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フレンジー

Frenzy(1972年/イギリス・アメリカ/117分)

[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]アーサー・ラ・バーン
[脚本]アンソニー・シェイファー
[撮影]ギル・テイラー
[音楽]ロン・グッドウィン
[出演]ジョン・フィンチ、アレック・マッコーウェン、バリー・フォスター、ビリー・ホワイトロー、アンナ・マッシー、バーバラ・リー・ハント、バーナード・クリビンス、ヴィヴィアン・マーチャント、マイケル・ベイツ、ジーン・マーシュ

[内容]

 ロンドンでネクタイ連続殺人事件が発生。ブレイニーの元妻ブレンダも殺され、直前に出入りしたブレイニーが犯人として追われることに。行くあてのないブレイニーは青果商の親友ラスクを頼る。が、ラスクこそ連続殺人の犯人だった ・・・。殺人鬼に間違われた男を描いた、ヒッチコックが往年得意としていた冤罪モノ。持ち味だった感情描写は今ひとつながら、プロットと手法に抜群の安定感を見せファンを唸らせた一本。
[評価]★★★☆☆

cinema review

STORY

 ロンドンでは女性を狙ったネクタイ連続殺人が発生していた。ある日もテムズ川にネクタイを首に巻いた女性の死体が上がる。その頃、ディック・ブレイニーは、自身が勤めるバーのマネージャー・フォーサイスから盗み飲みの言いがかりを付けられクビに。ブレイニーは元空軍の英雄だったが今は落ちぶれてその日暮らし同然の生活を余儀なくされていた。
 その後友人の青果商・ラスクを訪ねるが金の無心を言い出すことができず、一年ぶりに結婚相談所を営む元妻・ブレンダの事務所を訪れる。が、会うとつい声を荒げてしまいケンカ腰になってしまう。この時、それを隣室の秘書モニカが様子をうかがっていた。
 翌日、モニカが昼食に出たところを見計らい、ラスクがブレンダを訪れます。ラスクはロビンソンという偽名を使っていて、ブレンダの相談所でマゾヒストの結婚相手を求めていたのだ。しかしブレンダは拒否。言い争っているうちにラスクはブレンダを殺してしまう。その首にはネクタイが巻かれていた。
 直後、ラスクと入れ違いに入って行ったのはブレイニーだった。しかしモニカの返事がないのを見て去っていく。そこを昼食から帰って来たモニカが目撃。ブレイニーはネクタイ殺人鬼として手配されてしまう。
 そうとは知らず、クビになったバーの同僚で恋人のバブスを誘いホテルに。が、ホテルのボーイが新聞を見て気付き通報する。しかし、ブレイニーも自分が手配されているこのち気づき逃走していた。行くあてのないブレイニーはラスクを頼ろうとするのだったが ・・・。

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COMMENT

 アルフレッド・ヒッチコック監督晩年のサスペンス。男が連続殺人の冤罪をかけられ、復讐を果たそうとする物語。「逃走迷路」や「ダイヤルM ・・・」など、ヒッチコックは往年から冤罪モノを得意としていました。さすがに全盛期の力強さはありませんが、熟練した技は抜群の安定感を見せています。
 物語の主人公は、ディック・ブレイニー(ジョン・フィンチ)。ロンドンではネクタイ連続殺人が勃発。ブレイニーの妻ブレンダ(バーバラ・リー・ハント)も被害者となり、ブレイニーはこの短気な性格が仇となって犯人に間違われてしまいます。ブレイニーは恋人のバブス(アンナ・マッシー)とともに逃亡。が、バブスもまた連続殺人鬼に殺されてしまいます。そしてブレイニーは親友のラスク(バリー・フォスター)を頼ります。が、実は犯人はこのラスク。ラスクは助ける振りをして通報。しかもブレイニーのかばんにバブスの衣服を忍ばせる狡猾さ。ブレイニーは連続殺人鬼として逮捕されてしまうのです。
 犯人は早い段階で見る側に示されます。これは必須の展開で、後に、ラスクがタイピンを殺したバブスが持っていることに気付き、死体を追いかけるスリリングなシーンへと繋がっていきます。一方では見る者のブレイニーのへの感情移入を高める効果も。このような状況描写の見事さは他にもあって、例えば、静止画かと思えるほど溜めに溜めたシーン。ラスクがブレンダを殺害し秘書に発見されるシーン、あるいはバブスを殺害するシーンなど。ここでは見えない恐怖を極限にまで高めています。
 が、プロットと手法の充実ぶりが目立つ反面、本来の人間描写はいまひとつなのも気になるところ。特にヒッチコック作品本来のドラマ性は希薄で、機械的な感情表現、あるいは一本調子の人物描写が目立ちます。さらには、時に怒り・憎しみ・偏見が渦巻く、嫌悪感を催すほど殺伐としたモチーフ。状況描写が示す人物像と人物の感情表現にギャップを感じてしまう点は玉に瑕と言えるでしょうか。
 しかしそんな中にもユーモラスなシーンを忘れずに挿入しているのは心憎いところです。特に終盤のオックスフォード警部(アレック・マッコーウェン)と警部夫人(ヴィヴィアン・マーチャント)のやり取りはまさに秀逸。食事のシーンで夫人が出す料理はなんと豚足。しかも噛み切れないシロモノ。思わず吹き出してしまい、夫人の出番はもっと増やせなかったものかと思うほど。
 その終盤、ブレイニーは有罪となってしまいますが、真犯人はラスクだと悟ると復讐を決意。一方、オックスフォード警部も事件に疑問を持ち始め、ラスクを調べ始めるのです。ここからラストまでの畳み掛ける展開は実にドラマティック。ラストでようやくヒッチコックの本領を垣間見せています。
 本作の評価は実に複雑で、プロット・技法面ではヒッチコックらしい充実ぶりを示し、ドラマ性・人物描写ではヒッチコックらしからぬ鈍重さが露呈したと言えるでしょうか。相変わらずのおもしろさを見せた本作ですが、普段のロマンティシズムを欠いたつくりには、どうしても寂しさを覚えてしまいます。

(ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン)
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(サイコ、ファミリー・プロット)
ジョン・フィンチ関連作
(華麗な関係、ナイル殺人事件)

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 本作はヒッチコックの晩年作。この四年後の次回作「ファミリー・プロット」が遺作となります。60年代からのヒッチコック作品の評価は様々で、古さ・円熟味・新しさが混在。本作と前二作「トパーズ」、「引き裂かれたカーテン」は特に顕著のようです。

www.sasaraan.net

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