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魔術の殺人Murder with Mirrors (1985年/アメリカ・イギリス/100分)
cinema review ![]() STORY
ある日、ミス・ジェーン・マープルはガルブランドスン財団を訪れる。旧友キャリー・ルイーズの義理の息子クリスチャン・ガルブランドスンに呼ばれたからだ。クリスチャンはキャリー・ルイーズの亡き前夫の息子で13年ぶりの再会だった。しかしクリスチャンの表情は暗く態度は煮え切らない。そして、事情は言えないが、キャリー・ルイーズのために屋敷に行ってほしいと頼むのだった。
ミス・マープルが屋敷に赴きキャリーと再会すると、元気がなさそうだった。キャリーは今ではルイス・セロコールドと再婚して仲睦まじい。敷地内には非行少年たちの更生施設がつくられており、心理学者のマーカス・ハーグローブ博士や演出家のスティーブン・レスタリックが指導員として住んでいる。屋敷には夫と死別して出戻ってきていたキャリーの娘、ミルドレッド・ストレートも同居。ほかに家政婦のミス・ベレヴァー、キャリーの養子の娘ジーナとその夫ウォーリー・マーカムも住んでいる。しかし、夫婦仲は冷え切り、劇の教師がジーナにしつこく言い寄っていた。それにルイスの助手エドガー・ローソンもいる。 そこでミス・マープルは、ルイスにひそかに呼ばれると驚くべきことを聞かされる。何者かがキャリーを毒殺しようとしていると言うのだ。夕方にはキャリーを案じてクリスチャンもやって来る。そして夜。ミス・マープルたちが居間にいると、興奮した様子でエドガーが入ってきてルイスに詰め寄る。自分を追い出そうとしていると怒るのだ。エドガーには虚言・妄想癖があるらしい。 ルイスはエドガーをなだめようと隣の書斎へと連れて行く。するとほどなく、遠くでバックファイアのような音が。続いて書斎からも銃声が二発。皆が駆け寄るがドアには鍵がかかっていて入れない。しかしすぐに内側から鍵が開き、二人は無事な姿を見せる。皆が安堵した時、今度はミス・べレヴァーが駆け込んでくる。二階の部屋にいたクリスチャンが死んでいると言うのだ ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
アガサ・クリスティー「魔術の殺人」(邦題)のTVドラマ化。経緯はよく知りませんが、原題はイギリスでは "They Do It With Mirrors" で、アメリカでは "Murder With Mirrors" となっているとのことです。邦題に至ってはさらに訳が分りません。作中には魔術めいたモチーフはまったくなく、少なくとももっと内容に近いタイトルはあったはずで、なぜこのようになったのか首をひねってしまいます。しかし原作自体は円熟期のクリスティーの佳作として知られ、ドラマの出来も良好。ドラマでも原作でも、日本のファンにとっては、タイトルと内容とのギャップを感じてしまう一本となってしまっています。これだけは残念でなりません。
物語の舞台はある非行少年の更生施設。持ち主はミス・マープル(ヘレン・ヘイズ)の旧友キャリー・ルイーズ(ベティ・デイビス)。しかし夫(ジョン・ミルズ)と息子クリスチャン(ジョン・ウッドヴァイン)から、キャリーに何者かが毒を盛っていると聞き驚愕。確かにキャリーには砒素中毒の症状。そしてある夜、クリスチャンが二階に一人でいる時、何者かに射殺されてしまうのです。クリスチャンは犯人を知って殺されたのか? しかし犯行時間、容疑者たちは全員一階に。ほどなくその一人、ハーグローブ博士(アントン・ロジャース)がなぜか逃走。トリックの鍵を握る青年エドガー(ティム・ロス)も事件後姿を消します。捜査が混沌とする中、やがてマープルは、これが犯人による壮大な演出であることに気づくわけです。 ジョージ・エクスタインは「逃亡者」(TV)や「アンタッチャブル」(TV)などTVの脚本家。どこかで聞いたことが、と思ったらスピルバーグ演出の「激突!」のプロデューサーでした。音楽リチャード・ロドニー・ベネットは、かつて、同じクリスティー原作の大作映画「オリエント急行殺人事件」で絢爛たる音楽を披露して話題となりました。しかし何と言っても老優ベティ・デイビスの出演には驚き。この時80歳に近いのではないでしょうか。さすがにちょっときつそうではありました。名優として知られる夫役のジョン・ミルズも同様。ところが、ヘレン・ヘイズはさらに上を行き80台半ば! しかし残念ながら本作が遺作のようです。対照的には若かりしティム・ロスが出演しています。今となってはプレミアものの作品かもしれません。 ヘレン・ヘイズは以前にも「カリブ殺人事件」(1983)でミス・マープルを演じています。また、同じクリスティー原作の「殺人は容易だ」(1982)にも脇役で顔を出しています。ただしこちらは殺されてしまう役。本作では、みずからおしゃべりだと言うミス・マープルを好演。いかにもかわいいおばあちゃんという親しみやすさを見せています。同時期にミス・マープルを演じたアンジェラ・ランズベリーやジョーン・ヒクソンとも異なるマープル像をつくり上げて好評でした。 原作の感動を超えたとまでは言いませんが、物語は叙情的なモチーフも充実しており、キャリーとその娘ミルドレッド(ドロシー・テューティン)との確執、ジーナ(ライアン・ラングランド)をめぐ三角関係など。いずれも繊細な人間心理を描出しており、非常に柔らか味のあるミステリー・ドラマに仕上がっていると思います。特にラスト、非行少年がマープルに花束を渡すシーンはなかなか粋。とはいえ、アメリカ・イギリスのドラマらしく感動に偏らないところも事実でしょうか。涙モノというわけではありません。 ただ、ミステリーとしては若干パワー不足なことは否めません。トリックのポイントとなる家の構造はやや説明不足で、また、犯行の再現シーンもありません。が、もちろん本格ミステリー・ファンのみが対象ではありません。お茶の間ミステリーとしてはかなりの高バランスと呼べるかもしれません。 |
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