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引き裂かれたカーテンTorn Curtain(1966年/アメリカ/128分)
cinema review ![]() STORY
デンマーク。アメリカの物理学者マイケル・アームストロングは、助手で婚約者のサラ・シャーマンと共に、国際物理学者学会への参加のためコペンハーゲンを訪問。マイケルがシャワーを浴びている最中に電話がかかり、サラが代わりに受けます。それは、エルも書店から注文の本が届いたとの連絡でした。気を利かせて取りにいくサラ。しかし本を受け取ったマイケルはすぐさまトイレに入り、本の中を調べ始めます。そこには、「πに連絡せよ」との暗号が記されていました。
そしてその日の昼食。マイケルは突如ストックホルムへ発つと言いだします。今夜は学会でスピーチの予定。怒ったサラはニューヨークへ帰ろうと決意。が、フロントで、マイケルが東ベルリンへの切符を受け取ったことを知らされるのでした。 同じ飛行機で東ベルリンへ向かうサラ。マイケルは気付き帰れと諭されますが、空港では多くの報道陣が待ち受け、これが亡命であると悟ります。国家保安部のゲルハルトから一緒に亡命する抱えるかの選択を迫られたサラ。一晩考えると答えたもののショックは隠せません。 一方マイケルは、ホテルを抜け出し、監視役のグロメクをまいてタクシーを拾うと郊外の農家へ。そこは、東ドイツを脱出する者を支援する組織「π」の連絡員の家でした。そこで、今回の狙いが、ライプチヒ大学のリント教授であることを打ち明けます。かつてマイケルが参加したアメリカの対核ミサイル・プロジェクト「ガンマ計画」が挫折。その最後の鍵を握るのがリント教授のミサイル理論だったのです。が、グロメクはマイケルを追い農家へ。ここがπのアジトであるとかぎつけるのでしたが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
東西冷戦下、東西に分かれていたドイツを舞台にしたスパイ・スリラー。ヒッチコック晩年の作品で、最盛期50年台の勢いからはわずかに衰えた感はありますが、圧倒的なおもしろさは相変わらずではなかったでしょうか。
物語のモチーフは「鉄のカーテン」。当時、東西冷戦を象徴する言葉として用いられました。中でもベルリンを東西に分けた「ベルリンの壁」は記憶に新しいところです。ヒッチコック作品は社会情勢に敏感なところがあって、本作でも、このような社会不安を背景にしています。 そしてもうひとつは核ミサイルの恐怖。物語でモチーフとなっているのは、核ミサイル攻撃を無効にしてしまうという防衛計画。特に核戦争の危機が身近にあった当時の緊張感は現代の比ではありません。逆に言えば、今見ると作品の緊張感はやや薄れてしまったともいえます。 物語の主人公はアメリカ人物理学者マイケル・アームストロング(ポール・ニューマン)。アメリカの対ミサイル計画が挫折。その最後の鍵を握るのが、東ドイツにいるリント教授の理論。マイケルは東ドイツへの亡命を装い、理論を盗み出そうとするのです。が、そんなマイケルの行動を怪しく感じた婚約者のサラ(ジュリー・アンドリュース)。マイケルの真の狙いを知らないまま東ドイツへ追行してしまうのです。 マイケルの真の狙いが明かされるまで、前半はミステリアスな雰囲気を醸成。「π」の謎も見る者の興味をそそります。さらにマイケルを追うサラのけなげな姿が心に響きます。マイケルを愛するがゆえに情報提供を迫られ、一方では愛国心との間で苦悩する姿が感動をもたらすことになります。が、中盤はリント教授との静かな心理戦。一体どうやって頭の中の理論を盗み出すのか? 強引ながら、ヒッチコック流の有無を言わさぬ展開で見る者を引っ張っていきます。 後半はかなりの時間をかけて、ライプチヒから東ベルリン、そしてスウェーデンへのスリリングな逃亡劇。有名なバスのシーンを経て、劇場からの脱出シーン、といかにもクライマックスというモチーフをしつこいまでに重ねてきます。さすがに特撮技術の進んだ現代からは見劣りは免れませんが、スリルを創出する演出はいまだに凄まじいものを感じます。 物語には、いかにもねちっこく陰湿な東ドイツ保安部のグロメク(ヴォルフガング・キーリング)。さらに、バレリーナ、クチンスカを演じ、終始道化役で物語に彩りを添えているの名優リラ・ケドローヴァ、サラをひそかに慕う東ドイツの教授マンフレド(ギュンター・シュトラック)など個性的な脇役もそろえて、それぞれに見所をつくっています。ヒッチコック晩年に特に顕著な、円熟した人物描写もじっくりと堪能したいところ。そして、本作のベースには、マイケルとサラとのラブ・ストーリーが敷かれていて、こちらはいつものヒッチコックらしさが出ています。 ただし、この時期は特に表現が過激化(と、言っても当時の基準)する一方、感傷的なモチーフもクローズアップされ、サスペンス面とドラマ面がやや隔絶した雰囲気はあります。「トパーズ」もそうですが、この点、見ようによっては、統一感が希薄と感じてしまうかもしれません。常に過大な期待がのしかかるヒッチコック・ブランドなだけに、やや評価を落としたのもやむ得ないといえるでしょうか。 |
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筆者が最初に本作を見たのはン十年も前の深夜映画館。夢中になってスクリーンにかぶりついたのを覚えています。晩年作はあまり専門家評はよくないようですが、個人的には同じ晩年作の「トパーズ」と共に好きな作品。サスペンスの部分ばかりに目が行きがちですが、意外に叙情的なドラマの部分にも目を向けたいところです。
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