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ゴルゴダの丘Golgotha (1935年/フランス/95分)
cinema review ![]() STORY
ローマ帝国ティベリウス帝時代。エルサレムはローマ総督・ピラトの統治下にあり繁栄を極めていた。その神殿の中にあるユダヤの最高法院。大祭司カヤパは、そこに議員たちをことごとく招集する。議題はガリラヤから入ってくるイエスとその弟子たちの扱いについてだった。イエスは預言書にある救世主とうわさされ、一方では、自身ユダヤの王を称し、病を治すなど不思議な力もあるとの話だった。
すでに町はイエスを迎える群集で騒然。イエスを王にするとの声が高まっていた。そんな騒ぎを傍目にピラト総督は静観の構え。しかし最高法院は自分たちの権威の失墜を恐れ、イエスをおとしめようと謀議を張り巡らせる。そして目をつけたのがイエスの弟子の一人、ユダだった。ユダはイエスとともに刑せられることを恐れていたのだ。 ユダはこの法院の買収に応じ、銀30枚で師を売る決断をする。が、イエスはその時、裏切り者が出て、自分が磔にされる運命を悟っていた。そして夜、イエスと弟子たちは最後の晩餐を催す。途中、ユダは抜け出し密告。一方カヤパ大司祭は、ピラト総督にイエスを処刑するよう説得していた。処刑の権限はローマ側にあったからだ。ピラトはこれを入れ、兵を出してイエス逮捕へ向かわせる。 しかしピラトの妻クローディアはイエスの不思議な力を信じ、ユダヤの長老たちの言いなりにならないよう夫を説得する。思い直したピラトはカヤパとの密約を撤回。責任を回避しようと、ガリラヤの王ヘロデの許にイエスを送るのだったが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
「ゴルゴダの丘」とはイエス・キリストが磔にされた場所。筆者のような世代では「ゴルゴ13」が思い起こされます。忌わしい場所を象徴する「ゴルゴ」と不吉な数字とされる「13」を組み合わせた恐怖を連想させる効果を誘っているとか。それはともかく、本作は非常にオーソドックスにキリストの最期を描いた物語として知られます。さらに、ストーリーとするために、人物像・民衆像に色づけを行ってドラマ性を演出。実にデュヴィヴィエ監督らしい素材の扱い方となっています。ただし、歴史モノを意識してのことかどうか、本来の持ち味である表情描写ではやや精彩を欠いたように思えます。
物語は、イエス・キリスト(ロベール・ル・ヴィギャン)がエルサレムに入ってくるくだりから始まります。しかし、エルサレムのユダヤの長老たちはイエスの人気を妬み、保身のためにあからさまな迫害の議論を謀ります。この、エゴむき出しの議員たちの姿がそのまま人間の醜さにも通じているかのようです。やがて、弟子の一人・ユダ(リュカ・グリドゥー)の裏切りによって捕らえられ、十字架に掛けられるキリスト。が、その時、天地が怒り、民衆は彼が本当に神の子であったことを悟るわけです。「神は人間をお見捨てになられた」 人間の愚かさが浮き彫りになった瞬間でもあります。 ここでは、ローマ総督ピラト(ジャン・ギャバン)を善人寄りに描いているのが興味深いところ。清廉なお人好しといったイメージ。対照的に剛毅な人物として描かれるヘロデ王(アリ・ボール)。いずれもがキリストを処刑しようと考えなかったことが、物語を実にドラマティックにしています。ユダヤがみずからの王を私欲のために貶めていく。この悲劇には、そんな諧謔さをも含んでいるのではないでしょうか。 この物語では、イエス自身の口からはほとんど教えは語られません。周りの人物たちがイエスの人物を語るにとどまっています。教唆色の希薄さは、そのまま物語映画としての観やすさにつながっていることは確かです。状況描写中心のストーリーの上に、デュヴィヴィエ監督特有の派手な人物像の構築が試みられているのがよく分ります。加えて独白のシーンなどには、いかにも当時のデュヴィヴィエ監督らしい厳かさがにじみ出ています。 最後、復活したキリストは弟子たちに言います。「世の終わりまであなた方とともにいる」、と。多くの日本人と同じで、筆者もまた無宗教であり、聖書にもなじみがありません。それでも宗教を扱う映画にはどうしても「畏れ」を感じてしまいます。キリストを描く映画の中には奇をてらったものが多いだけに、あらためて本作のようなオーソドックスなキリストの物語が見直されても良いように思います。 |
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他にキリストをモチーフにした映画は、「キング・オブ・キングス」(1961)、「奇跡の丘」(1964)、「偉大な生涯の物語」(1965)、「ジーザス・クライスト=スーパースター」(1973)、「パッション」(2004)など。メインではありませんが、「ベン・ハー」(1959)に描かれたキリストの姿も実に感動的でした。
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