映画鑑賞記

アンダー・サスピション
Under Suspicion(2000/アメリカ/110分)
[監督] スティーブン・ホプキンス
[原作] ジョン・ウェインライト
[脚本] W・ピーター・イリフ / トム・プロボスト
[撮影] ピーター・レビ
[音楽] BT

[出演]
ジーン・ハックマン、モーガン・フリーマン、トーマス・ジェーン、モニカ・ベルッチ

[評価] ★★★☆☆
連続少女レイプ殺人事件。署長は第一発見者の初老の弁護士のハーストを犯人だと確信。次々と暴かれるハーストのねじれたプライベート。やがて若い妻シャンタルが訪れ証言を始めるのだが・・・。真犯人はハーストなのか? サスペンスとしては平凡だが心理ドラマとしての見応えは十分。
ストーリー
 老境に入った税務弁護士ヘンリー・ハースト。その晩、若い妻シャンタルと市長のパーティへ。が、警察署長のベネゼーから呼び出しを受けます。待っていたのは署長と最初から敵意むき出しのオーエンス刑事。そこで、ヘンリーは前日、13歳の少女の死体を発見した状況を聞かれることになります。
 実は二週前にも少女がレイプされて殺される事件が起こっている上、ハーストの証言にはいくつかの矛盾点が。にもかかわらずのらりくらりとした証言を続けるハースト。食い違う隣人たちとの証言。通報場所の不自然さ。しかも二週間目の事件でもアリバイがない上に現場付近にいたことが判明していきます。
 犯行を否認するハースト。が、執拗にベネゼーとオーエンスは追求します。そして暴かれていくハーストのプライベート。不妊症の妻。子供への執着。二人はハーストが犯人だと確信しますが証拠はありません。そんな中、妻シャンタルが警察を訪れます。二年にもわたる夫との確執。そこで夫への疑惑を話すベネゼー。徐々にシャンタルの心が揺らぎ始めます。写真が趣味のヘンリーは被害者の写真を撮っているはず。家の名義がシャンタルであると知り、ベネゼーは彼女に家宅捜索の許可を取りつけようとするのですが・・・。

コメント
 緻密な娯楽サスペンスというよりは、ドラマ性を盛り込んだ心理サスペンス。主演の二人(ジーン・ハックマンとモーガン・フリーマン)は多彩さよりも重厚さが特徴的な俳優ですね。ここでも見応えのある駆け引きが展開します。が、もう一人のモニカ・ベルッチが意外なはまり役。中盤までの姿とはうって変わって終盤は見事な感情表現ぶり。特にラストシーンの立姿はシャンタルの真の人間像を象徴するもの。一方、切れっぱなしのオーエンス刑事役トーマス・ジェーンはさすがに現実離れした人物像。正義感を強調したいのか、見る者に反感を買わせたいのか分かりませんが、演技云々の前にこの登場人物には多くの人が興ざめしてしまったのではないでしょうか。
 ところで、実際、状況証拠にもならないほどのお粗末な捜査。頼みは自白だけという状況なのに思い込みだけで平気で逮捕してしまうのです。捜査の現場とはこんな程度のものなんでしょうか。と、妙なところに不安になってしまいました。そう考えると、モーガン・フリーマン演じるベネゼーがとんでもない無能な署長に見えてしまい、一気に緊張感が途絶えてしまいます。心理的な駆け引きの土台になっているシチュエーションなだけに、どうも状況・展開共に今ひとつリアリティさがないのは残念。ベネゼーとオーエンスの行為が茶番に思えてしまいます。
 が、 終盤、ベネゼーとハーストの駆け引きは、やがてハーストとシャンタルの心理劇へと展開していきます。プライベートで冷え切った夫婦仲が明らかになる中、ハーストは"妻を愛している"と強調するのです。こちらの展開ははるかに見応えがあります。それまでのヘンリーとシャンタルの、どこかねじが一本取れたような、見ていてしっくりこなかった理由が次々と明らかになるのです。特に冒頭のツーショットがいかに象徴的なものか思い知らされます。
 最後、ハーストは真犯人なのでしょうか。"妻がそこまで"と、絶句するハースト。その時点で、この物語にとって、真実はもはや問題の本質ではないのだと気づきます。決して態度に出さなかった互いに対する二人の真の気持ちが、この数カットで明らかになるわけです。そして、ここからの人間描写こそが物語の本質を如実に語っていると思うのです。
 優れたドラマを内包しているにもかかわらず、リアリティの薄さと平凡なサスペンスを終盤まで引っ張ってしまった本作。何とも惜しい作品では、と思うのですがどうでしょうか。
* 評価やコメントは、あくまでも、"もりじょう"の個人的な感性に基づくものです。
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