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あなただけ今晩は

Irma La Douce(1963年/アメリカ/145分)

[監督]ビリー・ワイルダー
[原作]アレクサンダー・ブレフォート(戯曲)
[脚本]ビリー・ワイルダー、I・A・L・ダイアモンド
[撮影]ジョセフ・ラ・シェル
[音楽]アンドレ・プレヴァン
[出演]ジャック・レモン、シャリー・マクレーン、ルー・ジャコビ、ブルース・ヤーネル、ハーシェル・バーナーディ、ホープ・ホリディ、ジョーン・ショーリー

[内容]

 娼婦街に配属された巡査パトゥーは、警察黙認と知らず売春宿を手入れ。クビになってしまう。家も職も失ったパトゥーはふとしたことから娼婦イルマのヒモ、イポリットと喧嘩となり奇跡的に勝利。イルマに見込まれ、意に反してのヒモ生活を始めるのだったが ・・・。「アパートの鍵貸します」と同じスタッフ・キャストで臨んだラブ・コメディ。より喜劇色を強めて娯楽性は抜群。ただし終盤はいかにもやりすぎ。無茶な展開で息切れ感を露呈。ストーリーの面白さは折り紙つきなのだが ・・・。
[評価]★★★★☆

cinema review

STORY

 パリ。カサノバ通りは警察も半ば公認の娼婦街。通りに居並ぶ娼婦(プール)たち。イルマもその一人だ。ある日、生真面目な巡査ネスター・パトゥーが配属。その初日の警邏中、カサノバ・ホテルの前に立つイルマにふと声をかける。が、そこに客が現れ二人はホテルの中へ。
 隣のカフェに入って主ムスタッシュに聞いてみれば、売春宿だとあっさり告白。一方、カフェにたむろしていた娼婦のヒモ(メック)たちはいつもの慣習で賄賂を警官の帽子の中に忍ばせる。主との話に夢中で賄賂に気付かないパトゥーは単身乗り込んで娼婦たちを逮捕してしまう。が、客の中にルフェーブル警部がいることに気付かなかった。
 署で警部に呼び出されたパトゥーは勝手に手入れをしたことを怒鳴られ、さらに賄賂が見つかってクビ。家も追い出され職探しもうまくいかずふとムスタッシュのカフェへ。そこでイルマと再会する。しかしイルマのヒモ、イポリットが近付いて客をとりに行くようイルマに乱暴。見かねたパトゥーは無謀にもイポリットに戦いを挑むと、何と奇跡的に勝ってしまう。
 そしてイルマに見込まれたパトゥーは意に反してヒモの仲間入り。通称タイガーとしてのヒモ生活が始まる。が、パトゥーは愛するイルマが客をとるのを見ていられない。そこでパトゥーは自分が客となることを思いつく。そして他に客を取らなくていいほどの大金を払えばイルマは自分だけのものだ。
 パトゥーは呆れるムスタッシュの協力を得て、イギリスの老紳士X卿に変装。毎週一回イルマの部屋に通い、500フランを払い続けるのだったが ・・・。

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COMMENT

 名匠ビリー・ワイルダー監督のラブ・コメディ。脚本は当時超人気だったI・A・L・ダイアモンド。もう、つくる前から、おもしろい映画が保証されていたようなもので、その通り、ストーリー自体は抜群の娯楽性を醸成しています。
 物語の舞台はパリ。ある娼婦街。ブーローニューの森というのどかな場所から転属したばかりのパトゥー巡査(ジャック・レモン)。張り切って売春宿を単身手入れするもそこは警察黙認の場所。収賄の容疑までかけられてたちまちクビに。舞い戻った娼婦街でふとしたことから娼婦のヒモの一人と喧嘩。卑怯な手を使いまくって勝利し、かくしてパトゥーのおかしなヒモ生活が始まるというわけです。
 ヒモになる気のないパトゥー。しかし一晩ともにしたイルマ(シャーリー・マクレーン)は、朝帰ろうとするパトゥーを見てしとしとと泣き始めます。男ひとりも養えないなんて、と。何とも男性にとっては天国のような都合の良い女性。うらやましい限りではあります。一方のパトゥー。ヒモになったはいいがイルマを愛してしまい板ばさみに。ついには自分が変装して客となる暴挙に。その名もイギリス紳士、ロールスロイス・オックスフォード?、あらためX卿! ひそかに身を粉にして働きながら、大金をイルマに貢ぎ続けるパトゥー。ところが今度はいもしないX卿に嫉妬。X卿を抹殺してしまう、のですが、なぜかこれが本物の殺人事件と勘違いされて殺人犯として監獄に入れられてしまうのです。
 前半は実にいい具合にラブ・コメディ路線を突っ走ります。ジャック・レモンのコメディに徹した演技とイルマへの愛に悩む姿のバランスが絶妙で、笑いながらも思わず感情移入して切なくなってしまいます。さらにカフェの店主ムスタッシュ(ルー・ジャコビ)が何ともいえないアクセント。元イギリス兵、元経済学者、元弁護士にして挙句の果ては元産婆??? パトゥーの恋を冷めた目で応援しつつもことごとく裏目に出てコメディ色を一層際立たせています。
 ただし、終盤は息切れしていかにも無理やりな展開に。パトゥーが鉄格子を怪力?で曲げて脱獄するあたりから脈絡もシチュエーションも無茶苦茶になってしまいます。つまりは、非現実的なドタバタ・コメディになってしまったのは残念。まあ、純粋コメディとしてみれば相当におもしろい作品ではあります。だとしても、情緒的な含みのある前半との比較で微妙な差は否めないかもしれません。
 同じスタッフ・キャストで好評を博した「アパートの鍵貸します」(1960)。そのヒットを再び、という狙いがあったのは明らかでしょう。デキは前作にやや劣るというのが通評のようですが、続編ではなく新作で臨んだ所が、ワイルダー一族の尋常でない能力と懐深さを証明しています。前作のように感動のラブ・ストーリーでない点は個人的にちょっと残念。それでも期待以上のおもしろさを発揮していることもまた確かではあります。ハリウッド黄金期のラブ・コメディをストレートに実感できる映画ではないでしょうか。

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ビリー・ワイルダー
「昼下がりの情事」
「麗しのサブリナ」
「失われた週末」
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「お熱い夜をあなたに」
「チャイナ・シンドローム」
シャーリー・マクレーン
「愛と追憶の日々」
「不機嫌な赤いバラ」
「ハリーの災難」

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本作と同じジャック・レモン×シャーリー・マクレーン主演で以前製作されたのが「アパートの鍵貸します」(1960)。ラブ・・コメディの名作で、見事、この年のアカデミー作品賞・監督賞・脚本賞を受賞しています。本作では、すでに中年然とし始めたジャック・レモンとすれ加減がほどよいほどに貫禄がついたシャーリー・マクレーンの姿が興味深いところ。どこか初々しさが残っていた前作からの変遷が感じられます。

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