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マーニーMarnie(1964年/アメリカ/130分)
cinema review ![]() STORY
ラトランド社の社長マーク・ラトランドが取引先のストラット社を訪れると、1万ドルの横領事件で騒いでいるところだった。持ち逃げしたのは数ヶ月前に雇った社員マリオン。マークも見かけたことがある、黒髪で端正な顔立ちの美人だった。
そのマリオンはホテルに逃亡。カード入れの身分証を入れ替える。そこに記されている名前はマーガレット・エドガー。愛称マーニー。それが彼女の本名だった。マーニーは実家へと戻り、一人で住む母バーニスと再会。が、母の態度は素っ気無い。マーニーには父がなく、人一倍母を慕い好かれようと努めてきた。が、なぜか母から愛情を感じたことはなかった。その上子供の頃から悪夢に怯え、赤い色に異常な拒否反応を示す性向があった。 ほどなくして、ラトランド社の経理事務員の募集に一人の未亡人が応募してくる。名前はメリー・テイラー。マークはマリオンに似ていると気付くが確信は持てず、しかし興味から彼女を雇い入れることにする。一方、マーニーの方は早くも社長室の金庫に目を付け、秘書の引き出しに金庫の番号表が入っているのを目ざとく発見していた。 ある時、休日出勤を依頼したマークは雷を怖がるマーニーをなだめ抱きすくめる。以来、マークはマーニーを愛してしまう。が、やがてマーニーは再び会社の金を奪い逃走。いち早く異常を察したマークはマーニーの追い居所を突き止める。そして警察に突き出さない代わりに自分と結婚するよう迫る。いやいや結婚を受け入れたマーニー。しかし新婚旅行で、マーニーが異常なまでに男性との接触を嫌っていることに気付き、マークは彼女が精神的な病気であることを悟る。一方、マークの亡き妻の妹リルは、ふとしたことからマーニーを疑いはじめていた ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
アルフレッド・ヒッチコック監督晩年のミステリー・ドラマ。つくりとしては「めまい」に似ており、抒情的な音楽が全篇を覆います。しかし怪奇ものの雰囲気を湛えた「めまい」に比べても、こちらはかなりロマンスものに傾斜しています。スリリングなシーンはさほど多くはなく、サスペンスを期待したとすれば、やや肩透かしを喰らった気分に陥ったかもしれません。
物語の主人公はマーニー(ティッピ・ヘドレン)。病的な盗癖の持ち主で、偽名で就職しては金を盗み逃走を繰り返します。一方では、母親(ルイーズ・ラサム)愛情を感じられず孤独感を味わい、さらには、雷と赤色、そして男性に異常な拒否反応を示します。物語終盤では、この謎が重要なモチーフとなります。幼少時代に一体何があったのか?本作のミステリアスな要素を支える唯一のモチーフでもあります。 もうひとりの主人公は富豪マーク・ラトランド(ショーン・コネリー)。マーニーの正体を知りつつ雇い入れ、そして愛してしまいます。結局マーニーはラトランドの会社の金を持ち逃げするわけですが、ラトランドはこれを捕らえ、しかし警察には引き渡さず結婚を強要する行為に及ぶのです。 このラトランドは傲慢な人物のようでもありますが、反面では、マーニーの被害者に金を返したり、と、正義の人でもあることはこの人物像の不安定さを露呈することにもなってしまいました。マーニーもそうなのですが、限りなく冷静な態度でいたかと思えば急に感情の昂ぶりを表すシーンも多く、本作の人物描写にはややムラがあったように思います。とはいえ、静かな物語だけに、これらのシーンが展開上のアクセントにはなっていることは確かです。いずれにせよ、わかりやすい人物描写をするヒッチコックにしては珍しいと言えるでしょうか。 スリルという点では、マーニーがラトランド社の金庫から金を盗むシーンくらいで、ほとんどを二人の主人公のやり取りに費やしています。ヒッチコック十八番のスリル&ロマンスではなく、ラブ&ミステリーということになります。その分非常に抒情的な雰囲気で、特に、すべての謎が解けるラストは感動的ですらあります。ここでマーニーは、子供の頃に体験した殺人事件の真相を通じて自分の病的な拒否反応の原因を知ることになります。さらに見事なのは、自分に冷たくしてきた母の真意を悟り、そしてマークへの愛にも目覚めることです。ヒッチコック作品の中でも、最も美しいラストシーンの一つに挙げられるように思います。 他方、やや緩慢な展開であり、さらには、競馬場でマーニーをペギーと呼ぶ男(最後まで正体は明かされない)など、使いっぱなしと思えるモチーフもあります。サスペンスとしてはどうしても弱い展開であることは否めません。しかしヒッチコックのロマンチシズムがよく出ている作品でもあり、個人的には好きな雰囲気の作品です。せめて、同系統の「白い恐怖」や「めまい」ほどのサスペンス色があれば晩年の代表作となっていたかもしれません。 |
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