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農夫の妻

The Farmer's Wife(1928年/イギリス/98分)

[監督]アルフレッド・ヒッチコック
[原作]イーデン・フィルポッツ
[脚本]エリオット・スタナード
[撮影]ジョン・J・コックス
[出演]ジェイムソン・トーマス、リリアン・ホール=デイビス、ゴードン・ハーカー、ギブ・マクラーフリン、モード・ギル、ルイ・パウンズ、オルガ・スレイド、ルース・メイトランド、アントニア・ブラフ、ハワード・ワッツ

[内容]

 ある農場。妻を病気で亡くし娘も結婚して出て行くと、主のサミュエルはさびしい思いに捉われ再婚を思い立つ。候補は町の独身女性四人。家政婦ミンタの心配をよそに自信満々でプロポーズへ出向くサミュエル。が、予想に反して次々とプロポーズを断られてしまい ・・・。農場主の再婚をめぐって起こる騒動をコミカルに描いたドラマ。サイレント時代のヒッチコックの恋愛ドラマだが、かなり緩慢。一方、わかりやすい人物描写はまさにヒッチコック流そのもの。
[評価]★★☆☆☆

cinema review

STORY

 アップルガース農場。主のサミュエル・スウィートランドは妻を病で亡くした男やもめ。それからしばらくして、今度は娘が結婚することに。にぎやかな結婚式が農場で行われ、やがて娘は夫と共に家を去っていきます。が、皆がいなくなると、サミュエルはふとさびしい思いに捉われます。そして再婚をしようと決意するのです。
 サミュエルはまず家政婦のミンタに相談。独身の中年女性四人の名前、ルイーザ・ウィンデット、サーザ・タッパー、メアリー・ハーン、それからついでだと言ってマーシー・バセットを挙げていきます。主人の安易な様子を見て諌めようとするミンタ。そんなミンタの心配をよそに、サミュエルは自信満々でルイーザの家へとプロポーズをしに赴きます。
 ところがルイーザは自立した女性を宣言してプロポーズを拒否。それを聞いて落ち込むどころか怒り心頭のサミュエル。しかし気を取り直して二人目のサーザの家へ。折しもその日はパーティー。ミンタも手伝いに。さらに偏屈な老雑役夫アッシュもいやいやドアボーイに駆りだされていました。
 パーティーの前にプロポーズを、と思ってやってきたサミュエル。しかしこれも失敗。次いでパーティーでは三人目のメアリーにアタック。が、これも玉砕。ついに再婚する気をなくしたサミュエル。家に帰ると再びミンタに相談するのでしたが ・・・。

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COMMENT

 サイレント時代のヒッチコックのコミカル・ドラマ。ごく初期の作品には「下宿人」のような上質のサスペンスもありますが、ラブ・ストーリーやコメディ作品も多く手がけています。もっとも、いずれもさほど評価が高いとはいえず、戦後高騰したヒッチコック株に引きずられて、徐々にこの時期の作品も注目され始めた感があります。本作もつくりはやや平凡で、むしろ100分のストーリーにしては貧しい展開。ヒッチコック独特の人物描写についてはその片鱗をのぞかせてはいますが、緩慢さをどこまで拭いきれたかは疑問が残ります。
 物語の舞台は地方のある富農。妻を亡くし娘を嫁に出した主・サミュエル(ジェイムソン・トーマス)は再婚を決意。四人の候補を挙げアタック開始。自信満々だったサミュエルでしたが、思いもよらず次々と断られ、ついに途中でさじを投げてしまいます。しかしそんな時、身近にいて自分を支えてくれた家政婦のミンタ(リリアン・ホール=デイビス)に気付くのです。
 序盤、かなり長い時間をかけて妻の死から娘の結婚式のシーンを描写していきます。特にこの前半は緩慢さが目立っていて、ドラマというよりは農村風景画に近い印象。ミンタと偏屈な雑役夫アッシュ(ゴードン・ハーカー)のかけあいをどこまで楽しめるかがポイントになるかもしれません。終始しかめっ面のアッシュは、終盤主の情けなさをなじるシリアスなところを見せますが、ほとんどは道化役。ストーリーにはあまり絡んできませんが、重要なスパイス的存在となっています。
 ようやくストーリーが動くのは、サミュエルが次々と町の女性たちにプロポーズを始めるあたりから。相手の三人の女性がそれぞれに特徴的で、さらには動きが実に機械的。てんかんを起こしたりヒステリーを起こしたり、と、この時の非現実的な人物描写はヒッチコックの特徴的な手法でもあります。このあたりは安心して楽しめるくだりとなっています。ようやく後半で本領発揮といったところでしょうか。
 そして終盤、サミュエルがミンタへの想いに気付くあたりはちょっと感動的。ロマンティストたるヒッチコックの一面がよく出たシーンとなっています。とはいえ、もう少しコンパクトに収まっていればまたずいぶん違ったろう、とも思ってしまいます。何せサイレント映画の時代。まあ、そこは古い時代でもありやむをえないことかもしれません。

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