] ガス・ヴァン・サント
[原作] ロバート・ブロック
[脚本] ジョセフ・ステファノ
[撮影] クリストファー・ドイル
[音楽] ダニー・エルフマン / スティーブ・バーテック

[出演]
ヴィンス・ヴォーン、アン・ヘイチ、ジュリアン・ムーア、ヴィーゴ・モーテンセン、ウィリアム・H・メイシー

[評価] ★★★☆☆
 週末、会社の金40万ドルを預かったまま逃走したマリオン。途中立ち寄った寂れたベイツ・モーテル。主は神経質そうなノーマン。早朝発とうとしたマリオンだったが、ノーマンの母親に殺されてしまう。それを知ったノーマンは死体を沼に埋め、事件を隠蔽するのだったが ・・・。サイコ・スリラーの金字塔・ヒッチコックの「サイコ」(1960)のリメイク。といっても忠実な再現作品で前作ファンは賛否が別れるところ。が、土台の良さは歴然で質は高い。
ストーリー
 フェニックス、週末の金曜日。マリオンは恋人サムとともに目覚めます。サムは別れた妻がいて独身。一方のマリオンは結婚には淡白で、二人は愛人同士のような関係。そのマリオンが出社。ちょうど客が社長に40万ドルを預けたところ。社長は金を銀行に預けるようマリオンに指示。しかしマリオンは頭痛を理由に直帰の許可をもらうと、金とわずかな荷物を持って逃走してしまいます。
 途中、車の中で寝ていると警官に尋問され、また、車を買い換えたところも不審に思われて窮地に。が、辛くも切り抜けるマリオン。翌土曜日の夜は大雨。逃亡中のマリオンは疲れもあってモーテルに泊まることに。そこは小さなベイツ・モーテル。宿泊簿には偽名。優しげな主・ノーマンが食事をつくってきてくれると言い、隣りの自宅へ。が、そこからは母がノーマンを罵る声。ほどなく、ノーマンが食事を持って現れますが、案内されたのは不気味な応接室。そして話しているうちに、ノーマンの神経質そうな性格が垣間見えてきます。
 一晩だけの我慢、と早々に部屋に切り上げたマリオン。しかしシャワーを浴びている最中ノーマンの母が忍んで来て刺し殺されてしまいます。それを知ったノーマンは死体を隠し事件を隠蔽。一方、週明け。社長たちはマリオンの行方不明に気付きます。マリオンの妹・ライラにも連絡を取りますが行方は分からず大騒ぎに。そして探偵アーボガストが社長に雇われマリオンを探し始めます。やがてアーボガストはベイツ・モーテルに行き当たるのでしたが ・・・。

コメント
 名匠ガス・ヴァン・サントがヒッチコックのリメイクに挑んだ意欲作。あまりにも有名なオリジナルだけにどのようなアレンジを、と期待したのですが、ほとんどオリジナルのままのつくりとなっています。が、これはどうも意図的のようで、「サイコ」(1960)の現代版を目指した節がうかがえます。それでも撮影当時様々な制約を受けたヒッチコック時代とは違い刺激的な映像が可能な現代。個人的にはもう少しホラー色の強い映像が欲しかったころではあります。その一方、スリリングな雰囲気は見事に再現。比較、という見方さえしなければ、もともとの物語のおもしろさを踏襲しているだけあって、十分魅力的な作品と言えるのではないでしょうか。
 物語は、平凡なOLマリオン(アン・ヘイチ)が、大金を奪い逃亡するところから始まります。普段と変わらぬ生活を送っていたマリオンが突如、しかしそれすらも普段のことのように、犯罪を犯すのです。しかし、逃亡が続くと、張り詰めた緊張感は徐々に昂ぶっていき、ついに大事になる前に戻ることを決意するに至ります。が、その前夜、寂れたベイツ・モーテル。シャワーを浴びている最中、カーテン越しにから振りかざされたナイフで滅多刺しにされてしまいます。
 "サイコ" とは、精神的な狂人を象徴する言葉。それを体現するノーマン・ベイツ(ヴィンス・ヴォーン)の異常な言動の中に、真実への伏線が隠されています。それは、作中で言うように、なにものからも "逃れられない" 人間の姿でもあります。そのノーマンが、モーテルを鳥篭に、マリオンを鳥になぞらえるところにこそ、戦慄すべき本質が潜んでいるように思えます。そしてその成果物が鳥の剥製。真実を示唆する鳥の剥製の使い方には注目したいところです。
 ノーマンに隠された秘密。その精神異常性は、現代ではインパクトの少ないもの。が、当時(1960)は精神医学は発達しておらず、見る者の衝撃度は今とは比べ物にならなかったはずです。その意味からも、新たなアイディアを加えた、時代性を考えたリメイクが望ましかったのでは、と感じてしまいます。それはともかく、物語では、やがてマリオンの妹(ジュリアン・ムーア)と恋人(ヴィゴ・モーテンセン)がノーマンに行き着き、ついにその恐るべき真実を知るところとなるわけです。
 アン・ヘイチはともかく、オリジナルのベイツ役、アンソニー・パーキンスのいかにも病的というキャラクターを出せる人は少ないでしょう。その点配役上の不利も否めません。正直オリジナル・ファンから評価を受ける作品とは思えず、両方見る必要はまったくないでしょう。それほど忠実な再現作品といていいほど。が、決して作品としての質が低いとは思えません。「サイコ」を知らない世代ならごく普通に楽しめるスリラー映画ではないでしょうか。

* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。

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