映画鑑賞記

酒とバラの日々
Days of Wine and Roses(1962/アメリカ/117分)
[監督] ブレイク・エドワーズ
[脚本] JP・ミラー
[撮影] フィリップ・ラスロップ
[音楽] ヘンリー・マンシーニ

[出演]
ジャック・レモン、リー・レミック、チャールス・ビックフォード、ジャック・クラッグマン、アラン・ヘウィット、トム・パーマー、デビー・メゴワン

[評価] ★★★☆☆
 PR会社のジョーは得意先の秘書キアステンと恋に落ち結婚。子供をもうける。が、酒を飲まなかったキアステンは、ジョーの愚痴をきっかけにみずから酒を手にするように。やがてジョーがクビになると、二人で酒に溺れるようになっていく ・・・。アルコール依存症の恐怖とそれと戦う人間の姿を描いたドラマ。娯楽的な要素はほとんどないが、人間の弱さを真正面から捉えた名作。
ストーリー
 PR会社の渉外担当ジョー・クレイは、ある石油会社の接待のため船上パーティを開催。コンパニオンを送り込むところ、ひとりの女性が乗り込んできます。コンパニオンと勘違いして小言を言ってしまいますが実は先方の会社の社長秘書キアステン。しかも一目ぼれ。
 ほどなくキアステンの会社を訪れデートに誘うジョーでしたが、キアステンはにべもない態度。しかし断られるとけなし始めたり、かと思うとおどおどしたり、と、そんな自分を飾らないジョーに魅力を感じ始めたキアステンはデートを了承。最初のデートで、酒を飲まないというキアステンに、大の酒好きのジョーは甘いカカオ・リキュールを勧め、すると酔った二人の距離は一気に縮まっていきます。
 やがて二人は結婚。女の子をもうけます。ある日、ジョーは仕事と家庭への不満からキアステンに八つ当たり。これを機にキアステンは自分から酒を手にするようになります。ほどなく、ジョーは仕事で我を通したことで地方に左遷。キアステンは寂しさから一層酒の量が増えていきます。そしてついに酔って家を火事にしてしまうと、これがもとでジョーもクビになってしまいます。
 以来、二人で酒びたりとなる生活。職にも就けないジョーは、ある日、ふとしたことから自分たちがアル中であることを悟ります。そしてキアステンの父に助けを求め、父の園芸会社で働かせてもらうことに。家族三人で父の家に住み込み、しばらくは酒を断ってまじめに働いていたジョーとキアステンだったのですが ・・・。

コメント
 冒頭、ヘンリー・マンシーニの美しい曲が印象的。音楽に合わせたかのように甘いラブストーリーが展開する序盤。しかし中盤からは、人間が落ちぶれ、泥沼にはまっていく様が救いようのない無力感と共に描かれていきます。逃れられないアルコール依存症の悲劇を描いた作品ですが、本作の名作たる所以はその高いドラマ性にあります。愛、意志、そして本能をそれぞれ対極的に描き出すことで、人物の真の姿を赤裸々に伝え、さらには物語の悲劇性をより強めているのです。
 物語は、船上パーティに向かうボートから始まります。そこでジョー(ジャック・レモン)とキアステン(リー・レミック)は始めて顔を合わせます。ジョーはキアステンをコンパニオンと勘違いしてバツの悪い思い。が、一目ぼれしてしまいデートに誘います。ジョーの軽妙なせりふ使いがラブ・コメディを思わせますが、ここで後に重要となるモチーフがいくつもはさまれています。ジョーの仕事への不満。キアステンの家族への思い。そして、チョコレート好きで酒を飲まないキアステンは、初めてのデートで酒の味を覚えるのです。
 "甘い物好きは潜在的なアルコール中毒" とは後に出てきますが、キアステンはちょっとしたジョーとのすれ違いや不満から徐々に酒の量を増やしていく様が映し出されます。物語は、最初の軽妙さはまったくなく、二人がアルコール中毒になり、何度も立ち直ろうとしながらも失敗するシーンが繰り返されます。
 立ち直りかけたジョーにキアステンが酒を勧め、ついにはそれに負けてしまうジョー。互いに愛しているが故の行為。が、一方で、アル中更正会のメンバーが言います。 "アル中には酒がすべてなのだ" と。酒を見つければ分かち合おうと思う前に飲んでしまう。まず病気を直さなければ人生は始まらない。ジョーは最後、ようやくそのことを悟るのです。それはキアステンにとっても、きっと再出発の一歩であるはず。と、物語はここで締めくくられます。
 ジャック・レモンとリー・レミックの名演が話題となった本作ですが、むしろ、娯楽性を控え、社会的なテーマとシリアスな展開で押し切ったつくりの方に注目したいところ。分かっていながら何度もアルコールに溺れていく様は、麻薬中毒に通じるものがあります。が、さすがに古さは否めないかもしれません。はたして今の人たちにどれほど受け入れられるのか、ちょっと気になるところではあります。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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