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ハリーの災難The Trouble With Harry(1955年/アメリカ/99分)
cinema review ![]() STORY
秋深いバーモント州の小さな村。4歳の男の子アーニーが森に遊びに来ると男が横たわっているのを見つけ、母・ジェニファーに知らせようと家に戻ります。同じ時、ウサギ狩りに来ていたワイルス船長。しかし撃ったのは空き缶に立て札。そして死体を見つけると、自分が撃ったと思い困惑。死体を調べるとハリーという名前であるを知りますが、このまま死体を埋めてしまおうと決意します。
ところがそこにミス・グレイブリーが。死体を見てもなぜか平然としており、船長をお茶に誘うと去って行ってしまいます。続いてアーニーと母ジェニファー。これもハリーが死んだと喜んで去っていきます。お次はグリーンボウ医師。死体に躓きますが読書に夢中で気付かずに行ってしまいます。さらに浮浪者。ハリーの靴を盗んで行ってしまうのでした。 ほどなく、ウィギーの雑貨屋では売れない画家サムが買い物に。保安官代理の息子カルビンは森で銃声がしたと言って調べ始めるところ。店の中にはオールドミスのミス・グレイブリーが男物のカップを物色。それを見てウィギーとサムは目を白黒させます。 一方、居眠りをしてしまった船長。目が覚めると今度はサムが死体をデッサン中。出て行って事故だと弁明。サムはジェニファーが警察に届けないと言うなら埋めるのを手伝うと、ジェニファーの家へ行きます。するとハリーは夫で今朝ビンで殴って追い返したと打ち明けます。が、死んでも気にしていない様子。この間にサムとジェニファーはすっかり親密に。 同じ頃、船長はおしゃれをしてミス・グレイブリーの家へ。こちらの二人も急速に接近。さらにそこへアーニーが、船長が仕留めたウサギを持ってやってきて船長を喜ばせます。その後、森で合流したサムと船長はいよいよハリーを埋めはじめます。が、船長が気付きます。自分が撃ったのは三発だけで、ハリーを殺したのは自分ではないことを ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
ヒッチコックのサスペンス・コメディ。バーモントの季節感たっぷりの美しすぎる風景をバックに、あまりにも場違いなハリーの死体。なぜかハリーの死体には皆淡白。しかもハリーの顔は作中一度も映されません。唯一サムの似顔絵だけ。殺人という生臭さを見事に遠ざけ、逆に奇妙なブラックさをかもし出しているのがわかります。物語は、そのハリーの死体がもたらす丸一日の災難を情感豊かに描いていきます。
物語は、4歳のアーニー(ジェリー・マシューズ)がハリーの死体を見つけるところから始まります。ワイルス船長(エドモンド・グウェン)は自分が撃ったと勘違い。ジェニファー(シャーリー・マクレーン)はビンで叩いて死んだと思い、ミス・グレイブリー(ミルドレッド・ナトウィック)は自分が靴で殴ったことで死んだと考えます。そこに、何の関係もない売れない画家・サム(ジョン・フォーサイス)が巻き込まれるのですが、これがまた飄々としていて苦でもない様子。かくして、それぞれの思惑が相反し、ハリーは一日中、何度も埋められたり掘り返されたりするはめになるのです。 序盤、ハリーを埋めようとする船長。しかし普段人が通るはずのない草っぱらに次々と人がやってくるというおかしさ。しかもそのすべてが後の展開の伏線になっているのが見事です。中でも興味深いのがアーニー君とグリーンボー先生。アーニーは船長の撃ったウサギを発見。見事船長の容疑を晴らして見せます。それどころかハリーの死体を見つけるという最後のオチがまた見事。冒頭の同じシーンとついになっているところが小粋です。またグリーンボー先生はちょっと出てきてはは引っ込み、と、展開上何の関係もないように思えるのでしたが、これも最後の最後にハリーの死因を突き止め、真実を突き止める重要な役割を担うわけです。 この展開の妙はヒッチコック作品随一と言っても良いのではないでしょうか。さらに、死体をさしおいてサムとジェニファーのラブストーリーがあれよあれよと進行するのがおかしなところ。ついには知り合って一日でプロポーズという無茶な展開。さらには船長とミス・グレイブリーの熟年ロマンスも進展。と、ほのぼのとしたモチーフが抜群のアクセント。コメディらしい強引さも冴えており、情感の部分をきっちりとベースに描くヒッチコックらしいストーリー運びとも言えます。 個人的にはヒッチコック映画の中で最もお気に入りの作品。ただし、ヒッチコック作品に期待されるであろうスリラーの部分は控えめ。唯一、終盤、ハリーをかくまう四人のところに、死体を捜す保安官代理のカルビンと死体を診察に来たグリーンボー医師が鉢合わせし、危機を迎えるシーンくらいでしょうか。が、ヒッチコックのロマンティックの部分とブラック・ユーモアの部分のバランスが本作では絶妙で、しかも互いに活かし合っているのが見事なところ。ヒッチコックファンならずともおすすめの一本です。 |
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ヒッチコック作品の中でユーモラスなものはもう一作、遺作となった「ファミリー・プロット」(1976)。インチキ女霊媒師と、間の抜けたタクシードライバーの恋人が、ふとしたことから冷酷な犯罪者に関わってしまうというもの。オカルトの雰囲気もあって見応え十分のサスペンスです。
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