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悪魔のようなあなた

Diaboliquement Votre(1967年/フランス/93分)

[監督]ジュリアン・デュヴィヴィエ
[原作]ルイ・C・トーマ
[脚本]ローラン・ジラール / ジャン・ボリバリ / ジュリアン・デュヴィヴィエ
[撮影]アンリ・ドカエ
[音楽]フランソワ・ド・ルーベ
[出演]アラン・ドロン / センタ・バーガー / ピエール・モスバッハ / クロード・ピエプリュ / セルジオ・ファントーニ / アルベール・オージェ / レナーテ・ビルゴ / ジョルジュ・モンタン

[内容]

 自動車事故で男が入院。三週間後、目覚めた男には記憶がなかった。ほどなく妻と名乗る女が引き取りに来て広大な館に連れて行かれる。そこには見覚えのない中国人の召使。やがて男は、自分が別人ではないかと疑い始めるのだったが ・・・。記憶喪失の男をめぐるクールなサスペンス。描写し切らず、先が読めず、と、これは当時のフランス映画の潮流。デュヴィヴィエ監督の円熟した人間描写と、非人間的なサスペンス劇とのアンバランスさがふしぎな雰囲気。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 自動車事故で、車に乗っていた男が入院。三週間後、意識を取り戻した男には記憶がありませんでした。そして医者から、自分の名がジョルジュであること、妻がいることを知ります。ほどなく訪れた美女・クリスチャーヌは自分の妻だと名乗り、郊外の大邸宅・ツール館へと連れて行かれます。
 そこには中国人の召使・キエム。しかしジョルジュには覚えがありません。妻に聞くと、かつて香港で建設会社を営んでいたのだと教えられます。やがて館を訪れてきた男。ジョルジュには、なぜか、その男が友人で医師のフレディだと記憶がありました。そしてフレディは、ジョルジュの治療を始めるべく館に滞在することに。
 が、すぐにジョルジュは疑問を持ち始めます。中華料理が嫌いなのに、かつては好きだったと言われ、ある時には愛犬に吠えられ、さらに、やさしいがどこかよそよそしい妻と召使。そして毎夜見るふしぎな夢。そこにはなぜかアルジェリアの記憶が。そんなある日、倉庫の屋根裏から落ちそうになります。見れば落とし穴のよう。門は鍵を閉められまるで監禁状態。フレディは治療のためだと言いますが、不信感はつのるばかり。
 やがてジョルジュは、ピエール・ラグランジという名前を思い出します。フレディに聞いてみるも、そんな名前は知らないという返事。そしてジョルジュは、意を決して塀を乗り越え、警察へ行く決心をしたのですが ・・・。

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COMMENT

 本作は名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の遺作。サイレント時代からフランス映画を支えてきた監督ですが、この後、フランス映画は混沌としていくことになります。そんなことで、個人的には、奇しくもフランス映画一時代の区切りとなった、と言える気がします。
 その本作はクールなサスペンス。まさに当時のフランス映画の潮流を地で行くようなつくり。しかも、思わせぶりな展開、あいまいな状況描写、それでいてリアルな人物描写。これらは、わかりやすい娯楽作品とは一線を画すものですが、この、無機的な雰囲気と有機的な人間描写のアンバランスさにはぜひとも注目したいところです。
 冒頭は、その後のクールさがうそのようなホットな出だし。自動車事故直前の状況を利用。おもしろいことに、これほどのスピード感は、後の展開には一切出てきません。物語の主人公は、この自動車事故で記憶を失った男ジョルジュ(アラン・ドロン)。やがて妻と名乗る美女クリスチャーヌ(センタ・バーガー)が引き取りに訪れ、男の所有だという広大な館へと到着。が、中国人の召使キエム(ピエール・モスバッハ)をはじめ、記憶にないことばかり。唯一思い出したのは、男の治療のために滞在する医師フレディ(セルジオ・ファントーニ)。しかし、どうも違和感が拭えず、男は自分が別人ではないかと疑い始めるのです。
 冒頭意外は静かな展開。が、状況のあいまいさが見事に表現されています。男は本当にジョルジュなのか。別人だとしたらなぜそんなことをするのか。つまりは、謎そのものがはっきりしないという状況に、物語は置かれているのです。一方では、従順な妻、忠実な召使、体を気遣う医師、と、前半、徹底的に不自然さを隠し通すつくりとなっています。
 が、中盤、ジョルジュは命を狙われはじめます。落とし穴、落ちるシャンデリア、自殺を勧める夢の謎。同時に、怪しい動きにはしる召使キエム、セックスを頑なに拒む妻、ジョルジュを外に出したがらないフレディ、と、展開は徐々に不穏な方向へと動き出すのです。そして終盤、ついに、ジョルジュは、自分が別人であることに気付くわけです。最後、真実を知りながらジョルジュになりすまそうとする男。が、最後の最後、男はわずかな罠にはまることになるのです。
 作中、終始キーワードとなるのが、"暗示" 。このうそに翻弄され、破滅してゆく人間たちが、本作では鮮やかに描かれています。これが、あいまいな物語との見事なアンバランスさを生んでいる、と言えるのではないでしょうか。個人的には、当時のクールなフレンチ・サスペンスは好きなのですが、はたして今の映画ファンにとってはどうなのか。近年では、本作もあまり話題に上らなくなったような気がします。時代の流れとはいえ、やはり寂しさを感じてしまいます。

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ジュリアン・デュヴィヴィエ関連作
(旅路の果て、並木道)
アラン・ドロン関連作
(太陽がいっぱい、山猫)


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 本作の主演アラン・ドロンはアイドル的な扱いをされたこともありますが、伝説的な作品に何本も出演。「太陽がいっぱい」(1960)、「アラン・ドロンのゾロ」(1974)は、近年ハリウッドでリメイクされて大ヒット。「ボルサリーノ」(1969)などのギャング映画でも一世を風靡しました。西部劇「レッド・サン」(1971)では、三船敏郎とも共演しています。

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