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めまい

Vertigo(1958年/アメリカ/128分)

[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]ピエール・ボワロー / トーマ・ナルスジャック
[脚本]アレック・コッペル / サミュエル・テイラー
[撮影]ロバート・バークス
[音楽]バーナード・ハーマン
[出演]ジェームズ・ステュアート、キム・ノヴァク、トム・ヘルモア、バーバラ・ベル・ゲデス

[内容]

 旧友から妻の素行調査を頼まれたスコティ。妻は死人に取り付かれていると言う。尾行をしてみると、妻マデリンの奇妙な行動と共に、その死人がマデリンの曾祖母カルロッタだと分る。が、ある時、期せずして二人は顔を合わせることに。以来、互いに惹かれ合っていくのだったが ・・・。ロマンティシズムあふれるヒッチコック・スリラーの名作。一方、ポーをほうふつとさせる怪談話で、オカルティシズムも見事に醸成している。
[評価]★★★★☆

cinema review

STORY

 サンフランシスコ。ある夜、刑事ジョン・スコティは、逃亡する犯人を追跡中、ビルの屋上から落ちそうに。それを警官が助けようと手を差し伸べますが誤って転落死してしまいます。以来、スコティは極度の高所恐怖症に。
 その自宅療養中、造船会社社長で大学時代の友人ギャビン・エルスターと再会。ギャビンは、妻マデリンが死んだ人間に乗り移られていると言い始めます。時折記憶をなくし、別人のようなしぐさをする、さらに、度々出かけるが行き先がわからない、心配だから尾行して調べてほしいと。
 尾行してみるとまず教会の墓地へ。墓石を見つめるマデリン。墓碑には「カルロッタ・バルデス、1857年没」の文字。その後美術館へ。そこにはカルロッタの肖像画が。絵を凝視するマデリン。その髪形、首飾り、ブーケは肖像画と同じもの。そしてマッキトリック・ホテル。そこはかつてカルロッタが住んでいた家。歌手だったカルロッタは金持ちに見初められ家をもらい子もできたのだとか。が、男は子供を取り上げるとカルロッタを捨て、やがておかしくなって自殺した話をスコティは知ります。ギャビンに聞くと、カルロッタはマデリンの曾祖母だが本人は知らないはずだ、との答え。
 そして翌日、マデリンは突然サンフランシスコ湾へ身を投げます。マデリンはカルロッタが自殺した時と同じ26歳。この時スコティが助け出しますが、これを機に二人は惹かれ合うように。そしてマデリンは、時折見る悪夢で死の予感を感じると告白。そこにはスペイン村に高い塔。が、スコティは気付きます。その村は実在する、と。そして、謎を解くために二人でスペイン村へ向かうのでしたが ・・・。

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COMMENT

 アルフレッド・ヒッチコックのロマンティック・スリラー。極度の高所恐怖症の刑事ジョン・スコティ・ファーガソン(ジェームズ・スチュアート)が体験する不思議な出来事を描いた物語。ヒッチコック作品の中でもかなりロマンティシズムを強調したつくり。一方では終始ミステリアスな雰囲気を終始醸成していて、まるでポーの怪奇小説を連想させます。
 ある日、療養休暇中のスコティは友人エルスター(トム・ヘルモア)から妻マデリン(キム・ノヴァク)の尾行を頼まれます。その依頼は異様なものでした。マデリンが死者に乗り移られているというのです。尾行を始めたスコティは、やがて取り憑いているのが、マデリンの曾祖母カルロッタであることを突き止めます。が、スコティは半信半疑でした。
 そんなある時、マデリンは湾に投身。助けたのがきっかけで知り合うことになりますが、互いに惹かれあってしまいます。マデリンを助けようと思い始めていたスコティは、マデリンがした夢の話から、それがすべて実在の場所であると気付きます。そして夢の中では死の象徴、スペイン村の高い塔へ。が、マデリンはいきなり走り出し、塔に登っていきます。高所恐怖症で登れないスコティ。その間、マデリンは塔の上から飛び降り自殺をしてしまうのです。
 先祖に取り憑かれる女。先祖にまつわる場所を訪れ、先祖の格好を模倣する。しかし本人にはそうした記憶がない。と、いかにもオカルト的なモチーフ。物語が進むにつれ、マデリンの死の危険が加わります。カルロッタとは一体何者なのか? そのカルロッタはマデリンを死に引きずり込もうとしている。期せずしてマデリンを愛してしまったスコティは、何とかしてマデリンを救おうとするわけですが、叶わずマデリンは死んでしまうのです。
 真実は物語の後半を過ぎたあたり、比較的早く観客に知らされます。が、これこそ本作最大のヒッチコックの演出。見る者は謎への関心から解放され、一気にスコティとジュディ(キム・ノヴァク = 二役)に感情移入していくのです。そして、二人のラブ・ストーリーにもどかしさと切なさを覚えるようになります。
 マデリンの死で廃人同然に成り果てたスコティ。しかしある時、街でマデリンそっくりの女性を見つけます。思わず尾けてしまうスコティ。彼女がジュディという別人であることを知りますが、マデリンへの想いは強く、ジュディを身代わりとして愛してしまうのです。が、それはジュディにとっての苦しみでもありました。
 ジェームズ・スチュアートはやはり大味か、とも感じますが、キム・ノヴァクは見事にこの二役を演じきりました。感情描写をきちんと行っていくのがヒッチコック流。いまだ誰もポスト・ヒッチコックと成り得ていない一因がここにあります。そして物語は、二人のラブ・ストーリーを高めに高めて、ラストへと突入していきます。ラストは再びスペイン村の高い塔。スコティはついに真実を悟るのです。ヒッチコック作品には珍しいぺミスティックなシーンですが、まるで怪談話のオチのようでもあります。
 ミステリー、サスペンス、オカルティシズム、そしてロマンティシズム。と、実に多岐。しかも繊細。派手さはないものの、ヒッチコック作品屈指のバランス感覚を誇る名作といえるでしょうか。

(ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン)
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アルフレッド・ヒッチコック関連作
(レベッカ、マーニー)
ジェームズ・スチュアート関連作
(素晴らしき哉、人生! 、
スミス都へ行く)
キム・ノヴァク関連作
(ピクニック、媚薬)

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 ミステリアスな雰囲気と共にヒッチコックのロマンティシズムを垣間見せた本作ですが、盗癖を持つ美女の心の闇に迫った「マーニー」や、オスカー受賞の「レベッカ」もほぼ同カラーの作品。ヒッチコックは意外にも心理描写に長けた監督よ言えます。

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