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エデンの東

East Of Eden(1954年/アメリカ/115分)

[監督]エリア・カザン
[原作]ジョン・スタインベック
[脚本]ポール・オズボーン
[撮影]テッド・マッコード
[音楽]レナード・ローゼンマン
[出演]ジュリー・ハリス、ジェームズ・ディーン、レイモンド・マッシー、バール・アイヴス、リチャード・ダヴァロス、ジョー・ヴァン・フリート、アルバート・デッカー、ロイス・スミス、ハロルド・ゴードン、ニック・デニス

[内容]

 アロンとキャルは双子の兄弟だったが、兄アロンは父に愛され、弟キャルは疎んじられていた。ある時、父が事業に失敗。全財産を失う。それを取り戻そうとしたキャルはひそかに事業への投資を思案。二人を生んですぐに家出した母から資金を借りようと思い立つ ・・・。原作は旧約聖書(カインとアベル)を元にした文豪スタインベックの名作。父と子の葛藤と苦悩を描いた人間ドラマ。善と悪、罪と罰を普遍的な愛として昇華させた美しい物語。メロディアスなテーマ曲も有名に。
[評価]★★★★★

cinema review

STORY

 1917年、モントレー。青年キャル・トラスクは水商売のおかみ、ケートを尾けていた。前の夜、酒場の客の一人から話を聞き、ケートが自分の母親だと疑ったからだ。父からは、キャルの母は子を生んですぐに死んだと聞かされていた。が、この時は事実を確認できないまま、用心棒に追い返されてしまう。
 一方、キャルの住む北カリフォルニア、サリナスの町。その頃、キャルの父アダムは冷凍レタスに全財産をつぎ込んでいた。父はなぜだか、昔からキャルには冷たかった。しかし双子の兄アロンには愛情を注いでおり、さらに兄には美しく気立ての良い恋人アブラがいた。いつも孤独なキャルにはそんな兄が妬ましくもあった。
 ある時、キャルは父の昔馴染みである保安官から、父の結婚写真を見せられる。そこに写っていたのはまぎれもないケートの姿だった。それからしばらく父の農園をまじめに手伝うキャル。が、冷凍レタスの輸送中、雪崩で列車は立ち往生。氷が溶けレタスはだめになってしまう。アダムは一日で全財産を失ってしまう。
 キャルは父の損失を取り戻そうと大豆栽培に目をつける。アメリカが参戦すれば大豆は高騰する。そう読んだキャルは事業家のウィルに相談。しかし5000ドルが必要だといわれる。そこでキャルは母ケートから借りようと思案。モントレーまで会いに出かけるのだったが ・・・。

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COMMENT

 文豪スタインベックの同名小説の映画化。親と子の葛藤とそれぞれの苦悩を描きます。アロン(リチャード・ダヴァロス)とキャル(ジェームズ・ディーン)は双子の兄弟。しかし父アダム(レイモンド・マッシー)は、母に似ているキャルを疎んじ、アロンにばかり愛情を注いでいました。母ケート(ジョー・ヴァン・フリート)は二人を産んですぐに家出。アダムはケートに嫌な思いをさせられていたのでした。それがために、キャルはすっかりあまのじゃくになってしまいます。
 本作で下敷きとなっているのは旧約聖書のカインとアベルの物語。筆者もそうですが、日本人にはあまり馴染みのない話ではないでしょうか。映画の中でもカインとアベルの話は複数箇所で引用されており、本作を理解するのに重要なファクターとなっている気がします。カインとアベルとはアダムとイブ(エヴァ)の子供のことで、その物語は次のようなものです。

 兄のカインは農民となり、弟のアベルは牧童となる。ある時、カインは農作物を、アベルは羊の初子を神に捧げる。しかし神はアベルの捧げ物しか受け取らない。怒ったカインはアベルを殺してしまう。それを知った神は、カインを呪われ、地上をさまようさすらい人とする。やがてカインはエデンの園の東、ノドの地に住み、町を建設する。

 多分に宗教的な物語であり、宗教的な解釈と理解が必要ではあります。興味のある方は調べてみるといいかもしれません。映画に対する様々な解釈が生まれてくると思います。映画でとりあえず重要となるのはこのシチュエーションです。兄カインは弟キャルに、弟アベルは兄アロンに置き換えられています。父の名アダムは元のまま。捧げ物は、映画では父の誕生日の贈り物に象徴されています。そこでアダムは婚約を、キャルは父が失ったお金を贈ることになります。神が受け取るべき捧げ物は、父が受け入れるべき贈り物。そこで父はキャルの贈り物を拒否するわけです。
 実際の聖書の解釈とは異なるのでしょうが、あえて言わせてもらうと、本作はカインとアベルの話に対する対論でもある気がしてなりません。後半、立場が逆転して「僕は父さんを許さない」と言うキャル。その父が脳卒中で倒れるくだり。そしてアブラ(ジュリー・ハリス)が父を諭すシーン。彼女は言うのです。「愛されないほどつらいことはない ... あなたはキャルに愛を与えず、愛を求めなかった」、と。アブラは他にも要所要所で重要な役割を果たしています。ともかくも、ここで、父が神に置き換えられるなら、そこに「愛」の欠落があったのではないか。そして、驚くべきはこの結末でしょう。保安官は、このカインとアベルの話を持ち出し、町を出るようキャルに忠告します。が、キャルは自立の象徴である“エデンの東”(ノド)に行かず、父のそばに落ち着くのです。最後、キャルは椅子を静かに引き寄せ、父のベッドの傍らに座る。愛は罪と罰を凌駕する、ということでしょうか。逆説的な展開ではありますが、物語がカインとアベルの話を独自に補完した、と思えてしまうのです。が、これは個人的な行き過ぎた解釈でもあります。ここまでくると、宗教的な解釈とはあまりダブらせない方がいいようにも思えます。
 作中、有名となったのが、キャルが金を父に贈り、拒否されると詰め寄るシーン。実は打ち合わせ無しのアドリブだったようで、困った父役のレイモンド・マッシーは、ようやく「キャル」という言葉をふりしぼってあの名シーンが生まれたのだとか。伝説のスター、ジェームズ・ディーンは共演者泣かせの俳優でもあったようです。
 本作はそのジェームズ・ディーンの初主演作。残念ながら、後年の一時、作品の本質が顧みられず、そのことのみがクローズアップされた感があります。しかし作品の本質は、善と悪を語ってきた物語が、愛という一点にのみ昇華された内にこそあります。作中で、キャルが、兄は善と悪を受け継ぎ自分は悪のみを受け継いだ、というのは何とも象徴的なせりふ。善と悪で割り切るキャルも、最後は愛の真実に触れることとなります。本作は、親子の確執と和解という形をとりながら、明らかに、愛の尊さを描いた美しい物語であることは言うまでもありません。

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本作はジェームズ・ディーンのデビュー作。以降、「理由なき反抗」、「ジャイアンツ」と、立て続けに名作に主演。が、1955年、わずか24歳で自動車事故のためこの世を去ります。本作と「ジャイアンツ」ではアカデミー賞主演男優賞にノミネート。いずれも陰のある人物を演じながら、絶大な支持を受けました。

www.sasaraan.net

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