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見知らぬ乗客Strangers On A Train(1951年/アメリカ/101分)
cinema review ![]() STORY
ワシントンから故郷メトカーフへ帰るために乗った列車の中、テニス選手ガイ・へインズはブルーノ・アントニーという男と遭遇。ブルーノは、ガイが妻・ミリアムと離婚して上院議員の娘・アンと結婚したがっていることを知っていて、自分にも殺したい相手がいると話はじめます。そして、ブルーノがガイの妻を殺し、ガイがブルーノが憎む父を殺せば完全犯罪になる、と、交換殺人を持ちかけるのでした。
ガイは相手にせず断りますが、大事なライターを列車に忘れ、ブルーノに持ち去られてしまいます。さらに、妻ミリアムに会うと離婚を拒否し、金をせびってきます。その上他の男との間にできた子供を押し付けると脅迫。ガイには一瞬殺意がよぎります。 その夜、メトカーフにブルーノの姿が。ブルーノはミリアムの家を探し出し、出かけるミリアムを尾行。就いた先の遊園地で、隙を見計らってミリアムを絞殺してしまいます。ほどなくして、ブルーノはガイの家に。そして、自分がミリアムを殺したから、今度は父を殺すようにとガイに要求するのでした。 ブルーノを追い返したガイでしたが、間もなく容疑者として警察に呼び出され、アリバイを聞かれることに。当時列車の中にいたガイは、唯一会話を交わした大学教授を思い出します。が、当の教授は酔っていて記憶がありません。以来、警察の監視がつくようになり、さらに、ブルーノもしつこくつきまとい、ある時、父を殺すようにと、家の鍵と拳銃を送ってくるまでになります。意を決したガイは、深夜、刑事の目を盗んで脱出。ブルーノの家に侵入するのでしたが ・・・。 ・・・ ![]() COMMENT
最盛期を迎える直前のヒッチコック作品。この後、「私は告白する」(1953)を経て、傑作「ダイヤルMを回せ」(1954)、「裏窓」(1954)をたてつづけに製作。以後十年以上にわたって、ヒッチコック・ワールドはピークを迎えることになります。本作は、脚本にレイモンド・チャンドラーを迎えているのが特徴。ハードボイルドの大家で知られますが、脚本の定評も高く、本作全編に漂う危険な香りには、チャンドラーの影響も多分に影響しているのかもしれません。
物語はある列車の中。いかにもさわやかな青年はガイ(ファーリー・グレンジャー)。しかし悪妻との離婚がこじれ、恋人アン(ルース・ローマン)との一緒になることが適わない状態。そんな時出会った男ブルーノ(ロバート・ウォーカー)。何と交換殺人を持ちかけてくるのです。ブルーノが妻を殺す代わりにガイはブルーノの父を殺してくれ、と。 ここから、ガイの妻ミリアム(ローラ・エリオット)が殺されるまで、実にじっくりと人物を描いていきます。ガイのまじめな人柄とブルーノの異常な性格、と、その人物像を鮮やかに浮き彫りにしています。このあたりは、インパクトのあるシーンを早く見せたがる近年のサスペンスとの違い。高まる緊迫感と同時に、じわじわと見る者にプレッシャーをかけていきます。そして楽しいはずの遊園地と、醜い絞殺という対極的な演出。ブルーノが首を絞めるシーンは、あたかも自分が首を絞められているような錯覚に陥るほど。そのあっけなさが、かえって底冷えのする恐怖感を創出しています。地味なつくりながらも、ヒッチコックのすごさが改めて実感できます。 物語の土台には、ヒッチコックお得意のラブストーリーが据えられています。それが発揮されるのは中盤から。警察に疑われ、ブルーノからは父を殺すようつきまとわれるうちに、アンまでがガイを疑うようになります。そうと知ったガイはアンに真相を打ち明け、信頼を取り戻すのですが、ブルーノはガイを陥れようと新たな陰謀を企てることになるわけです。 二人の愛と絆は物語の情緒面を見事に支えます。この感情の豊かさもまたヒッチコック映画の醍醐味。きちんと観客に感情移入させていく心配りは見事というほかありません。終盤は、アンとガイは協力してブルーノと対決。メリーゴーランドを使ったスペクタクルシーンで、物語はクライマックスを迎えるというわけです。 何とも緊迫感を全編ににじませた本作ですが、実はプロット自体はやや安易。刑事がブルーノの存在に気付かなかったり、最後も、ライターがブルーノの手にあっても、ガイが殺人を依頼したことへの嫌疑が晴れるわけではありません。一方、サスペンス映画のプロットが緻密になるのはもう少し後の時代。いたしかたのない点ともいえます。しかし緊張感の演出は卓越。むしろ同時代のサスペンス映画の中でも、本作がずば抜けていることは、比べて見ればわかるのではないでしょうか。 |
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すでに名声を得ていたヒッチコックですが、ピークをむかえるのはこの後。それは三年後(1954)の「ダイヤルMを回せ!」と「裏窓」からはじまります。その後、「知りすぎていた男」(1956)、「北北西に進路を取れ」(1959)など、驚異的なサスペンス映画を世に送り出したのは周知の通りです。
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