映画鑑賞記

白い恐怖
preview Spellbound(1945/アメリカ/111分)
[監督] アルフレッド・ヒッチコック
[原作] フランシス・ビーディング
[脚本] ベン・ヘクト
[脚色] アンガス・マクファイル
[撮影] ジョージ・バーンズ
[音楽] ミクロス・ローザ

[出演]
イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、マイケル・チェホフ、ドナルド・カーティス、ロンダ・フレミング、ジョン・エメリー、レオ・G・キャロル、ノーマン・ロイド、ポール・ハーヴェイ、アースキン・サンフォード

[評価] ★★★★☆
 堅物の精神科医コンスタンスが新任の院長エドワーズと恋に落ちる。が、実は彼は偽者で本物は行方不明と判明。記憶喪失だという彼は逃亡。コンスタンスは彼の無実を信じ、助けようとして後を追うのだったが・・・。心理分析をテーマにしたサイコ・スリラー。愛の強さを描いたロマンティック・ミステリーの古典的名作でもある。
ストーリー
 ある病院で精神科医として勤めるコンスタンス。有能だが人間味に欠けるとのいうのがまわりの目。ある時、退職する院長の代わりに、署名なエドワーズ博士が赴任してきます。若くてハンサムなエドワーズに好意を寄せるようになるコンスタンス。エドワーズもまたコンスタンスに魅かれ、二人はたちまち親しくなっていきます。
 しかしエドワーズには時折拒否反応による発作のような症状が。ある時、ついに手術中に精神錯乱を起こして皆が疑いを向けるようになると、コンスタンスに自分はエドワーズではない、エドワーズは自分が殺した、と告白します。自分には記憶がなく、JBという頭文字しか思い出せないという彼。その夜、コンスタンスにメモを残すと病院を出て行ってしまいます。そして翌朝、エドワーズの助手が訪れてきてJBのうそがばれてしまいます。本物のエドワーズは確かに行方不明中だったのでした。
 警察がJBを追う中、彼の無実を信じて助けようと決意したコンスタンスはメモにあったニューヨークのホテルへ。が、すぐに手配が回りホテルを逃げ出すことになります。行き場を失った二人は、コンスタンスの恩師ブルロフ博士に助けを求めることにしたのですが・・・。

コメント
 サイコ・スリラーの傑作にしてロマンティック・ミステリーの名作。古典的な映画でありながらそのおもしろさはいまだ健在。さらに、終始漂う叙情的な雰囲気を美しい音楽が盛り上げます。ロマンス、ミステリー、サスペンス、とヒッチコックの三拍子が見事に揃い踏みした作品と言えるでしょう。
 物語は、ある病院に新任の院長が赴任してくるところから始まります。ところがほどなく偽者と判明。本物の院長はどうなったのか。自分が殺したのだという男。しかし男を愛してしまった女医は男の無実を信じ、真実を解き明かそうと奮闘することになります。男の記憶の断片から事実を明らかにしていく過程が実に鮮やか。が、残ったワンピースは最後まではめられません。明かされなかった最後の真実。ラストはまさにどんでん返しの醍醐味を、見る者のすべてが味わうことになります。
 この映画には有名なシーンがあります。終盤に差し掛かる頃に挿入される、夢の再現シーンです。壁にある無数の目。のっぺらぼうの男。短いモチーフですが超現実的なカットの連続です。この背景はダリの協力の下につくられたといいますから無理からぬこと。芝居がかったモチーフにもかかわらず、まるでホラーのワンシーンのような怖さをかもし出しています。映像技術が発達した現在でも、これほどの効果を発揮できる映像はそうそうないでしょう。
 ところで、グレゴリー・ペック(JB=ジョン・ブラウン、ジョン・バランタイン)は今ひとつなのですが、イングリッド・バーグマンは見事な演技。コンスタンス医師の人間性と微妙な心理状態を自然な表情で表現しきっています。気持ちがじかに伝わってくるほどの名演で、実際かなりの評価を受けたようです。ただし、プロット上、妄信的にJBの無実を主張するのはちょっと不自然ではありますが・・・。
 ともあれ、映像の古さを除けば今見てもその完成度は非情に高いもの。映画好きならヒッチコックファンならずとも見ておきたい一本ではないでしょうか。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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