映画鑑賞記

知りすぎていた男
preview The Man Who Knew Too Much(1956/アメリカ/120分)
[製作・監督] アルフレッド・ヒッチコック
[原案] チャールズ・ベネット
[脚本] ジョン・マイケル・ヘイズ / アンガス・マクファイル
[撮影] ロバート・バークス
[音楽] バーナード・ハーマン

[出演]
ジェームズ・スチュワート、ドリス・デイ、ラルフ・トルーマン、ダニエル・ジェラン、クリス・オルセン、ブレンダ・デ・バンジー、バーナード・マイルス

[評価] ★★★★★
マラケシュを旅行中のマッケンナ夫妻とその子供。が。途中知り合ったベルナールが刺され死の間際メッセージをささやく。その後警察に何も言うなと脅迫されハンクも誘拐されてしまう。夫妻は自分たちだけでハンクを救おうと唯一の手がかりであるロンドンへ向かうのですが・・・。幸せな家族が重大な国際事件とわが子の誘拐事件に巻き込まれてしまうサスペンス。あまりのおもしろさに忘我の境。しかも感動のラストまで味わえる。いやはや、こんな映画にであえたことを神様に感謝すべきでしょう。
ストーリー
 医学学会の帰りにモロッコを訪れたマッケンナ夫妻と子供のハンク。硬い職業の夫ベンに対して妻ジョーはもと歌手。しかし家族思いの夫とかわいいハンクに囲まれて幸せを感じていました。
 ある時、家族でマラケシュへ向かうバスの中、思わず現地の人の怒りを買ってしまいます。が、乗り合わせていたフランス人、ルイ・ベルナールがこの悶着を鎮めてくれます。そして夕食の約束を。が、無事ホテルに着いた後、直前になって断ってきます。その後イギリス人のドレイトン夫妻と知り合い、レストランで一緒に食事をするのですが、そこにはベルナールがいて誰かと食事をしているところ。自分たちとの約束を破っておいて、と怒るベンですがジョーが何とかなだめます。
 翌日、ドレイトン夫妻と町を見物に。すると何か騒動が起こっているのに気づきます。ほどなくアラブ人がベンの胸に飛び込んで何事かささやきます。"要人が殺される..., アンブローズ・チャペル..."と。背中にはナイフ。間もなく息絶えた彼は、アラブ人の格好をしたルイ・ベルナールだったのです。そしてハンクをドレイトン夫妻に預け警察に事情を話しに向かうベンとジョー。そこに電話が。それはハンクを誘拐したから何もしゃべるなとの脅迫でした。
 夫妻は犯人の言うとおりに警察をごまかすとホテルへ急ぎます。しかしドレイトン夫妻はすでにチェックアウトしていたのでした。気が狂わんばかりのジョーでしたが、ベンは何とか落ち着かせ二人はドレイトン夫妻を追ってイギリスへ。そこでも警察が待ち構えていて、ブキャナン警部が事情を聞きにやってきます。しかしハンクのことを思うと何も言えないマッケンナ夫妻。ブキャナン警部は事情を察してくれたようで無理は言ってきません。そしてベンは、ベルナールが言ったアンブローズ・チャペルという人物の住所を電話帳で調べ、その家に出向くのですが・・・。

コメント
 ヒッチコック自身が監督した「暗殺者の家」のリメイク。あえてリメイクしただけのことはあって、恐るべき完成度の映画となりました。
 まずは構成の妙。謎を次々とぶつけてくるマラケシュでの序盤。中盤、ロンドンに入るとその謎解きを惜しげもなく一気にさらして、主人公の追跡劇に目を移させる。そして敵のアジトとアルバートホール(世界に名高いコンサートホールの殿堂)での緊迫の攻防戦。さらにラストの感動の救出劇に至るまで、まさにまばたきする間もないほどのおもしろさ。この間、徹底した動と静の対比を活かして、また、ユーモアを巧みに挿入して緊張と弛緩のバランスも完璧にコントロール。さらに、主人公のみならず、警部や犯人たち登場人物の性格描写や心理描写も怠らず、エンターテイメント作品としてどこから見ても見応えたっぷりのつくりといっていいのではないでしょうか。
 主演は「裏窓」や「めまい」でも主演したジェームズ・スチュワート。あまり二枚目ではない主人公はヒッチコック作品では希といえるでしょう。そして何といっても妻役のドリス・デイ。彼女が歌う「ケセラセラ」はこの映画最大の伏線。なんてことのない、と今まで思っていた人も、見終わればこの曲を見直すことになるのでは? と、ほめるところしかないのかというと実はそうでもないのです。犯人グループがもくろむアルバートホールのトリック。果たして成功すかどうかあやしいもの。ちょっとリスクが高い手口。ただし、ここは大変緊迫するところなので、むしろ余計なことと言えるかもしれません。気になった方が楽しみが半減して不幸を味わうことに。
 情感深いドラマをベースにするのが常のヒッチコック。今回はラブストーリーではなく家族愛。これが、誰でもがヒッチコック作品を楽しめる要因となっています。そして何度見ても飽きないのも単なるサスペンスではない証拠。そして本作はその中にあって最もエンターテイメント性の高い作品。多くの人がお気に入りの作品にあげることになるのは必至でしょう。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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