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偶然の旅行者The Accidental Tourist(1988年/アメリカ/121分)
cinema review ![]() STORY
メーコンはビジネスマン向け旅行ガイドのライター。出張から帰ったある時、突然、妻サラから家を出て行くと切り出され困惑。一年前、強盗に一人息子イーサンを射殺されて以来、メーコンは立ち直ることができず、サラはそんな夫との生活に滅入っていたのです。
愛犬エドワードとの生活が始まって間もなく、メーコンは一週間の出張に出ることに。しかしいつものペットホテルが満員。他のペットホテルを見つけて入り、そこでミュリエルという受付の女性と出会います。メーコンの事情を知ると、自分も離婚したばかりだと屈託なく話すミュリエル。さらに、エドワードにかみ付き癖があると聞くと、犬の調教を引き受けると申し出てくるのでした。 その場は受け流したメーコンですが、そのエドワードのせいで足を骨折。妹ローズと兄二人の住む実家へと身を寄せる羽目に。さらにエドワードに手をかまれ、皆からは捨ててしまうようにすすめられます。が、エドワードは亡くなったイーサンの愛犬でもありました。 そこでミュリエルに調教を頼むことにしたメーコン。徐々にミュリエルと親密になっていきます。が、ほどなく、ミュリエルに病弱な息子アレクサンダーがいることを知ります。メーコンには再びイーサンの記憶がよみがえってきます。ある時ローズから食事に誘われたメーコン。断ろうとローズの家へ赴くのでしたが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
ローレンス・カスダンは監督よりも脚本の方が有名ではないでしょうか。いずれにせよ、スター・ウォーズやレイダースをはじめ、手がけた作品のほとんどが話題作。一方では出来不出来が激しいところもあって、酷評が続いた時期もありました。本作はカスダン初期の作品。人間の再生を真正面からじっくりと描いたドラマ。静かな展開ですがほどよいユーモアが心地よい作品でもあります。
物語は出張へと向かう飛行機。話しかけられるのを避ける為に本を読むメーコン(ウィリアム・ハート)の姿。実によく彼の内向的な性質を表現しています。旅行ガイドのライターである彼はかつて一人息子を強盗に殺された経験の持ち主。それが元で妻サラ(キャスリーン・ターナー)と別居。が、ある時、不思議な女性・ミュリエルと出会います。病弱な息子・アレクサンダーがいると知り、息子と記憶をダブらせてしまうメーコンでしたが、ミュリエルの積極さに押され、徐々に心を開くようになっていきます。 ミュリエル役はジーナ・デイビス。強いようでいじらしく健気な女性を見事に演じきっています。普段はアカデミー賞に興味のない筆者でしたが、この時のジーナ・デイビスの受賞は納得。最初の登場で、一瞬でメーコンへの一目ぼれを表現。エドワードを調教する毅然とした態度。しかしメーコンを抱きすくめる別人のような優しさ。誰からも「不思議」な女性として写る一方、見る者のすべてを引き込んでしまう力強さがあります。 そのミュリエルに、僕は孤独だ、とはじめて自分の本心を吐露するメーコン。これが彼が再生へと向かう一瞬。あなたは心を開かない、とはサラの言葉でした。が、流されやすいメーコンは、サラに求められるがまま、よりを戻すことになってしまいます。元の優柔不断に戻り、それは同時に過去に戻ることでもありました。そしてパリ。別れを言い渡されながらも執拗にメーコンを追ってくるミュリエル。そんなミュリエルを邪険にしながらも、メーコンは最後に気づきます。大事なのは自分がどうあるかだ、と。 嫌いだといっていたパリ。が、最後のその瞬間、メーコンの中で、パリがばら色に輝いていくのがよく分ります。荷物を捨て空港に向かうメーコン。メーコンのためにタクシーを止める少年。その少年を凝視するメーコン。Uターンするタクシー。逸るメーコンの気持ちとは裏腹にすべてがスローモーションのようなシーン。が、ラスト、メーコンと観客の目の前で、ついに時間は止まります。タクシーのガラスが透明になり、スクリーンいっぱいにあふれる笑顔。この最後の五分間のシーンは実に美しく眼に焼きついたのではないでしょうか。 静かすぎるきらいはありますが、それがかえって人物をじっくりと見ることができたのかもしれません。ほどよいユーモアのセンスが本作のバランス感覚の良さを象徴。皆内向的で方向音痴だというメーコンの兄弟。そんなメーコンの妹ローズ(エイミー・ライト)に恋をしてしまう出版社のジュリアン(ビル・プルマン)。周囲の人物たちが、出すぎることなく、一方では見事、物語をメリハリのあるものにしています。時折立ち止まって見たくなる映画。これは人間ドラマの佳作です。 |
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L・カスダン×W・ハート×K・ターナーのトリオは、傑作サスペンス「白いドレスの女」(1981)から。この配役は本作に継承。ウィリアム・ハートは個人的にも好きな俳優で、おすすめしたいのが「ドクター」(1991)。優秀だが傲慢な外科医が、自分が病気にかかって徐々に人間性に目覚めていく感動のドラマでした。
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